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電力システム改革第3弾! スタートする発送電の法的分離

― 送配電網の中立化に向けて分社化を完了! ―
2020/04/12
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

送電部門の法的分離の実施前の検証例

 改正電気事業法では、電力システム改革の進捗に関する検証規定が設けられている。これに基づいて、どのように電力システム改革による電力自由化が実現され、浸透しているかなどについて、前出の図1に示すロードマップに沿って、電力・ガス基本政策小委員会注13などで、検証の審議が行われてきた。

 その検証時期(チェックポイント)は、前述したように、図1に示す検証①〜③で行われている。

 次に、これらの検証内容のいくつかを、簡単に紹介する。

〔1〕検証例〔その1〕:新電力の全体のシェアは15.8%へ

 図3は、2016年4月に電力小売全面自由化が行われて以降2019年9月までの、新規参入した新電力(旧10電力を除く事業者)のシェアの推移を示したものである。

図3 全販売電力量に占める新電力のシェア(2019年9月時点)

図3 全販売電力量に占める新電力のシェア(2019年9月時点)

※電気の契約は、供給電圧によって大きく次の3つに区分されている。
 ・特別高圧:供給電圧20,000V以上(大規模工場等) ・高圧:供給電圧6,000V(中規模工場、中小ビル等) ・低圧:供給電圧100~200V(2016年4月に自由化)。
 低圧分野には①動力契約(業務用冷蔵庫用や業務用空調用)と②電灯契約(一般家庭の照明用や家電製品用)がある。
出所 資源エネルギー庁「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について」2019年12月26日

 図3に示すように、全販売電力量に占める新電力の全体のシェア(赤色)は、2016年4月の小売全面自由化開始直後は5%程度であったものの、2017年5月以降は10%を超え、2019年9月時点では15.8%と大幅にシェアを上昇させた。

 また電圧別に見ると、特別高圧(5.4%、青色)および高圧(22.3%、橙色)の市場シェアは横ばい傾向にあるが、家庭や商店などを含む低圧のシェアは、16.7%(緑色)と大幅に上昇している。低圧分野で、新電力が市場に急速に普及していることが検証された。

〔2〕検証例〔その2〕:広域機関による供給計画の取りまとめ

 広域機関は、すべての電気事業者(図4の左図および右表参照)が提出する電力の供給計画を取りまとめ、それを評価し、意見を付して経済産業大臣に提出する役割を担っている(以前は旧電力会社等から直接、国に提出されていた)。

 2016年の電力小売全面自由化以降は、ライセンス制(前出の表1の脚注参照)が導入されたこともあって、図4の左側に示すように、広域機関が、発電・小売・送配電事業者それぞれの供給計画を取りまとめて、電力の需給バランスの評価を行っている。

 2018年度は、1,100者ほど(図4の右表および表2参照)を取りまとめたが、発電事業者・小売電気事業者の大幅な増加もあり、2019年度は、1,500者以上(図4の右表および表2参照)の供給計画を取りまとめて経済産業大臣に提出される予定となっている。

〔3〕検証例(その3):広域機関は計41回に及ぶ融通指示を実施

(1)各供給エリアの中央給電指令所と連携

 全国的な規模の電力システムの系統運用を目指す広域機関は、全国10(旧10電力会社)の供給エリア単位で管理されている電力の需給状況や系統の運用状況を、同機関が開発した広域基幹システム注14を使用して、各供給エリアの中央給電指令所注15とリアルタイムに連携させている。

 この連携によって、24時間365日監視し、全国規模で一元的に把握している。

(2)広域機関の会員に電力融通や焚き増しを指示

 広域機関は、災害や電源トラブルなどによって電力の需給状況が悪化する場合、その需給状況を改善させるため、広域機関の会員(電気事業者)に対して、電力の融通や電源の焚き増し(出力の増強)の指示が可能となっている。広域機関の設立以来、各電力会社の供給エリアに対して、2018年度までにすでに計41回にも及ぶ電力の融通指示を実施してきた。

 図5に、広域機関による電力の需給悪化に伴って、融通指示が行われた実績例を示す。

図5 広域機関による電力の需給悪化に伴う融通指示の実績

図5 広域機関による電力の需給悪化に伴う融通指示の実績

出所 https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190626002/20190626002-2.pdf


▼ 注13
総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会

▼ 注14
広域機関システム:広域機関が、発電や需要等の各種計画を事業者から電子的に受け付け、需給状況の管理や連系線利用の計画等の業務を行うためのシステム。事業者の各種計画は、「広域機関システム」を介して提出される。なお、計画提出するためには、事業者は事前にマスターデータの登録が必要である。

▼ 注15
中央給電指令所:電力会社では、系統から供給する電気は蓄えることができない(大容量のためコスト的に蓄電できない)ため、顧客の電気使用量(需要)と発電量(供給)を常に一致させる必要がある。この需要と供給のバランスが崩れた場合、周波数が変動し、最悪の場合には停電に至る恐れがある。このため、24時間365日の体制で監視や発電量を調整する必要があり、これが中央給電指令所の役割である。

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