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【‘Blockchain 2 Energy Asia’レポート】活発化する電力分野におけるブロックチェーン技術の活用

— 中核技術としてのブロックチェーン実用化の現状と課題 —
2019/02/01
(金)
久田 雅之 株式会社会津ラボ 取締役

タイ・バンコクのP2P電力取引の実証試験

〔1〕SMART GREEN ENERGY COMMUNITYプロジェクト

 再エネ事業を手がけるBCPG(タイ)とパワーレジャー(PowerLedger、オーストラリア)からは、タイのバンコクで取り組まれているP2P電力取引の実証試験について紹介された。

 同事業は、太陽光による635kWの発電量をT77と呼ばれるコミュニティ内(ショッピングセンター、学校、アパート、歯科病院)で取引するものである(図5)。

図5 タイのバンコクで取り組まれているP2P電力取引の実証試験

図5 タイのバンコクで取り組まれているP2P電力取引の実証試験

出所 BCPG Use case - Peer-to-Peer energy trading. Lessons from Power Ledger_s T77 pilot project in Bangkok with BCPG

 P2P電力取引プラットフォームはパワーレジャーが提供しており、参加者間の電力融通状態を監視する。取引データは、パワーレジャーの取引プラットフォームに送られ、P2P電力取引を可能にしている(図6)。

図6 パワーレジャー(PowerLedger)の取引プラットフォームによるP2P電力取引

図6 パワーレジャー(PowerLedger)の取引プラットフォームによるP2P電力取引

出所 BCPG Use case - Peer-to-Peer energy trading. Lessons from Power Ledger_s T77 pilot project in Bangkok with BCPG

図7 デュアルトークンモデルの仕組み

図7 デュアルトークンモデルの仕組み

出所 Power Ledger - Use case - Peer-to-Peer energy trading. Lessons from Power Ledger_s T77 pilot project in Bangkok with BCPG

〔2〕デュアルトークンモデル

 パワーレジャーの取引プラットフォームでは、通貨単位POWR(PowerLedger、パワーレジャー)とSparkz(スパークス)という2つのトークンを使ったデュアルトークンモデルが採用されている(図7)。

 まず、パワーレジャーの取引プラットフォームを利用したい事業者は、市場でPOWRトークンを購入する。このPOWRトークンを取引プラットフォームに預託することで、当該事業者はSparkzと呼ばれる実際に使われるトークンを得る(Smart Bondと呼ばれているスマートコントラクト注6)。

 需要家は事業者からSparkzトークンを購入し、プロシューマーから電力供給を受けた際にその対価をSparkzで支払う。一方、プロシューマーは、事業者に対してSparkzを売却することで現金化できるという流れである。

 事業者がPOWRトークンを預託していることによって、当該プラットフォ−ムを使用する中で、規約違反、コンプライアンス的な問題が発生した場合には、プラットフォーマーが預託されたPOWRトークンからSparkzを清算することができる。P2P電力取引の信頼性に対して不安がある中で、このような取引モデルは特徴的である。


▼ 注6
スマートコントラクト:ブロックチェーン上で、第三者機関を介さずに、事前に取り交わされた条件が満たされることで、契約が自動的に執行される仕組み。

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