[特別レポート]

九州エリアで「タフな地域コミュニティ」を目指すリフェコのVPPビジネス戦略

― 再エネ7,400件/サービスゲートウェイも開発へ ―
2021/05/02
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

「つくる」「ためる」「つかう」をSGWで制御

 辻氏は、VPPビジネスを現実のものにするための設計図として、図5を示した。

図5 3つの要素(つくる、ためる、つかう)を接続してSGWで制御

図5 3つの要素(つくる、ためる、つかう)を接続してSGWで制御

出所 リフェコ株式会社、「タフな地域コミュニティ」につながるVPP実証事業、2021年4月

「図5左に示すように、引き続き、太陽光発電や蓄電池、V2H・電気自動車(EV)など電気を『つくる』『ためる』側の再エネ機器を普及させて増やし、同時に図5右に示す空調機器や照明機器、環境センサー(温湿度センサー等)など『つかう』側の機器をIoTで接続しホームオートメーションを推進していくことが重要です。さらにこれらをすべて、図5の中央に示すSGWにつなげるようにします。これで、各家庭が契約しているVPP-RA(VPPリソースアグリゲーター)から、システム全体を監視・制御できるようになります」(辻氏)。

 「つくる、ためる、つかう」の3要素を接続するSGWが、VPPビジネスのプラットフォームを構築するための心臓部となる。SGWによって、そのエリアにおける同時同量(電気の発電量と消費量を同じにすること)の仕組みをつくり、さらに余った電気をJEPX(日本卸電力取引所)経由で売電する(あるいは買電する)ことも可能になる。現在、すでに図5の左下に示す、EVをV2Hシステム経由でSGWに接続する実証なども行っている。

サービスゲートウェイ(SGW)の役割

〔1〕2021年秋にSGWのプロトタイプで検証予定

 SGWは、VPPサービスをビジネス化する上で中核的なデバイスであり、図5に示す契約した需要家の再エネ機器と各種のIoT機器を接続し、機器の保守管理業者やVPP-RAが各機器を監視・制御する。さらに、図5左に示すスマートメーターについては、2024年からの導入を目指して、2020年9月に次世代スマートメーター制度検討会がスタートし、次世代スマートメーターの標準機能について、2021年2月18日に「中間取りまとめ」が発表された注9

 次世代スマートメーターは、電力分野のDXを推進する観点から、カーボンニュートラル時代に向けた新しいプラットフォームとして検討が行われている。

〔2〕新しい計量法にも対応

 また、2020年6月に成立した「エネルギー供給強靱化法」で規定された「特定計量制度」注10について、「特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会」が2020年9月4日に設立されたが、この制度は2022年4月1日の施行が予定されている。

 このような法的な動きと同期してSGWを開発する、セカンドフェイズの奥瀬氏は、「SGWは、現在普及しているHEMS(家庭用エネルギー管理システム)と似たような機能をもっています。現在、スマートメーターとHEMS間の通信はBルートといわれ、920MHz帯のWi-SUNという通信方式が使用され、HEMSに接続されている管理対象の各機器はECHONET Liteプロトコルが搭載されています。現在開発中の当社のSGWは、クラウドと連携させて、VPPビジネス環境に対応できるように、HEMSをよりインテリジェント化したゲートウェイを目指しています」と、SGWの位置づけを説明した。

 さらに、奥瀬氏は、「現在の実証事業でリフェコは、図5に示す『太陽光発電パネルとSGW』『EV-V2HとSGW』の部分でSGWを使用しています。今後、予定されている前出の特定計量制度を検討しながら、いろいろな機能を実装したSGWのプロトタイプが、2021年秋頃に完成します。これを使って、事業化を見込んだ実証を行う予定です」と語る。

 また、奥瀬氏はSGWが新しいビジネスモデルを創造する可能性にも触れた。「例えば、分譲住宅30戸のエリアで再エネを活用したマイクログリッドビジネスが成り立つか、その仕組みを検討しています。一般にVPPビジネスは、RAなどとの連携が前提ですが、分譲住宅30戸の需要家が再エネ電源を作り、自分たちの電気をまかなうことができれば、RAなどは不要になります。分譲住宅には、カーボンオフセット注11や、環境にやさしいBCP(事業継続計画)に対応した機能があらかじめ装備されていることから、需要家には安心と安全を提供することが見込めます。また、再エネ機器の有効活用や、新しい特定計量制度への対応も重要になるため、これらを見据えたことも考えています。」


▼ 注9
「中間取りまとめ」の主なポイント:(1)次世代スマートメーターは2024年年度から導入、(2)有効電力量を30分毎に送信する現仕様から、ソフトスイッチにより15分毎に切り替え可能な仕様に、(3)通信方式の検討:通信エリア、消費電力、サイバーセキュリティ等の2.4GHz帯Wi-Fi方式等の課題について、現行の920MHz帯のWi-SUNやPLCと比較して技術的検証等を実施し、採用する通信方式を判断。https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/pdf/20210218_1.pdf

▼ 注10
特定計量制度:電気計量制度の合理化を図る措置。計量法の検定を受けていなくても、一定の基準を満たしたスマートメーターを活用して計量できるようにする制度。

▼ 注11
カーボン・オフセット:企業活動等で削減努力をしても発生してしまうCO2(=カーボン)を、森林によるCO2の吸収や省エネ設備への更新によって創出されたCO2削減分で埋め合わせ(=オフセット)する取り組み。

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