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電力システム改革第3弾! スタートする発送電の法的分離

― 送配電網の中立化に向けて分社化を完了! ―
2020/04/12
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

経済産業省が9社の会社分割申請を認可へ

 経済産業省は、2020年4月1日の法的分離の実施に先立ち、2020年3月13日に電気事業者9社注7から提出された会社分割に関する申請を、改正電気事業法注8に基づいて認可した。同事業法では、送配電部門の中立性(後述)を一層確保するため、2020年4月1日に一般送配電事業者と送電事業者の法的分離を実施することが規定されている。

 また同規定には、図1に示すように、検証①小売全面自由化(2016年)前、検証②2020年4月の法的分離前、検証③法的分離後、とそれぞれの適切なタイミングで、電気料金の水準や電力の需給状況、エネルギー基本計画の実施状況などの検証を行い、その結果を踏まえて、必要な措置を行う「検証規定」が設けられている。

図1 電力システム改革の進捗状況の検証

図1 電力システム改革の進捗状況の検証

出所 https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190626002/20190626002-2.pdf

 進捗状況の検証は、経済産業省主催の電力・ガス基本政策小委員会などで審議が重ねられ(後述)、これらを確認のうえ、今回の法的分離が行われることになった。

法的分離以降の各社の事業形態

 ここで、図2に示す、今回の送電部門の法的分離(2020年4月1日)以降(分社化後)の各社の事業形態を紹介しよう。

〔1〕2種類の法的分離方法

 法的分離の方法は、(1)持株会社(HD:Holdings)方式と、(2)発電・小売親方式の2種類に大別される。

(1)持株会社方式

 持株会社方式とは、図2の左上に示すように、持株会社の下に、発電会社、送配電会社および小売会社を、分社化して設置する方式である。東京電力と中部電力の例がこれに当たる。

【A:東京電力の場合】

 東京電力の場合は、持株会社「東京電力ホールディングス(HD)」の下に、

①東京電力フュエル&パワー(FP):燃料・火力発電事業会社

②東京電力パワーグリッド(PG):一般送配電事業会社

③東京電力エナジーパートナー(EP):小売電気事業会社

の3社が、2016年4月に先行して分社化された。なお、東京電力パワーグリッドは、送配電事業の中立性を担保するため、他の2つの事業会社とは異なる、独自の商標を使用する。

【B:中部電力の場合】

 中部電力の場合は、2020年4月1日から持株会社「中部電力」の下に、

①中部電力パワーグリッド:一般送配電事業会社

②中部電力ミライズ:販売事業会社

の2社を分社化する。

【C:新たに東京HDは再エネ会社を分割へ】

 また、これまで、持株会社(親会社)である東京電力HDと中部電力の両者は、ともに原子力と再エネの発電事業を所有している。このうち、東京電力HPと分割準備会社である東京電力リニューアブルパワー〔RP。TEPCO Renewable Power, Incorporated。新会社、2019年10月1日設立〕注9が提出していた、再エネ事業の分割が、2020年3月13日、経済産業省から認定された(分割予定日は2020年4月1日)注10

 東京電力RPは、再エネの主力電源化時代および送配電部門の法的分離を見据えて、東京電力HDの社内カンパニーとして設立されていたものだ。この背景には、東京電力HDと東京電力RPから、産業競争力強化法注11の規定に基づいて提出された「事業再編計画」について、同法の規定に基づいて審査した結果、認定要件を満たすと認められたものである。

 また、従来の東京電力と中部電力の火力発電事業は、2019年4月に「JERA(ジェラ)」注12へ統合されている。

(2)発電・小売親会社方式

 一方、発電・小売親会社方式とは、図2の左下に示すように、持株会社(発電会社と小売会社)を親会社として、その下に送配電会社を設置する方式である。

 この方式は、北海道電力、東北電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力の7社が採用している。この他、類似の方式として、小売部門をもたない「発電親会社方式」として電源開発(J-POWER)がある。

 以上に紹介した各社分社後の送配電会社・小売電気会社の社名や商標(ロゴマーク)を整理したものが、図2の右側である。


▼ 注7
北海道電力、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、電源開発の9社。東京電力は2016年4月に分社化済み。沖縄電力は諸事情を考慮して、送配電部門を別会社化しないことが沖縄地域の安定供給や電気の使用者の利益の確保に必要と判断され、従来の発送電一貫体制を維持する。

▼ 注8
改正電気事業法:2015年6月に成立した「電気事業法等の一部の法律等を改正する法律(平成27年法律第47号)。

▼ 注9
http://www.tepco.co.jp/press/release/2019/pdf4/191001j0201.pdf
http://www.tepco.co.jp/press/release/2019/pdf4/191001j0202.pdf
http://www.tepco.co.jp/press/release/2019/1518330_8709.html

▼ 注10
経済産業省「事業再編計画を認定」

▼ 注11
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/index.html

▼ 注12
JERA:日本(JAPAN)のエネルギー(ENERGY)を新しい時代(ERA)へ、という意味。資本金は50億円。2015年4月30日設立。JERAへの出資比率は東京電力フュエル&パワーが50%、中部電力が50%。事業内容は海外事業も含めて、電気事業・ガス事業・熱併給事業をはじめ、エネルギー資源の開発・売買など。

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