気候変動問題と新型コロナウイルス
写真1 新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真
出所 https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/news/COVID19_specialpage
現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナ(図1、表1)と、室温効果ガス(CO2)排出による気候変動問題は、ともに人類の生存に重大な影響を与える問題であり、国際社会が協調して取り組まなければ解決できない重要な問題である。
この背景には、経済のグローバリゼーションが深く関連している。経済のグローバリゼーションとは、利潤の極大を求めるために、「ヒト・モノ・金・情報」の移動がグローバル化(世界化)し、自由化している現状のことである。
図1 COVID-19ダッシュボード(各種情報の表示画面)※[2020年5月27日4:32現在(現地時間)]
※米国ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)のシステムサイエンスおよびエンジニアリングセンター(CSSE)が運営。同サイトは2020年1月22日に立ち上げられた(1時間ごとに更新)。
①「全世界の新型コロナ感染者数」(左上)、②「日時表示」(左下)、③「発症した国・地域数」(真ん中下)、④「死亡者数および回復者数」(右上)、⑤「感染者数の増加傾向のグラフ」(右下)等が表示されている。図の中央には全世界各国・地域の累積感染者数の分布が●印で表示されている。
出所 https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
表1 日本国内の新型コロナウイルス感染者の状況[米国現地時間:2020年5月27日4:32現在]
松下氏は、従来の風邪の原因となっているインフルエンザウイルス(ヒト・コロナウイルス)とは異なる新型のコロナウイルスである、2002年のSARS(サーズ。SARS-CoV)や2012年のMERS(マーズ。MERS-CoV)、2019年のSARSーCoV-2などが、約20年の間に続いて出現していることは、異常な発生頻度であると、専門家の意見を紹介注2しながら指摘した(図2)。
図2 新型コロナの発生の国・地域数と感染者数・死亡者数(2020年5月27日現在)
注1:「終息」は「完全に終わる」ことを意味し、「収束」は「終息」には至らないが、事態などが「一定の状態に落ち着く」ことを意味する。
注2:SARS-CoV-2(SARSコロナウイルス2、新型コロナウイルス)によって発症する「新型コロナウイルス感染症」はWHO(世界保健機関)により、COVID-19[コビッド・ナインティーン]と命名された(2020年2月11日)。
注3:世界中のヒトが毎年感染し、冬季に流行のピークがある、いわゆる①風邪のウイルス(ヒト・コロナウイルス)4種類(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1。感染者数:70億人)と、②動物から感染する重症肺炎ウイルス2種類(SARS-CoVとMERS-CoV)が知られているが、これに今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、感染源は現在不明)が加わった。HCoV:Human Coronavirus、ヒト・コロナウイルス。
出所
※1
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou05/06-02.html
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html
※2
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers.html
※3
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
さらに、これらの新型コロナの発生は、気候変動や無秩序な開発によって生態系が変化し、ヒトと野生動物の距離が変化注3していることが原因となっている可能性があり、いずれの問題にも高い危機意識と実効性のある措置が求められている、と述べた。
▼ 注1
・IGESプレスセミナー 地球環境課題と国際動向 解説シリーズ2020、第1回「2020年重要イベントと押さえておくべきポイント-新型コロナウイルスの影響を踏まえて-」
・IGES(Institute for Global Environmental Strategies)は、公益財団法人 地球環境戦略研究機関。設立は1998年3月31日
▼ 注2
山本 太郎氏(長崎大学教授)、2020年4月15日付朝日新聞
▼ 注3
産業の進展とともに森林などの乱開発が進み、「野生動物」の生息する領域が狭くなり、「野生動物」と「家畜やヒト」との距離が縮小してきた。このため、従来、野生動物の間で維持されていた病原体が、家畜やヒトに広がる可能性が増大している。これに加えて、温室効果ガスの排出量の増加による地球温暖化という新たな事態によって、地球の生態系が変化してきている。