英国のコーンウォールで開催されたG7サミット
2021年6月11〜13日の3日間にわたり、英国の南西部に位置するコーンウォール(Cornwall)地方において、2021 G7サミットが開催された注1。英国のジョンソン首相が議長を務め、日本のほか、米国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、そしてEUが参加した。また、オーストラリア、インド、韓国、南アフリカ共和国が招待国として参加している。
今回の開催地であるコーンウォール地方は、英国本土の最南端に位置している地域で、素晴らしい景観はもちろんのこと、独自の言語や伝統をもっている6つのケルト民族の1つとして知られている。産業革命時代には鉱山で知られる地域だったが、現在は英国初の地熱発電所やリチウム採掘場を擁しており、英国における「グリーン革命」を牽引する地域としても知られている注2。
同サミットは”Build Back Better”(より良い復興)を掲げ、表1のような日程とテーマ、参加者で進められた。
表1 G7サミット(コーンウォール)の日程とテーマ、参加者の概要
※1 12日開催分のうち「より強靱な回復」と「外交政策」のテーマはG7首脳のみ参加。「保健」ではG7に加え、招待国のうちオーストラリア、韓国、南アフリカ共和国、国際機関のうち国連は対面での参加、招待国のうちインド、国際期関のうち世界銀行、IMF(International Monetary Fund、国際通貨基金)、WHO(World Health Organization、世界保健機関)、WTO(World Trade Organization、世界貿易機関)はオンライン参加。
※2 13日開催分では、G7および招待国は両方のテーマに対面での参加(インドのみオンライン参加)。国際機関のうち、国連事務総長は両方のテーマに参加。「気候変動・自然」のテーマには、IMF、世界銀行、OECD(Organization for Economic Co-operation and Development、経済協力開発機構)がオンライン参加。
出所 外務省によるG7コーンウォール・サミット報告ページをもとに著者作成
サミット後に出された共同宣言は、サミット会場が置かれたカービスベイ(Carbis Bay)という地名にちなみ「G7カービスベイ首脳コミュニケ」注3として発表された。共同宣言の冒頭には、「より良い回復のためのグローバルな行動に向けた我々の共通のアジェンダ」というサブタイトルが示されたうえで、「新型コロナウイルスに打ち勝ち、より良い回復を図ることを決意した」というメッセージから始まっている。
G7共同宣言で取り上げられた気候変動対策
〔1〕共同宣言における「気候および環境」の6つの取り組み
共同宣言の中では、3日間のサミットで取り上げられたテーマに関する内容が取り上げられているが、気候変動に関しては「気候および環境」という見出しで詳しく紹介されている。
「気候および環境」の部分では、今年の11月にG7サミットと同じく英国で開催されるCOP26(the 26th UN Climate Change Conference of the Parties、気候変動枠組条約第26回締約国会議)などに先立ち、「温室効果ガス排出を削減し、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程にいれ続けるための努力を加速させ、気候変動の影響から人々を守るために適応と強靱性を強化させ、生物多様性の損失を止めて反転させ、これらの目標を達成するための資金を動員しイノベーションを活用することにコミットする」注4ことが掲げられている。
そのうえで、共同宣言の中では、具体的な取り組みを行う分野として、次の6点注5が取り上げられている。
- エネルギー分野
- 石炭火力発電分野
- 運輸分野
- 産業・イノベーション分野
- 住宅・ビル分野
- 農業・林業およびその他の土地利用分野
〔2〕石炭火力発電分野に対する取り組みの徹底ぶり
さまざまな分野が挙げられている中で、2点目だけ「石炭火力発電分野」というようにかなり具体的な範囲で紹介されていることがわかる。
この「石炭火力発電分野」では、石炭火力発電が「温室効果ガス排出の唯一最大の原因である」という認識を示したうえで、主に次の3点に取り組むことで合意したとされている。
- 排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの移行を、さらに加速させる技術や政策の急速な拡大
- 影響を受ける労働者および部門にとっての公正な移行に対する支援
- 排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への、政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了
以上のことから、石炭火力発電分野に対する取り組みの徹底ぶりをうかがい知ることができる。
〔3〕運輸部門と産業・イノベーション分野への取り組み
石炭火力発電分野と同じように温室効果ガスの排出量が多い運輸部門では、排出ゼロ車両技術の拡大や、充電・充填インフラ等の展開の加速化、公共交通機関などを含む持続可能な交通手段の提供の強化などが示されている。
さらに産業・イノベーション分野では、脱炭素化するための行動を取る必要がある分野として鉄鋼やセメント、化学、石油化学などを挙げたうえで、脱炭素化のために活用する具体的な技術として、次のようなものを示している。
- 電化および電池
- 水素
- 炭素回収・利用・貯蔵(CCUS注6)
- 排出ゼロ航空・海運
- 原子力発電
▼ 注1
サミットの結果はオフィシャルサイトや外務省のページから確認することができる。
https://www.g7uk.org/
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_005342.html
▼ 注2
G7オフィシャルサイトにおけるコーンウォールの解説参照。
▼ 注3
原文は、 https://www.g7uk.org/wp-content/uploads/2021/06/Carbis-Bay-G7-Summit-Communique-PDF-430KB-25-pages-3-1.pdf を参照。本稿では和訳版を使用している(以下)。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100200083.pdf
▼ 注6
CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage。火力発電のCO2排出量を抑えるための取り組みの1つで、分離・貯留したCO2を利用しようというもの。ほかにCCS(Carbon dioxide Capture and Storage、CO2回収・貯留技術)がある。