[【8周年記念】特集]

大規模蓄電池化の技術課題と今後の展望

SmartGridフォーラム2020レポート【吉野 彰 氏(旭化成 ノーベル化学賞受賞者) × 江崎 浩 氏(東京大学 SmartGridニューズレター編集委員長)】
2020/12/10
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

MaaS時代にもグーグルモデルが登場

〔1〕まさにMaaSの世界をデモ

江崎 吉野先生の基調講演で紹介されたスマートシティの動画(写真2に一部を掲載)を見て感じたことは、自分が目的地へ向かう時、自動運転車はコンピュータが判断したとおりの道路を走ることになります。しかし、例えば電気が不足してきた時に、充電スタンドがある場所をヘルプしてくれてクルマを回してくれると、利用者にとっても電力会社にとってもうれしいことですね。

写真2 スマートシティを走るAIEVによるMaaSの具体的なイメージ例(注:下記4つの写真は吉野氏の基調講演ビデオより)

写真2 スマートシティを走るAIEVによるMaaSの具体的なイメージ例(注:下記4つの写真は吉野氏の基調講演ビデオより)

AIEV:Artificial Intelligence Electric Vehicle 、AI(人工知能)の技術で実現する「無人自動運転機能」をもつ電気自動車のこと
出所 吉野 彰「リチウムイオン電池が拓く未来社会」、インプレス SmartGridフォーラム2020、2020年11月5日

吉野 ええ、それもMaaSに近い概念です。私の講演で使用した動画(写真2)でご紹介した自動運転車(AIEV)でも、車内のディスプレイに、ジュースを飲みたいという乗客のリクエストに応える広告メニューを表示し、最寄りのキウイフルーツジュース店に案内するようなケースが、まさにMaaSの世界です。あのジュース店は、大繁盛することでしょう。

〔2〕AIEVの登場で現在の広告モデルは消滅へ

江崎 それは、グーグルモデルですよね。

吉野 はい、まさにそうです。あのクルマ(写真2のAIEV:AIによる自動運転EV車)の中にあるディスプレイに、スポンサーは積極的に広告を打つようになると思います。ということは、今、広告収入に頼っている産業はなくなるということですね。それくらい恐ろしいことが起こるのです。

江崎 言ってみれば、今の広告産業がテレビや新聞からすべてオンラインになって、グーグルにもっていかれてしまったのと同じ現象が起こるようになるのですね。

吉野 そうです。AIEVは、まさに広告を打つ側も、ムダのない100%の確率でお客様を連れてきてくれる集客マシンとなるのです。

〔3〕重要な技術革新の「読み」

江崎 それが、先に基調講演で話された、AI制御による自動運転による利便性だけでなく、環境(CO2排出ゼロのEV)と経済性(蓄電池の再利用)も統合化した、MaaSによる新しいビジネスモデルなのですね。これが本日の吉野先生から視聴者へのメッセージですね。

吉野 そうですね。ですから「知恵を出す」ということは、わかってしまえば当たり前の話なのです。

江崎 わかってしまえばとても簡単なことですが、それにたどり着くには、本当に考え抜かないと出てきませんね。

吉野 それに加えて重要なのは、将来の技術革新に関する「読み」です。今は不可能だけれども、5年後に技術が進化したら、いとも簡単に可能になるという「読み」なんです。

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