5Gにおける3つの要求条件とNSAとSA
写真 株式会社KDDI総合研究所 窪田 歩 氏
出所 編集部撮影
〔1〕5Gの特徴
まず、5Gの特徴を整理しておく。
図1に示すように、5Gシステムは、①eMBB:最大伝送速度下り20Gbps/上り10Gbps、②mMTC:多数同時接続数100万台/km²、③URLLC:高信頼・超低遅延1ミリ秒という3つの要求条件を実現するなかで、超高精細画像通信だけでなくIoT環境を実現する大量なデバイスの同時接続通信を可能とし、さらにC-V2X注2や自動運転車をはじめ工場や介護などにおける知能ロボットなど向けに、高信頼・超低遅延通信を実現している点が大きな特徴である。
図1 5Gの3つの要求条件と関連するセキュリティ課題
出所 三宅 優(TTCセキュリティ専門委員会委員長)「ITU-T SG17における5Gセキュリティの議論」、2019年6月17日
〔2〕5G NR:NSAとSAの2つを策定
5Gにおいて策定された、端末と基地局間の新しい無線通信方式(通信インタフェース)であるNR(New Radio)は、NSA(Non-Standalone、ノンスタンドアロン)とSA(Standalone、スタンドアロン)の2つが規定された。これによって、日本での5Gの商用サービスは、次のように、まずNSAから開始され、次にSAへ移行していくシナリオとなっている(図2)。
図2 5Gサービスの展開:NSA(LTEとNRの連携)からSA(NR単独)への移行
EPC:Evolved Packet Core、LTE(4G)のコアネットワーク
NR:New Radio、5Gの無線アクセス技術。4GのLTE(無線アクセス技術)に相当するもの
NSA:Non-Standalone、ノンスタンドアロン。5G NR(NSA)と4G(LTE)コアネットワークを連携させて実現する5G移動通信システム
SA:Standalone、スタンドアロン。5G NR(SA)と5Gコアネットワークで実現する5G移動通信システム
出所 http://www.soumu.go.jp/main_content/000593247.pdf
〔LTEコアネットワークと連携して5Gシステムを構築するのでノンスタンドアロンと呼ばれる。基地局もLTE基地局とNR基地局の両方を連携させて使用する〕
- NSA(5G導入当初:2020年):端末と基地局間(無線アクセス区間)は、5G(NRのNSA)を使用し、コアネットワークは現在の4GのLTEコアネットワークと連携させて5Gシステムを構築する。
- SA(5G普及期:202X年):端末と基地局間(無線アクセス区間)は、5G(NRのSA)を使用し、コアネットワークは5G単独の5Gシステムを構築する。
〔このことからスタンドアロン(SA)と呼ばれる。基地局はすべてNR基地局となる〕
▼ 注1
「5Gにおけるセキュリティに関する最新動向」(敬称略)
【1】「5Gコア概要 〜5Gコアの技術的特徴および3GPPにおける標準化状況概説〜」株式会社NTTドコモ 青柳 健一郎
【2】「5GMFセキュリティアドホックの活動」株式会社NTTドコモ 石井 一彦
【3】「5Gセキュリティに関する標準化動向」株式会社KDDI総合研究所 窪田 歩
【4】「ITU-T SG17での 5Gセキュリティの議論」TTC セキュリティ専門委員会 委員長三宅 優(株式会社KDDI総合研究所)
▼ 注2
C-V2X:Cellular Vehicle to X、セルラー網〔4G(LTE)や5G(NR)〕を使用して、自動車と何か(X)をつなぐ通信の仕組み。Xは、「V:Vehicle(自動車同士の通信)、I:Infrastructure(自動車と信号機などのインフラとの通信)、P:Pedestrian、交通弱者を結び安全性を確保する通信、N:Network(自動車とネットワークの通信)」を示す。3GPPリリース14とリリース15では、C-V2Xとして「LTE-V2X」が仕様化され、リリース16では「NR-V2X」が仕様化される予定。