Blockchain 2 Energy Asiaの概要
‘Blockchain 2 Energy Asia’は、2018年11月27日に‘Asia Blockchain Week’の一部としてサンテック・シンガポール国際会議展示場(Suntec Singapore International Convention and Exhibition Centre)で開催された国際会議で(写真1)、アジア諸国におけるエネルギー分野でのブロックチェーン技術の利活用、先端的取り組み、各プロジェクトの取り組みの詳細が紹介された。会議には、50以上の企業・団体が参加し、エネルギー関連のみならずブロックチェーン関連企業の参加も目立った。
写真1 Blockchain 2 Energy Asia の会場:(サンテック・シンガポール国際会議展示場)
出所 筆者撮影
会議内容としては、ファイナンス、規制、P2P電力取引、環境価値取引が中心であり、それぞれの国の周辺環境や取り組み事例の紹介、実環境での課題提起があった。
以降では、同会議における注目されたトピックについて紹介する。
ブロックチェーンを活用した資金調達
会議の冒頭、南アフリカ・ケープタウンで2015年に設立された、太陽光発電への投資信託事業を中心とするサンエクスチェンジ(Sun Exchange)のCEO、アブラハム・ケンブリッジ(Abraham Cambridge)氏が基調講演を行った。
同社では、太陽光発電プロジェクトに対して事前に技術的、社会的、財政的なデューディリジェンス注2を十分に実施し、実行可能性が満たされたプロジェクトに対してクラウドセールと呼ばれる仮想通貨上のコイン(トークン)発行型の資金調達を実施している。
一般に、出資者は、ICO(Initial Coin Offering)注3と呼ばれる資金調達で、銀行送金あるいはビットコイン(Bitcoin)などの仮想通貨を特定のアドレスに送金することで、その対価として相当のコインを受け取る。
一方、サンエクスチェンジでは、集めた資金をもとに当該開発プロジェクトを実行し、発電が開始された後に所有コインの比率に応じた収益分配がなされる。この方法は、従来から存在する株式公開やファンド出資と比べると、迅速かつ簡易な手続きで資金調達が可能であり、世界中で多くのプロジェクトが同様のスキームで資金調達を実施している。しかし、当該分野は法制度の整備が遅れており不透明な部分も多い。
サンエクスチェンジでは、日照量の比較的多い地域、特に学校やオフィスビルなどに対して、太陽光設備を導入し収益化を図っているという(写真2)。
写真2 太陽光設備を導入し収益化をはかるサンエクスチェンジ(Sun Exchange)
出所 The Sun Exchange - Keynote - Redefining the Global Economy with Solar and Blockchain
▼ 注1
‘Blockchain 2 Energy Asia’は‘Blockchain to Energy Asia’の意味。
第3回は、2019年2月に‘Blockchain 2 Energy Europe’として開催が予定されている。
▼ 注2
デューディリジェンス(Due Diligence):Dueは義務を、Diligenceは努力という意味。投資を行う場合に、投資の対象となる企業の資産価値査定やプロジェクトの信頼度、事業リスクなどを調査することを指す。
▼ 注3
ICO:Initial Coin Offering、デジタルトークンや仮想通貨を発行して、資金調達を行う方法。