[特集]

VPP実証事業2019年度の成果と2020年度の展望

― EV/蓄電池が注目されV2G実証事業が急展開 ―
2020/05/09
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

日本の電力市場は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化を目指して、新しい動きが活発化している。
2019年11月に太陽光発電による「卒FIT」市場が登場し、これと連動して家庭用蓄電池の低価格化も進展している。さらに「発送電の法的分離」によって一般送配電事業者が誕生し、再エネで発電された電力の公平な送電を目指す、次世代送電網への期待も高まっている(本誌2020年4月号参照)。一方、クルマはモーター駆動となって電動化され、V2G(EV 注1 の車載蓄電池を系統接続し活用する技術)の実用化の動きも活発化している。
このような環境のもと、5年にわたって実施されてきたVPP構築実証事業は2020年度が最終年度となる。
ここでは、2020年度に展開されるVPP構築実証事業の全体像と、2019年度実証事業の成果の一部を見ていく。記事中の用語解説は、記事の最後に掲載したので参考にしていただきたい。

2020年度のVPP実証事業の新展開

〔1〕VPPの概要

 VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)とは、図1に示すように、

  1. 一般住宅やビル、工場などの需要家側に設置されている太陽光発電、蓄電池、電動車(EV/PHEV)、ヒートポンプ、給湯器(エコキュート)、照明、空調、自家発電設備、コージェネレーションシステム(CGS)など、多様な場所に散在しているエネルギーリソース(DER:分散型エネルギー資源)を、
  2. IoTでDERを接続し、遠隔制御することによって、個々のエネルギーリソースの電力を束ねて「調整力」(後述)を創出し、
  3. 既存の火力発電所(大規模な集中型発電所)などと同等の機能(電力)を提供する

新しい電力システムである。

図1 VPPビジネスの推進役は、アグリゲーションコーディネーター(AC)とリソースアグリゲーター(RA)

図1 VPPビジネスの推進役は、アグリゲーションコーディネーター(AC)とリソースアグリゲーター(RA)

出所 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html

 これによって、従来、火力発電所などで調整していた真夏などにおける電力消費のピーク時の「調整力」としても活用できるようになる。

 すなわち、電力のピーク時に合わせてこれまで行われてきた、大規模な火力発電所の増設などが不要となるため、発電に関する設備投資を下げたり、電力コストを下げることが可能となる。

〔2〕調整力とは

 「調整力」とは、一般送配電事業者の指令に基づいて、そのエリア内(旧電力10社の区域内)の電力の需要と供給のバランスを「短時間に調整する電力」のことである注2。その調整のために利用される前述した各エネルギーリソース(DER)は、アグリゲーターというプレイヤーによって束ねられて「調整力」として利用できるようになる。

 アグリゲーターとは、VPP実証事業のA事業者(VPP基盤整備事業者、後述)と共同でVPP実証を行い、VPP構築に向けて技術実証や制度的課題の洗い出しを行う事業者のことである。

 現状では、その調整力は公募によって公平に調達されることとなっている。その一例が、デマンドレスポンス(DR注3:Demand Response、電力の需要側応答)と呼ばれる仕組みである。

〔3〕VPPビジネスの推進役はACとRA

 その調整力を具体的に創出するVPPビジネスの推進役は、図1に示す、

①アグリゲーションコーディネーター(AC:Aggregation Coodinator)

②リソースアグリゲーター(RA:Resource Aggregator)

という2階層のプレイヤーである。

 リソースアグリゲーター(RA)は、住宅やオフィスビル、工場などの需要家とVPPサービス契約を直接締結して、リソース制御を行う事業者である。

 その上位に位置するアグリゲーションコーディネーター(AC)は、リソースアグリゲーターが制御した電力を束ね、一般送配電事業者(系統運用者)や小売電気事業者、再エネ発電事業者と直接電力取引を行う事業者のことである。


▼ 注1
EV:Electric Vehicle、電気自動車。電動車という場合もある。電動車という場合、①電気をエネルギー源として、電動機(モーター)で走行する電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)と、②電気と化石燃料(ガソリン等)の両方をエネルギー源として、モーターとエンジンを使い分けて走行するプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)を含めて、EV/PHEVと表現されるケースが多い。

▼ 注2
送配電線から住宅や工場に供給される電力(系統電力)は、余剰電力を蓄電できない(蓄電池のコストが高い)ため、供給側で、瞬時に電力の需要と供給が一致するように(「同時同量」となるように)制御している(これを電力の需給バランスをとるという)。この量が常に一致していないと、電気の周波数(50Hz/60Hz)が乱れてしまい、電気の供給が正常にできなくなってしまい、その結果、電力供給側で安全装置が起動し発電所が停止する。
例えば、2018年9月に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震によって引き起こされた北海道全域の停電“ブラックアウト”(大規模停電)は、この電力需給バランスの崩壊が原因であった。

▼ 注3
DR:Demand Response、電力の需要側応答。一般送配電事業者などから電力の需要側に発するピーク需要削減等の要請(DR指令)に応じて、需要側が電力需要を変更する仕組み。
例えば、天気予報で翌日の最高気温の予想が35℃で電力需要が大幅に増えそうな場合、電力供給側はピーク時間帯にあまり電気を使わないよう需要家に要請(Demand)すると、一般家庭やオフィス、工場などがエアコンのスイッチを切るなどの行動を起こし(Response)、ピーク需要削減を果たすような仕組み。協力者にはインセンティブ(報奨金)が支払われる。

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