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再エネ主力電源化時代! 知っておくべき基礎用語(1)VPP、マイクログリッドとDER

— 分散型電力システムの時代へ —
2020/02/06
(木)
新谷 隆之 インターテックリサーチ株式会社 代表取締役

マイクログリッドとは

〔1〕マイクログリッドの定義

 これまでVPPを中心に話を進めてきたが、次にマイクログリッドの定義を見てみよう。

 国際的なスマートグリッド推進団体であるGSGF (Global Smart Grid Federation、2010年設立)が2017年8月、世界各国のマイクログリッド最新動向についてまとめた白書「STATUS AND INSIGHTS ON MICROGRIDS: FROM PILOT TO COMMERCIAL DEPLOYMENT」(マイクログリッドの現状と洞察:パイロットから商業展開まで)によると、マイクログリッドの定義は国や地域によって異なっているとし、米エネルギー省(DoE)の「The U.S. Department of Energy’s Microgrid Initiative」(米国エネルギー省のマイクログリッドイニシアチブ)において、次のような定義をその一例として挙げている。

「マイクログリッドとは、

  1. 明確に定義された、電気的境界内で相互接続された負荷と分散型エネルギー資源(DER)のグループで、系統側から見ると、単一の制御可能なエンティティ(実体)として機能する
  2. マイクログリッドは、系統に接続した状態(系統接続モード)で動作することも、系統から切断して、独立した状態(アイランドモード)で動作することも可能である。」

※この定義では、マイクログリッドは、グループ内で需給調整できない場合の過不足を上位系統から補ってもらうことを前提にしている。しかし、離島型マイクログリッドと呼ばれる、そもそも系統とは独立したマイクログリッドも存在する。これは、常にアイランドモードで動作するケースと考えるようである。

 なおDoEでは、マイクログリッドを、その規模によって、図3のように類型化している。

  1. 変電所大のマイクログリッド:電力会社の1つの変電所から電力供給されている全域
  2. 1本の給電線全体のマイクログリッド:変電所下の1本の給電線で電力供給されている全域
  3. 給電線の一部のマイクログリッド:給電線下の一部地域で電力供給される範囲
  4. 大口需要家自営線内のマイクログリッド:工場のような大口需要家の構内自営線の範囲

 図4中央のマイクログリッド制御装置は、住宅や商業、産業施設の需要家をDR資源提供者と見ると、その他の発電機や再エネ、蓄電池、電気自動車(EV)など、グループ内のDERを総合的に管理するローカルDERMSとして機能することがわかる。

図4 マイクログリッドの構成要素

図4 マイクログリッドの構成要素

出所 GSGF>>REPORT STATUS AND INSIGHTS ON MICROGRIDS: FROM PILOT TO COMMERCIAL DEPLOYMENT

 マイクログリッド制御装置がDERMSと異なっているとすれば、

  1. 自分がサービスする電気的境界を外部系統から遮断・再接続する機能をもっていること
  2. 系統から遮断してアイランドモード(独立した状態)で動作する場合には、グループ内の需要家はDR資源提供者ではなく負荷として、それ以外のDERの発電量と需給バランスをとる機能をもっていること

である。逆に、系統接続モードで動作している限り、マイクログリッドは系統側から見てVPPアグリゲーターの1つととらえることができる。

〔2〕マイクログリッドの構成要素

 次に、マイクログリッドとはどのようなものであろうか。その構成要素を示したものが前述した図4である。

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