[特集]

「RE100」最新レポートに見る世界の再エネ導入状況

― 見えてきた日本の課題と取り組みの重要性 ―
2022/03/08
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

産業別導入状況:改善の余地が大きい製造業

 全体の電力消費量の45%という数字は、前年2019年の再エネ比率が41%だったので、前年よりも伸びていることがわかる。またグラフ全体を見ても、RE100メンバーの再エネ比率が年々伸びていることが見てとれる。

 このデータを産業別に表したものが図4である。

図4 RE100メンバーの再エネの取り組み状況

図4 RE100メンバーの再エネの取り組み状況

出所 RE100 annual disclosure report 2021

 図4から、サービス業、製造業が全産業の約3分の2を示していることがわかる。このうちサービス業では、再エネ比率が71%となっており、利用が進んでいることがわかるが、製造業での割合は32%と低くなっている。レポートによると、2019年の製造業の再エネ比率は26%だったとのことなので、前年よりは改善しているものの、改善の余地が大きい産業であるといえよう。

RE100のメンバー企業

 RE100において、2019年から2020年にかけて大きく伸びたのは再エネの利用の割合だけではない。RE100のメンバー企業も着実に増えている。地域別に見たRE100参加メンバーの内訳は表2のとおりである。

表2 RE100のメンバー数(年次レポートに報告している企業数)

表2 RE100のメンバー数(年次レポートに報告している企業数)

出所 RE100 annual disclosure report 2021をもとに編集部作成

 2019年から2020年にかけてのメンバー増加数は、2017年から2018年の伸びに次いで、過去2番目に多い54社(=315社−261社)となっている。地域ごとの増加数を見ると、欧州が13社、北米が7社なのに対して、アジア太平洋地域が34社となっており、アジア太平洋地域の企業の増加が突出して多い。

RE100メンバー企業の目標達成年

 前述のとおりRE100の参加企業は、自らの事業に使用する電力の100%を再エネでまかなうことを目指しているが、メンバー数の増加によって、その目標達成年に変化が出てきている。

 RE100では、参加メンバー各社が再エネ100%を達成する目標達成年を公表している。2021年のレポート時点では、参加メンバーの目標達成年の平均は2028年だったが、今回のレポートでの平均は2030年となっている。新規のメンバーに絞った目標達成年の平均は、2037年(図5左側)となっていることから、大きく増えた新規メンバーが目標達成年を引き上げていることになる。

図5 RE100メンバーの目標達成年

図5 RE100メンバーの目標達成年

出所 RE100 annual disclosure report 2021

 一般的に、このような取り組みに早い時期から参加する企業は、参加以前からその取り組みを積極的に推進していた企業が多い。そのため、これまでは全メンバーの目標を平均しても野心的な目標達成年となっていたと推察される。

 参加メンバーの目標達成年を、表2に示した3つの地域別に見てもはっきりとした特徴が出ている(図5右側)。もっとも目標達成年が早いのが欧州メンバー企業の平均で2025年となっており、北米メンバー企業の平均はそれに次ぐ2027年となっている。一方、アジア太平洋地域のメンバーの目標達成年の平均は2039年となっていて、欧州メンバーの平均よりも12年後ろ倒しになっている。

 前出の図4でも示した産業別の目標達成年の差を見てみると、達成までにもっとも時間がかかるのは製造業で、全メンバーの目標達成年の平均が2035年、新メンバーで見ると2040年となっている。

 なお、今回のレポートで実績を報告した企業のうち61社が、自社の事業で使用する電力の100%を再エネでまかなうことをすでに達成している。この61社で消費されている電力は46TWhで、RE100メンバー全体の消費量の約14%を占めている。

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