5事業者チームの取り組み:「エネファーム」を活用したVPP実証
〔1〕「エネファーム」の発電と給湯の原理
関西電力・日本ユニシス・住友電気工業・パナソニック・東京ガスの5事業者チーム(表3)は、太陽光発電設備を利用する一般家庭に設置された、パナソニック製のPEFC型(後出の図6の脚注参照)家庭用燃料電池「エネファーム」(<例>定格発電出力:700W)を活用したVPP実証を開始した。
エネファーム(ENE・FARM)とは、「エネルギー(Energy)」と「ファーム(Farm、農場)」の造語で、家庭用燃料電池のことである。省エネ・省CO2に加えて、電力のピークカットにも貢献する分散型エネルギーシステムである(図5を参照)。
図5 「エネファーム」の発電の原理と給湯の仕組み
※エネファーム製品例:パナソニックの家庭用燃料電池「エネファーム」(燃料電池ユニット+貯湯ユニット)の製品の外観や仕様は下記URLを参照。
https://panasonic.biz/appliance/FC/lineup/house01.html
出所 一般社団法人燃料電池普及促進協会のホームページをもとに編集部で作成
2020年度の実証では、東京ガスの都市ガス供給エリア(後出の図6)内における卒FITの顧客を対象に、
図6 エネファームを遠隔制御するためのシステム構築
Bルート:スマートメーター(スマメ)と建物内に設置された機器(例:図中のゲートウェイやルータ)を結ぶ通信経路。これに対して、スマートメーターと電力会社を結ぶ通信経路はAルートと呼ばれる
PEFC型:PEFCはPolymer Electrolyte Fuel Cell(固体高分子型燃料電池)の略。SOFC型エネファームと比較して、最大1日2回程度の起動停止が可能(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell、固体酸化物型燃料電池)
出所 https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2020/pdf/0601_3j_01.pdf
- 一般家庭向けの太陽光発電の発電量予測システム
- 需要予測システム
- エネファームの遠隔制御システム
を構築し、太陽光発電設備とエネファームを組み合わせ、電力の自家消費も考慮したエネルギーマネジメント(EMS)を目指す。
〔2〕実証内容:「エネファーム」を遠隔制御
(1)エネファームを遠隔制御するためのシステム構築
図6は、今回のVPP構築実証で行われる、東京ガスの都市ガス供給エリアに設置される「エネファーム」を遠隔制御するためのシステム構成図である。
これまでのVPP構築実証事業において、日本ユニシスが構築したRAサーバ注12や住友電気工業製のゲートウェイ(図6の中央)などに、IoT技術を駆使して、エネファームとの遠隔通信機能(インターネット網を利用)を追加した。さらにエネファーム本体にも、遠隔制御機能を追加することによって、VPP実証環境を構築する。
(2)自家消費実証およびDR指令に基づいた制御実証の実施
図7は、太陽光発電を利用する環境下で、エネファームを制御しながら電力の自家消費を行う実証のイメージ図である。
図7 エネファームを制御する自家消費実証
出所 https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2020/pdf/0601_3j_01.pdf
太陽光発電設備の発電量や家庭内の消費電力需要の実績・予測に基づき、最適なエネルギーマネジメントに向けて、エネファームを制御した自家消費の実証を行う。
さらに、一般送配電事業者や小売電気事業者などとの電力取引などを想定した、DR(デマンドレスポンス)指令に基づいた制御なども行い、エネファームがVPPとして、どれくらいの潜在能力をもっているか、その評価や技術的知見の獲得を目指す。
(3)具体的なエネファームの制御(停止・稼働)
具体的なエネファームの制御については、図7に示す通りである。
まず、太陽光発電の発電予測システムおよび需要予測システムによって顧客の翌日の需給バランスを予測し、太陽光発電だけで家庭内需要を賄えることが予測できる時間帯では、エネファームを停止させて(図7中央)、太陽光発電で発電した電気をより多く使用するようにする。
一方、深夜や夕方(晩)など、太陽光がない時間帯は、エネファームを稼働させて発電し、その電力を自家消費する。
さらに、実フィールドでリソースアグリゲーター(関西電力)などと、電力取引を想定した指令に基づく制御を行い、構築したシステムの検証、およびエネファームのVPPリソースとしての技術的な評価を実施する。
この実証内容を通じて得られた知見をもとに、エネファームも含めたあらゆる家庭用のエネルギーリソースを遠隔から制御し、エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)注13事業の可能性を広げる。
これによって、エネルギーを効率的に活用すると同時に、CO2排出量を大幅に削減して、脱炭素社会の実現を目指す。
▼ 注6
詳細は、関西電力『関西VPPプロジェクト』H31年度実証結果と今後の取組み」(2020年3月24日)の2ページ目を参照。
▼ 注8
電力系統の周波数を一定(50Hz/60Hz)に保つために、一般送配電事業者が短時間に調整に使用する電力。2021年4月に開設される需給調整市場で取引が開始される。
▼ 注9
需要家とVPPサービス契約を直接締結して、需要家側エネルギーリソースや分散型エネルギーリソースを統合制御し、VPPやDR(デマンドレスポンス)からエネルギーサービスを提供する事業者。表2を参照。
▼ 注10
アグリゲーター:需要家の電力需要を束ねて効果的にエネルギーマネジメントサービスを提供する事業者。表2を参照。
▼ 注11
充電器の他に、EV/PHEVの充放電を遠隔制御できるV2X(Vehicle to X)機器など。
▼ 注12
RAサーバ:日本ユニシスが開発した、リソースアグリゲーター(RA)側に設置されるサーバ。
▼ 注13
エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス:Energy Resource Aggregation Businesses、略称ERAB(イーラブともいわれる)。VPPやDRを用いて、一般送配電事業者や小売電気事業者などの取引先に対して、調整力や電力料金削減などの各種サービスを提供する事業のこと。