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【‘Blockchain 2 Energy Asia’レポート】活発化する電力分野におけるブロックチェーン技術の活用

— 中核技術としてのブロックチェーン実用化の現状と課題 —
2019/02/01
(金)
久田 雅之 株式会社会津ラボ 取締役

ブロックチェーンを使ったカーボンクレジット取引

 カーボンオフセットや再エネなど、脱炭素にかかわる事業に取り組んでいるSouth Pole Group(スイス・チューリッヒ)のインゴ・プール(Ingo Puhl)氏からは、ブロックチェーンを活用したカーボンクレジットの自動化について紹介された。

 既存の仕組みではカーボンクレジットの取引に18〜24カ月程度の期間を要するが、IoT技術を活用したスマートメーター、スマートコントラクト、ブロックチェーンの技術を活用することによって、1〜3カ月という短期間で取引の完了が可能になるとの報告があった。

 特に、発電側のデータ取得期間として約1年間を要しているところが、IoT/スマートメーター機器によるデータ取得によって、大幅に短縮できるとのことであった。取得データの分析、チェックといった後処理も技術的には自動化が可能であり、中央集権的な仕組みではなく、分散型かつ自動で稼働する電力取引システムの有用性についての説明がなされた。

ブロックチェーンへの今後の期待

 仮想通貨などを送金/決済するための仕組みとして、ブロックチェーンを活用する技術やシステムは整いつつあるが、ブロックチェーンをより汎用的に価値取引として活用するための取り組みは、現在多く検討されているものの、実用化(商用化)に到達しているものは少ない。

 今回の会議でも多く話題に上がっていたが、特にエネルギー分野においては、国によって周辺環境が大きく異なり、環境価値取引など既存の仕組みの延長線で実現できるものからP2P電力取引などに至るまで、各国によって法律の改正や規制緩和が必要であるため、現状ではまだまだ限定的な試験しか実施できない状況である。

 ブロックチェーン技術そのものは、分散環境下で透明性を保ったまま相互に価値取引を可能にするため、技術特性的には環境価値、電力価値の取引には比較的相性がよいと考えられる。

 このため、法規制や既存の電力事業者との連携など解決すべき課題は多いが、技術の可能性という芽を摘まず、部分的にでも適用可能な範囲で早期に実用化されることを期待したい。

◎プロフィール(敬称略)

久田 雅之(ひさだ まさゆき)

久田 雅之(ひさだ まさゆき)

株式会社会津ラボ 取締役

電力分野におけるブロックチェーン技術の利活用をテーマに、2017年6月より福島県内にて関連する実証実験を開始し、自動運転向け情報基盤など、より広範な領域でブロックチェーン技術の適用可能性を研究している。会津大学大学院博士後期課程修了(コンピュータ理工学博士)。電力分野におけるブロックチェーン関連の記事掲載、講演について多数の実績がある。

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