[特集]

脱炭素社会に向けて市場拡大する洋上風力発電

― 2050年に風力全体は75GW、洋上風力は37GWへ ―
2020/04/12
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2050年に向けた日本の脱炭素社会のビジョン

〔1〕風力発電の占める割合は総電力構成の1.7%

 日本のエネルギー政策は3年ごとに見直され、現在では、2018年7月に発表された「第5次エネルギー基本計画」が推進されている。この基本計画は、2030年度のエネルギーミックスを示しており、カーボンフリー注6の電源を「再エネと原子力」と半々(22%程度ずつ)とする計44%で達成する目標となっている(図5)。

図5 第5次エネルギー基本計画における電源構成:2030年のエネルギーミックス

図5 第5次エネルギー基本計画における電源構成:2030年のエネルギーミックス

出所 加藤 仁、「日本の洋上風力発電の現状とその課題」、日本風力発電協会、2020年3月6日

 また基本計画では、22%程度を担う再エネを主力電源化することが位置づけられているが、再エネの中では太陽光発電が7%であるのに比べて、風力は総電力構成の1.7%(陸上:1.5%、洋上:0.2%)である。これは容量ベースで1,000万kW(10GW)となっている(後出の図10右下を参照)。

〔2〕2050年に向けた日本の脱炭素社会のビジョン

 第5次エネルギー基本計画では、原子力発電は、カーボンフリー電源として、20〜22%の割合で位置付けられているが、再稼働が遅れているため、2030年時点ではそれは期待できない。

 そのような中で、2019年6月に発表された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(閣議決定)では、表2に示すように、2050年に向けて目指すべき脱炭素社会のビジョンが明確にされた。

表2 2050年に向けて目指すべき脱炭素化社会のビジョン

表2 2050年に向けて目指すべき脱炭素化社会のビジョン

出所 閣議決定「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」、令和元(2019)年6月11日

 このビジョンでは、再エネを主力電源化すること、原子力発電への依存度を低減すること、水素社会を実現することなどが示され、さらに火力発電所からのCO2削減に取り組むことも盛り込まれた。

〔3〕JWPAが想定する2050年における電源構成

 欧州をはじめ世界各国では、2030年頃までに石炭火力発電を廃止する政策が趨勢となっており、日本でも2050年には、石炭火力発電が残っているとは考えにくい。

 また、日本はNDC注7として、2050年までに温室効果ガス(GHC:Greenhouse Gas)の80%削減を達成目標にしている。それらを考慮して日本風力発電協会(JWPA)が2050年における電源構成を図6のように想定した。

図6 2050年における電源構成(JWPA想定)

図6 2050年における電源構成(JWPA想定)

出所 加藤 仁、「日本の洋上風力発電の現状とその課題」、日本風力発電協会、2020年3月6日

 図6に示すように、再エネが全体発電量に占める割合は88%となっている。このうち、洋上風力発電の加速度的な導入を背景に、風力発電が34%占めると予想されている。現在もなお、その新しいロードマップをJWPAで審議されているが、パリ協定を実現するには、このレベルまで再エネ(風力)の導入が求められているのである。


▼ 注6
カーボンフリー:排出されるCO2と(植林などによって)吸収されるCO2を±0にして、実質的にCO2排出をゼロにすること。

▼ 注7
NDC:Nationally Determined Contribution、国連に提出する各国の自主的なGHC(温室効果ガス)削減目標

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