タイ・バンコクのP2P電力取引の実証試験
〔1〕SMART GREEN ENERGY COMMUNITYプロジェクト
再エネ事業を手がけるBCPG(タイ)とパワーレジャー(PowerLedger、オーストラリア)からは、タイのバンコクで取り組まれているP2P電力取引の実証試験について紹介された。
同事業は、太陽光による635kWの発電量をT77と呼ばれるコミュニティ内(ショッピングセンター、学校、アパート、歯科病院)で取引するものである(図5)。
図5 タイのバンコクで取り組まれているP2P電力取引の実証試験
出所 BCPG Use case - Peer-to-Peer energy trading. Lessons from Power Ledger_s T77 pilot project in Bangkok with BCPG
P2P電力取引プラットフォームはパワーレジャーが提供しており、参加者間の電力融通状態を監視する。取引データは、パワーレジャーの取引プラットフォームに送られ、P2P電力取引を可能にしている(図6)。
図6 パワーレジャー(PowerLedger)の取引プラットフォームによるP2P電力取引
出所 BCPG Use case - Peer-to-Peer energy trading. Lessons from Power Ledger_s T77 pilot project in Bangkok with BCPG
図7 デュアルトークンモデルの仕組み
出所 Power Ledger - Use case - Peer-to-Peer energy trading. Lessons from Power Ledger_s T77 pilot project in Bangkok with BCPG
〔2〕デュアルトークンモデル
パワーレジャーの取引プラットフォームでは、通貨単位POWR(PowerLedger、パワーレジャー)とSparkz(スパークス)という2つのトークンを使ったデュアルトークンモデルが採用されている(図7)。
まず、パワーレジャーの取引プラットフォームを利用したい事業者は、市場でPOWRトークンを購入する。このPOWRトークンを取引プラットフォームに預託することで、当該事業者はSparkzと呼ばれる実際に使われるトークンを得る(Smart Bondと呼ばれているスマートコントラクト注6)。
需要家は事業者からSparkzトークンを購入し、プロシューマーから電力供給を受けた際にその対価をSparkzで支払う。一方、プロシューマーは、事業者に対してSparkzを売却することで現金化できるという流れである。
事業者がPOWRトークンを預託していることによって、当該プラットフォ−ムを使用する中で、規約違反、コンプライアンス的な問題が発生した場合には、プラットフォーマーが預託されたPOWRトークンからSparkzを清算することができる。P2P電力取引の信頼性に対して不安がある中で、このような取引モデルは特徴的である。
▼ 注6
スマートコントラクト:ブロックチェーン上で、第三者機関を介さずに、事前に取り交わされた条件が満たされることで、契約が自動的に執行される仕組み。