まとめ:分散型電力システムの時代へ
以上、分散型電源(DG)に始まり、VPP、マイクログリッドとは何か、どう違うのかを検討してきた。
現在、いろいろな分散型エネルギー資源(DER)を管理するためのプラットフォームとして、DER管理システム(DERMS)が進化をし続けている。
ローカルな要件を満たすアプリケーションとしてマイクログリッドがあり、さらに蓄電池、蓄熱や、P2X(Power-to-Gas:系統大の余剰電力をいったん水素として蓄積し、必要になれば燃料電池として電気を取り出して利用する形態)など種々のDERを束ね、広域的・総合的に管理するアプリケーションとして、VPP自体は、今後も進化を続けるものと思われる。
再度、GTM Researchの描いた図3のグラフをご覧いただきたい。
将来、発電設備が再エネ100%になった場合には、
- 現在電力会社で系統運用を行っている中央給電指令システムに代わって、
- 各地のマイクログリッドがグループ内の要件を満たしつつ、全国大の系統要件を他のマイクログリッドとシェアしながら、自律協調分散して、送配電を統合制御するDERMSを中心とする、分散型電力システム(Decentralized Power System)の時代になる
ものと思われる。
一足飛びに、そこまでは行きつかないが、政府の「再エネ主力電源化」政策に呼応して設置された経済産業省 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会の「持続可能な電力システム構築小委員会」は、令和元年(2019年)12月26日に「中間取りまとめ(案)」を公開した。
それによると、「災害に強い分散型グリッドの推進のための環境整備」として「遠隔分散型グリッドの導入」(図5)が示されているが、これは、先に挙げたGTM Researchの図2でいうと、ローカルDERMSに相当するもので、日本でも大規模集中電源の時代から一歩踏み出そうとしていることがわかる。
図5 遠隔分散型グリッドの概要
Profile
新谷 隆之(しんたに たかゆき)
インターテックリサーチ株式会社 代表取締役
2009年5月、スマートグリッド関連のリサーチを行うインターテックリサーチ株式会社を起業。欧米での電力取引に関する技術動向、スマートメーター/スマートグリッド/スマートハウス/スマートコミュニティに関する技術動向と標準化動向のリサーチ、コンサルティング業務に従事。2011年より、財団法人エネルギー総合工学研究所にも籍を得て経産省のDR、VPP、EV実証等のプロジェクトにもかかわっている。