[特別レポート]

九州エリアで「タフな地域コミュニティ」を目指すリフェコのVPPビジネス戦略

― 再エネ7,400件/サービスゲートウェイも開発へ ―
2021/05/02
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

九州に広がるVPPの素:太陽光発電

図2 リフェコの九州エリアにおける太陽光発電の施工状況

図2 リフェコの九州エリアにおける太陽光発電の施工状況

出所 リフェコ株式会社、「タフな地域コミュニティ」につながるVPP実証事業、2021年4月

〔1〕すでに7,406件(50MW)を導入

 リフェコは、VPPの素となる太陽光発電(ブランド名:ゆめソーラー)について、図2に示すように、

  1. 福岡県:2,148件
  2. 佐賀県:2,042件
  3. 熊本県:1,579件
  4. 長崎県・大分県・宮崎県・鹿児島県:1,637件

と、合計7,406件(2021年3月現在)を導入、設置している。リフェコの顧客のケースでは、1件当たりの太陽光発電の平均出力容量は、6.7kW注5であるため、合計すると、

6.7kW×7,406件=49,620kW≒50MW

の太陽光発電の容量を導入していることになる。今後は、1年当たり8MW(=1,200件×6.7kW)のペースで追加導入していく計画である。

 また、図3に示すように、九州エリアの地元ハウスメーカー135社と協業し、新築の戸建住宅向けに、初期投資で経済的な負担がかからないように、太陽光発電システムのリース事業としてTPOモデル注6を採用している。

図3 九州エリアにおける地元ハウスメーカーとの協業状況

図3 九州エリアにおける地元ハウスメーカーとの協業状況

出所 リフェコ株式会社、「タフな地域コミュニティ」につながるVPP実証事業、2021年4月

〔2〕EVのディーラー117店舗と協業

 リフェコは、今後、「VPPの素」として大容量の蓄電池を搭載しているEVが普及していくことを予測して、V2H事業の展開を推進している。日本の自動車業界においてEV販売で先行している日産自動車のディーラーの、福岡県の76店舗、佐賀県の15店舗、熊本県の26店舗など、計117店舗とV2H事業の協業を開始し、今後はさらに長崎県などにも広げていく計画である。

 このため「ゆめソーラー」を展開するリフェコにとっては、今後EVを含む蓄電池とどう取り組んでいくかがビジネス上の大きな課題となっている。

 例えば、日産自動車のディーラーがEVの「リーフ(LEAF)」を売る際、顧客にはリーフに搭載されている蓄電池の話をする必要が出てくる。「太陽光発電とEV(蓄電池)との連携をどう考えればよいのか」「卒FITを迎えた太陽光発電をどのように賢く使うのか」「充電の料金プランを踏まえてどのように充電したらコスト効率がよいか」などに加え、V2Hの工事や補助金等々に至るまで、顧客への多岐にわたった説明が必要となり、営業担当者は大変となる。そこで、リフェコは日産自動車のディーラーとの協業体制によって、一緒に顧客に説明を行っている。

 辻氏は、「現在、太陽光発電を導入した家庭では、蓄電池への関心が非常に高くなっています。価格的に見ると、例えば現在、10kWh程度の家庭用蓄電池の価格は180〜230万円ですが、62kWhの蓄電池を搭載した日産リーフの価格は500万円程度ですから、EVを買ったほうが割安になる可能性もあるのです。また、電気料金は、オール電化の場合、九州電力の夜間電気料金は付加金を入れても16.5円/kWhです。16.5円でEVの蓄電池を満充電した場合、EVはどれくらい走行できるかなども含めて相談に応じています」と語る。

〔3〕ハウスメーカー、日産自動車のディーラーとの協業で「VPPの素」を促進

 現在、一般家庭の電気使用量は1カ月で450〜600kWh程度(1日約15〜20kWh)である。このため、10kWhの蓄電容量の場合、災害時にフル使用すると1日もたない。しかし、リーフの場合は、蓄電容量が62kWh(または40kWh)あるので、災害時でも3、4日は使用できるというメリットもある。

 このような背景から、リフェコは、これまでVPPの素となる太陽光発電(ゆめソーラー)を増やしてきたが、今後のビジネス展開については次の取り組みをしている。

  1. 引き続きハウスメーカーとの協業によって、戸建住宅の太陽光発電の提案をしていく。
  2. (1)とは別に、日産自動車のディーラーとの協業でEVとV2Hの提案をしていく。

 最近の顧客には、家を建てるとき、太陽光発電についてもEVについても一緒に話を聞きたいという要望が増えてきている。リフェコは、前述したようなビジネスモデルで、顧客に丁寧に説明し、VPPビジネスの素となる太陽光発電や蓄電池、EVの普及を促進している。

「これらを、きっちりやり切った先に、VPPビジネスやSDGsがあるのではないかと考えています」(辻氏)。


▼ 注5
全国の戸建て住宅へ搭載する太陽光発電は平均4~5kWであるが、九州では戸建て住宅の屋根が大きいところから、リフェコの顧客の場合は、平均出力容量は6.7kWと大きくなっている。

▼ 注6
TPOモデル:TPOはThird-Party Ownershipの略で、第三者所有モデルのこと。
リフェコが太陽光発電をリースで施主に提供して初期費用負担をなくし、施主はその太陽光発電の電気を使うというビジネスモデル。

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