3GPP標準仕様と「ローカル5G」の関係
〔1〕パブリック5Gの技術をローカル5Gでも使える
通信事業者が全国的に展開している5Gの商用サービス(パブリック5G)を使用して、自治体などの地域や企業自身が主体となって、ビルや工場、大学キャンパスの敷地内などの特定なエリアに、自営向けにプライベート5Gネットワークを構築し、利用できる「ローカル5G」が具体化し始めている。
ローカル5Gでは、3GPPで策定されたパブリック5G仕様を使えるため、5Gがもつ、さまざまな新技術をローカル5Gでも利用できる。ただし、ローカル5Gで使用する周波数は、総務省から割り当てられる免許帯域を使用することが前提であるため、その手続きや経費も必要になる。
例えば、ローカル5Gの電波利用料注7は、①基地局当たり2,600円/年、②無線端末(例:スマホ)あたり370円/年となっている(無線端末:ローカル5Gの通信モジュールを搭載した端末のこと。包括免許注8)。
〔2〕3GPPリリース16におけるローカル5Gの位置づけ
ローカル5Gは、3GPPの標準仕様でどのように位置づけられているのだろうか。
前述した3GPPリリース16では、パブリック5Gを「プライベートネットワーク」(自営網)として利用する際の標準仕様が策定されており、これが日本で「ローカル5G」と呼ばれているものである注9。
3GPPでは、「プライベートネットワーク」については、NPN(Non-Public Network、非パブリックネットワーク)という名称が使用されている。このNPNは、展開の方法によって、次のようなSNPNとPNI-NPNの2つの方法がある注10。
(1)SNPN:パブリック5Gから完全独立型
SNPN(Stand-alone Non-Public Network、スタンドアロン型の非パブリックネットワーク)とは、外部のパブリック5G環境から完全に独立したスタンドアロンな自営5Gネットワーク(ローカル5G)のことである。
NPNオペレータ(運用者)によって運用され、パブリック5Gネットワークとは完全に独立したプライベートネットワーク(ローカル5G)として構築される。
(2)PNI-NPN:パブリック5Gと共有型
PNI-NPN(Public Network Integrated Non-Public Network、パブリックネットワーク統合型NPN)とは、パブリック5Gネットワークと統合され、共有された形で構築される非パブリックネットワーク(ローカル5G)である。
図3に、パブリック5Gとローカル5Gの展開イメージ例を示す。
図3 パブリック5Gとローカル5G展開のイメージ例
出所 国立研究法人情報通信研究機構(NICT)、「ローカル5Gに向けたNICTの取り組みと関連情報」(2018年12月26日)を一部加筆・修正
図3には、2つの通信事業者(セルラー通信事業者A、B)と、1つのローカル5G、3つの無線端末A、B、Cの関係を示している。
図3では、
- 半径数百m〜数kmの通信範囲をカバーするパブリック5Gの「マクロセル」(図3の桃色および紫色部分)、
- 半径数十m〜数百mの狭い範囲をカバーするローカル5G(5G自営無線ネットワーク)の「マイクロセル(図3の緑色の部分。スモールセルともいわれる)」、
- これらの環境下で通信する3種類の無線端末
が適材適所に配置され、活用されているイメージを示している。
ローカル5は、パブリック5Gと同等の通信技術を使用するため、通信の安定性や独自のネットワークを構築できる。
また、電波利用料はかかるものの、セキュリティを担保できるほか、端末と基地局間の通信(データのやり取り)が低遅延で行えるなどの特徴がある。
▼ 注7
ローカル5Gの概要
▼ 注8
包括免許:移動体通信事業において、スマホなどの無線局(無線端末)が個別に免許を受けるのではなく、1つの免許で複数の同一タイプの無線局を開設できる制度のこと。包括免許制度が採用される以前は、スマホや自動車電話などのような移動端末の無線局を開設するたびに個別に免許が必要だった。
▼ 注9
総務省、「ローカル5G導入に関するガイドライン」、令和元年(2019年)12月における「ローカル5Gの定義」は、次の通り。
『ローカル5Gは、携帯電話事業者による全国向け5Gサービスとは別に、地域の企業や自治体等の様々な主体が自らの建物や敷地内でスポット的に柔軟にネットワークを構築し利用可能とする新しい仕組みである。』
https://www.soumu.go.jp/main_content/000659870.pdf
なお、後述するようにドイツ・ダイムラー社でも「local 5G network」と呼称されているので「ローカル5G」という用語は、世界で通用するようになってきている。