[特別レポート]

脱炭素で世界の先頭を走る欧州の最新エネルギー戦略

― EUタクソノミーを基準に2050年ゼロエミッションを推進 ―
2021/02/01
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

欧州では、「太陽光」「陸上風力」「洋上風力」などの自然エネルギー(再エネ)が急速に拡大し、「脱炭素の面」からも「コストの面」からも市場競争力を強め、従来の火力や原子力に代わる主力電源として躍り出てきた。
2020年12月15日、メディア・セミナー「脱炭素で先頭を走る欧州 =2050年ゼロエミッションの戦略と技術」(注1)が開催され、脱炭素で世界の先頭を走る欧州が、「EU加盟27カ国全体」または「欧州主要5カ国」に関して、次々と発表する脱炭素戦略について、自然エネルギー財団 シニアマネージャー 石田 雅也(いしだ まさや)氏が、EUタクソノミーやコスト分析を交えて解説した。
ここでは、最新の欧州の脱炭素戦略について、石田氏の発表を中心にレポートする。

EUの脱炭素ロードマップ「欧州グリーンディール」

 EU(欧州連合、表1)は、2018年11月、「2050年のカーボンニュートラル」を発表したが、これをベースに、2019年12月、EUの脱炭素ロードマップを示した「欧州グリーンディール」(EGD:European Green Deal)注2を発表した(表2、図1)。

表1 EU(欧州連合)の主要な機関と加盟国

表1 EU(欧州連合)の主要な機関と加盟国

※加盟時は西ドイツ。英国は2020年1月31日にEUを離脱。 
出所 外務省「欧州連合(EU)概況」をもとに編集部で作成

表2 EC(欧州委員会)が発表したカーボンニュートラルに向けた方針

表2 EC(欧州委員会)が発表したカーボンニュートラルに向けた方針

出所 各種資料より編集部で作成

図1 EUの脱炭素ロードマップ「欧州グリーンディール」(2019年12月)

図1 EUの脱炭素ロードマップ「欧州グリーンディール」(2019年12月)

出所 自然エネルギー財団、「脱炭素で先頭を走る欧州 =2050年ゼロエミッションの戦略と技術」、メディア・セミナー資料(2020年12月15日)を編集部で一部加筆・修正

 図1に示すように、「欧州グリーンディール」では、2030年および2050年に向けた脱炭素の目標に加えて、クリーンで安価、かつ安定したエネルギー供給に関する方針などが発表されている。

 さらに、2020年1月には「欧州グリーンディール投資計画」が発表され、2020年から2030年までの10年間で1兆ユーロ(約126兆円)以上を投資することと同時に、「公正な移行メカニズム」が発表された。

 この移行メカニズムでは、石炭産業が盛んなドイツの石炭産業の従事者や地域を、どのように石炭から脱炭素エネルギーに転換していくか、その移行プログラムなどに対して、7年間で1,000億ユーロ(12兆6,000億円)以上を投資する計画が示された。

 続いて2020年3月には、「欧州グリーンディール」の中核をなす法律「欧州気候法」(Climate Law)が発表された。ここには、2050年までの気候中立〔二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ、カーボンニュートラル〕の法的拘束力のある目標が盛り込まれている。


▼ 注1
主催:自然エネルギー財団、場所:日比谷国際ビル コンファレンス スクエア。
同セミナーは、2020年12月4日に発行された『脱炭素で先頭を走る欧州 =2050年ゼロエミッションの戦略と技術』〔ロマン・ジスラー(Romain Zissler)自然エネルギー財団 上級研究員、石田 雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャーによる共著〕をベースに開催された。

▼ 注2
[参考]欧州グリーンディール(EGD:European Green Deal)、2020年2月、欧州連合日本政府代表部の5ページ。

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