[特別レポート]

シーメンスガメサの洋上風力発電戦略!

― 世界最大級出力の14MW/ローター直径222mを投入 ―
2021/11/05
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

COP26(国連気候変動枠組条約第26 回締約国会議)の開催を迎え、全世界で脱炭素化への取り組みが活発化している。日本でも、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)を主力電源化することを明示した、「第6次エネルギー基本計画」が発表された。
スペインを本拠地とするシーメンスガメサリニューアブルエナジー(SGRE、以下、シーメンスガメサ、表1)は、このたび日本における「陸上風力発電」「洋上風力発電」「運用・保守サービス」の3つの事業展開を発表した(注1)。特に、同社の先進的で導入実績の多いダイレクトドライブ(DD)(注2)方式の洋上風力発電技術をアピールした。2021年内には、世界最大級の出力をもつDD方式の14MW/ローター直径222m(回転羽根)のプロトタイプが完成する。
ここでは、シーメンスガメサの日本市場における洋上風力発電戦略を中心にレポートする。

世界の洋上風力発電の導入状況

 シーメンスガメサの洋上風力発電戦略を紹介する前に、まず風力発電に関する簡単な仕組みと用語の整理、および世界の洋上風力発電に関する導入状況を見てみよう。

〔1〕風力発電の基本的な仕組み

 風力発電には大きく、陸上風力発電と洋上風力発電がある。図1は、洋上風力発電の基本的な仕組みを示している。

図1 洋上風力発電の基本的な仕組み

図1 洋上風力発電の基本的な仕組み

※最近は半導体技術の導入により機械的な増速機(ギアボックス)が不要となり、ダイレクトドライブ(DD)方式が採用されている。
出所 NEDO「TSC Foresight Vol.27」(2018年7月発行)の3ページをもとに編集部で作成

 風力発電は基本的に、図1の上部から順に、①ブレード(回転羽根)部、②増速機(ギア)や発電機を収納するナセル(Nacelle)部、③ブレードやナセルを支えるタワー部、④タワーを支える基礎部(固定式と浮体式で異なる)などで構成される。

 前述したように(注 2参照)、最近は半導体技術の導入によって、ナセル部に使用されている機械的なギアを不要とした効率的な運用が可能となる「ダイレクトドライブ」(以下、DD)方式が採用されていることが大きな特徴だ(本誌連載20ページを参照)。

〔2〕洋上風力発電の新規導入量

 次に、世界の洋上風力発電の導入状況を見てみよう。

 図2は、GWEC(Global Wind Energy Council、世界風力エネルギー協会)が、2021年9月に発行した「Global Offshore Wind Report 2021」(世界洋上風力発電レポート2021)における、(1)世界の2020年の洋上風力発電の新規導入量と、(2)洋上風力発電の累積導入量(2020年末現在)を示したものである。

 世界のカーボンニュートラルへの活発な動きを背景に、特に洋上風力発電の導入は活発になってきており、2020年の世界市場への新規導入量は6.1GWに達し、特に中国、オランダ、ベルギーが牽引した。また、2020年末の累積導入量は35.3GWとなり、英国、中国、ドイツが牽引しており、欧州やアジア(特に中国)における導入が目立っている。

 これらの世界的な動向を念頭に、シーメンスガメサの事業展開を見ていこう。


▼ 注1
シーメンスガメサ記者懇談会(2021年10月21日)、リアル/オンライン同時開催。出席者:シーメンスガメサ日本支社長 ラッセル・ケイト(Russell Cato)氏、同 最高財務責任者(CFO)笠原 圭吾氏、同 営業・技術ジェネラルマネージャー青木 俊篤氏。

▼ 注2
ダイレクトドライブ:Direct Drive(DD)、直接駆動。風力タービン(風力発電機)に機械的な歯車を使用する増速機(ギア)方式の風車が普及しているが、ギア方式では、15回転/分程度で低速回転する風車の羽根(ブレード)の回転速度を、ギアを用いて交流発電機の高速回転(1500〜2000回転/分程度)に合わせて高速化している。陸上風力発電では,風力タービンへのアクセスが容易なため,ギアのメンテナンスはあまり問題にはならないが,洋上風力発電では,故障時の保守要員はもとより、高価な作業船のレンタル料などが必要となり高コストとなる。そのため洋上風力発電では、機械的なギアを用いないエレクトロニクス技術を駆使したダイレクトドライブ方式が採用されるようになっている。

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