[【8周年記念】特集]

【気候変動アクション日本サミット2020レポート】脱炭素化への日本の課題

― 「ゼロエミッション」は国家戦略、事業転換しビジネスが変わる ―
2020/11/07
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

「プレ・パリ協定」から抜け出せない日本

〔1〕再エネ導入率の低い日本

 表4は、日本の最近のエネルギー需給見通しや基本計画の内容を整理したものである。世界が激動している中で、日本が、まだ「プレ・パリ協定(パリ協定以前)」から抜け出せない状態になっていることがわかる。

表4 ここ数年の日本のエネルギー政策

表4 ここ数年の日本のエネルギー政策

NDC:Nationally Determined Contribution、国別削減目標
出所 末吉竹次郎「脱炭素化への日本の課題」、気候変動アクション日本サミット2020(2020年10月13日)をもとに編集部で作成

 表4の結果として、図7に示すように、昨年(2019年)の世界の電力消費の中の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力)の合計が占める割合を見ると、日本の再エネ比率は20%と、非常に低い位置(図7の右から2番目の棒グラフ)となっている。

図7 世界の2019年の電力消費量に占める再エネの割合(更新日:2020年6月25日)

図7 世界の2019年の電力消費量に占める再エネの割合(更新日:2020年6月25日)

注:各国の電力消費量=[国内の発電電力量]+[他国からの輸入量]―[他国への輸出量]。グラフにおけるデータは、所内電力量(ネット発電量)に基づく。
〔出典:自然エネルギー財団、「統計|国際エネルギー」(更新日:2020年6月25日)
出所 末吉竹次郎、「脱炭素化への日本の課題」、気候変動アクション日本サミット2020(2020年10月13日)、をもとに一部修正

〔2〕「脱炭素」戦争は、ネットゼロを掲げた国家の総力戦

 末吉氏は、「私が日本に望みたいことを、これから申し上げたい」と前置きし、次のように語った。

「こんにちの気候変動は、非常にサイエンスな話です。ですから、科学的知見とデータに基づいて、気候危機に対して正しい危機感をもつことが重要なのです。危機感を共有しなくては同じゴールを共有できません。あるいは、危機感をもつ人たちの政策を理解できません。したがって、私が今、日本に申し上げたいのは、ネットゼロ(CO2排出量ゼロ)を早く受け入れてほしい、覚悟してほしいのです。なぜならば、‘低炭素’時代の思考・戦略では、21世紀のこれからのビジネス競争には勝てないからです。」

 さらに、末吉氏は、「‘脱炭素’戦争は、ネットゼロを掲げた国家の総力戦です。国の総力をあげなければ、日本は勝てないのです。現状は、日本のもつ潜在力を全部引き出して、ようやく競争できるかどうかの状況なのです。全部の潜在力を引き上げるには、高いハードル(削減目標)を設定して引き上げていく、これが国の政策であり、戦略ではないでしょうか。」「もっといえば、ネットゼロを掲げなければ、新しく始まった世界の競争には参加資格がないと思います。あるいは、そのような世界水準のネットゼロというゴールを共有しないと、日本に対して信頼を置いてビジネスをしてくれないという状況なのです」と続けた。

〔3〕「第6次エネルギー基本計画」への期待

 日本政府では、2020年10月13日、「第6次エネルギー基本計画」の見直しの議論が始まった注13ことから、末吉氏は、日本のCO2削減のロードマップについて、図8に示すような施策を提言した。

図8 日本のCO2ネットゼロに向けたロードマップの大幅見直しを

図8 日本のCO<sub>2</sub>ネットゼロに向けたロードマップの大幅見直しを

出所 末吉竹次郎、「脱炭素化への日本の課題」、気候変動アクション日本サミット2020、2020年10月13日

  1. 2030年度のNDC(室温効果ガスの国別削減目標)を、26%削減から45%削減へと引き上げる。
  2. 2030年度の再エネ比率を、22%〜24%から45%まで引き上げる。

▼ 注13
資源エネルギー庁、「エネルギー基本計画の見直しに向けて、令和2(2020)年10月13日
総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第32回会合)

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