動き出した日本の洋上風力ビジネス
〔1〕日本の洋上風力の展開:13GWも可能へ
日本の風力発電(20kW以上)のFIT認定量は、2019年6月末時点で約7.2GW(717.8万kW。そのうち洋上風力発電は27.7万kW)である。図11に、日本の洋上風力発電について、既設と開発中(環境アセスメント中)のマップを示す。
図11に示すように、2019年8月末現在、一般海域で約1,258万kWの洋上風力発電案件が環境アセスメント(環境評価)手続きを実施しており、特に2017年度以降(図11右のグラフ)は、前述した再エネ海域利用法の施行と相まって、急速に増加していることがわかる。
次に、日本で本格的に動き出した洋上風力ビジネスに関する最近のトピックを、いくつか紹介しよう。
〔2〕トピックス①:JWPAとGWECが洋上風力を促進するJOWTFを設立
JWPAは、2020年2月、世界風力会議(GWEC)と共同で、日本洋上風力タスクフォース(JOWTF:Japan OffshoreWind Task Force)を設立した注17。
JOWTFの主な目的は、
- 日本における洋上風力の本格的な導入促進の実現
- サプライチェーンの構築
- 新しい洋上風力産業の創出・育成
である。JOWTF設立時の構成メンバーは、欧米系企業10社と日本企業14社。議長は、JWPAの加藤 仁代表理事とGWECのアラスター・ダットン(Global Offshore Wind Task Forceの議長)氏が共同で務める。
〔3〕トピックス②:JERAが海洋再エネ連合(OREAC)へ加盟
東京電力HDと中部電力の合弁会社「JERA」(ジェラ)は2020年に入り、洋上風力について、次のような2つの大きな発表を行った。
(1)海洋再生可能エネルギー連合(OREAC)への加盟
JERAは、SDGsやパリ協定(脱炭素化)の実現に向けて、洋上風力発電の持続的な拡大を目指して設立された国際団体
「OREAC」注18に、2020年1月に参加した。
OREACは、SDGsやパリ協定の実現に向けて、産業界や金融機関、政府が取りうる行動を取りまとめ、2050年に向けたビジョンの作成に取り組む。この成果は、2020年6月にリスボンで開催される国連海洋会議で公表される予定である。
洋上風力発電は、パリ協定が目指す温度上昇を1.5℃に抑えるために、2050年までに必要な温室効果ガスの年間排出削減量の約10%に貢献することを目指している。
(2)JERAが台湾の洋上風力へ参画
またJERAは、2020年3月9日、台湾における世界最大級の洋上風力発電事業「フォルモサ3」(発電容量は200万kW)への参画を発表した注19。2026〜2030年を目標に、商用運転を開始する。
2025年までに脱原発目標を決定している台湾は、表4に示すフォルモサ1〜3号の計250万kWの洋上風力発電事業を推進している。2025年までに総計発電容量570万kWの洋上風力の導入を予定している。
表4 台湾における洋上風力発電事業(フォルモッサ1〜3)のプロフィール
出所 JERA、「台湾彰化県における洋上風力発電事業「フォルモサ3」への参画について」、「別紙:台湾における洋上風力発電事業概要」
〔4〕トピックス③:大阪ガスが洋上風力発電でマッコーリーと協定
大阪ガスとマッコーリーグループ(Macquarie Group、以下マッコーリー)のアカシア・リニューアブルズは、2020年3月9日、日本国内における洋上風力発電の共同検討を目的とした協力協定を締結した注20。両社は、国内において具体的な洋上風力発電プロジェクトの検討を開始している。
大阪ガスは、2030年度までに国内外で100万kW規模の再エネ電源を開発・取得する目標を早期に達成し、それを上回る電源の開発を目指している。現在、60万kW以上の再エネ電源を開発・運営しており、国内で現在8件(約14万kW)の陸上風力発電所を保有している。
〔5〕トピックス④:東京電力HDとオーステッドが洋上風力発電で新会社設立
東京電力HDとデンマークの洋上風力発電の大手企業オーステッド(Ørsted)は、2020年3月18日、銚子沖洋上風力プロジェクトの推進に向けた共同出資会社「銚子洋上ウインドファーム株式会社(Choshi Offshore Wind Farm)」を設立することで合意した注21。
両社はすでに、2019年1月18日に洋上風力発電の協働に関する覚書を締結し、千葉県の銚子沖洋上風力プロジェクトの共同開発の枠組みや体制を構築してきた。
すでに東京電力HDは、再エネの主力電源化に向けて、2019年8月に、国内洋上風力発電について、総開発規模200〜300万kW構想を打ち出した。当面は、銚子沖合に最大出力37万kWの洋上風力発電(着床式)を構築し、2024年度以降に商用運転を開始する計画を発表している注22。
今後、両社は、銚子洋上ウインドファームを通じて、銚子沖洋上風力プロジェクトの開発を進めていく。
* * *
国際的に、日本の洋上風力発電は、2040年に4GW程度しか導入されないと認識されているのが現状である(前出の図4参照)。しかし、これまで見てきたように、日本では2030年に10GWあるいはそれ以上の導入の可能性がある。
そこで、現在求められているのは、政府主導による明確な洋上風力発電に関するグランドデザイン〔中長期的(2030、2050年)導入目標〕の策定である。これによって、新しい洋上発電市場に関連産業が新規参入しやすく、投資しやすくなるからだ。
日本は、洋上風力発電の産業を創り出し育成していく政策や、制度設計が必要なのである。
▼ 注17
http://log.jwpa.jp/content/0000289719.html
▼ 注19
フォルモサ(Formosa、福爾摩沙)台湾の別称。
▼ 注20
https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr2020/1285366_43661.html
▼ 注21
銚子洋上ウインドファームの出資比率;東京電力HD 51%、銚子オーステッド(東京都千代田区、オーステッドの子会社):49%
▼ 注22
http://www.tepco.co.jp/press/release/2019/1516225_8709.html
http://www.tepco.co.jp/press/release/2019/pdf3/190829j0101.pdf