トヨタとNTTのスマートシティの取り組み
〔1〕トヨタの「Woven City」(ウーブン・シティ)で実証
トヨタとNTTは、3年前の2017年3月27日から、コネクティッドカー注6向けのICT基盤の研究開発に関する協業を公表し、協力関係を築いてきた。
その後、トヨタは、米国ラスベガスで2020年1月7日に開催されたCES 2020において、実証都市「コネクティッド・シティ」プロジェクトを発表した。このプロジェクトでは、トヨタが2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本の東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を利用して、各パートナー企業や研究者と連携しながら、新たな街づくりに向けた実証を開始している。
トヨタは、この街を「Woven City」(ウーブン・シティ)注7と名付け、スマートシティの実現に向けた実証実験を推進している。
〔2〕NTTは各自治体や企業等とスマートシティで協業
一方、NTTグループは、現在、福岡や札幌、横浜、千葉などの各自治体や企業等とスマートシティの実現に向けて協業している。先に述べたNTTアノードエナジーに続いて、NTTが保有する不動産について、ICT技術を活用してスマートシティを推進するNTTアーバンソリューションズを2019年7月に設立するなど、NTTグループがもつ資産(アセット)を活用して、スマートシティ実現に向けた取り組みを全国展開している。
スマートシティ実現のコア基盤「スマートシティプラットフォーム」
〔1〕スマートシティの心臓部(コア基盤)
このようにスマートシティの実現に向けた取り組みを進める中、トヨタとNTTは、スマートシティの構築に伴う課題解決や価値の向上に効果を上げるためには、両社が連携し一体となって推進することが重要とし合意に達した。
そこでまず、スマートシティを実現する心臓部(コア基盤)となる「スマートシティプラットフォーム」を共同で構築・運営し、国内外のさまざまな「まち」に連鎖的に展開することとなった。
〔2〕「スマートシティプラットフォーム」の構成
図2に、スマートシティ実現のためのコア基盤「スマートシティプラットフォーム」の構成を示す。このプラットフォームは、
- 最上位のレイヤ3:サービス層(さまざまなサービスを提供する層)
- 中位のレイヤ2:プラットフォーム層(各種プラットフォーム機能の提供)
- 最下位のレイヤ1:アセット層(さまざまな都市アセット)
の3つのレイヤから構成されている。図2に示すレイヤ3とレイヤ2の間、およびレイヤ2とレイヤ1の間は、情報通信ネットワーク〔例:4G(LTE)や5Gなど〕を介して接続される。
図2 スマートシティ実現のコア基盤「スマートシティプラットフォーム」の構成
出所 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/32057066.html
https://www.ntt.co.jp/news2020/2003/200324b.html
各レイヤの機能と内容を、表2に示す。
表2 「スマートシティプラットフォーム」の各レイヤ
※デジタルツイン:Digital Twin。いきなり実在(リアル)のスマートシティをつくるのではなく、コンピュータ/CADなどのデジタル環境(バーチャルな環境)でリアルなスマートシティと同様なものを設計してバーチャルモデルをつくり、スマートシティの設計開発を行う方法。「リアルのまち」とそっくりな「バーチャルなまちのモデル」が瓜二つであることから、デジタルツイン(デジタル上の双子)と呼ばれる。
出所 各種資料をもとに編集部で作成
▼ 注6
コネクティッドカー:外部接続でき、情報のやりとりができるクルマをいい、社会のセンサー機能にもなり得る。
▼ 注7
Woven City:街を通る道を3つに分類し、それらの道が網の目のように織り込まれた街(Woven)のこと。3つの道の分類は、①スピードが速い車両専用の道として、完全自動運転、かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道、②歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道、③歩行者専用の公園内の歩道のような道、としている。
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31170943.html