[特集]

「RE100」最新レポートに見る世界の再エネ導入状況

― 見えてきた日本の課題と取り組みの重要性 ―
2022/03/08
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

RE100における日本メンバーの現状

〔1〕日本メンバーの再エネの調達状況

 これまで紹介してきたような世界の流れの中で、RE100における日本メンバーの状況も具体的に報告されている。図6で示したものと同じ枠組みで、日本メンバーの再エネの調達状況を示したものが図7である。

図7 日本メンバーにおける2020年の再エネ調達方法

図7 日本メンバーにおける2020年の再エネ調達方法

出所 RE100 annual disclosure report 2021

 エネルギー属性証明書の割合が多いのは世界と同じだが、世界的に増加傾向にあるPPAは、まだ日本ではあまり主流にはなっていない。

 このような調達方法の差は、その国が位置する地域的な特徴のほか、国の制度などに影響を受けるため、世界のトレンドと違うからといって、それ自体が問題であるわけではない。ただし、今回のRE100の年次レポートにおいては、企業が再エネ導入を進めるにあたって、日本は、さまざまな課題を抱えている国として取り上げられている。

〔2〕日本:韓国に次いで再エネ導入の障壁が多い

 企業における再エネ導入を推進するRE100では、その障壁になるものを明らかにし、それらを緩和するための意見表明なども積極的に行っている。その根拠としているのが、メンバー企業からの報告である。再エネを導入するにあたって、障壁があるかどうかをメンバー企業に質問したところ、前回の年次レポートでは中国とシンガポールがもっとも障壁が多い国として取り上げられていた。

 今回の年次レポートでは、再エネ導入の障壁がもっとも多い国として韓国が挙げられていたが、日本は韓国に次ぐ2番目の国として取り上げられている。具体的には「再エネの供給自体が十分ではない」(Limited/no supply available)という点を挙げるメンバーがもっとも多く、次いで「コスト」(Cost)、「小規模のエネルギー属性証書がない」(No EACs available in small quantities)という点などが指摘されている。

 このような状況を受け、日本の地域パートナーであるJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)は、「炭素税及び排出量取引の制度設計推進に向けた意見書」注8や「第6次エネルギー基本計画案に関する声明」注9などを積極的に公表し、日本での再エネ導入を促進するために積極的に活動している。

再エネ100宣言RE Action

図8 再エネ100宣言 RE Actionのロゴ

図8 再エネ100宣言 RE Actionのロゴ

出所 https://saiene.jp/about

 これまで見てきたように、RE100への参加条件には、「年間消費電力量100GWh以上の企業」注10という制約がある。

 そのため、RE100の趣旨に賛同しながらもRE100に加盟できない国内の約400万団体にのぼる、中小事業者や行政・教育機関、病院などの多くの組織が世界の脱炭素への流れに参加できない。そこでそれらの組織が参加できるよう、「再エネ100宣言 RE Action協議会」(当初4団体で運営、現在5団体。表4参照)が、新しい枠組み「再エネ100宣言 RE Action(アールイー・アクション)」(図8)を、2019年10月9日に発足した。

表4 「再エネ100宣言RE Action」のプロフィール

表4 「再エネ100宣言RE Action」のプロフィール

出所 https://saiene.jp/をもとに編集部で作成

 発足当時は、中小事業者や教育・医療機関などの28団体+アンバサダー(自治体、官公庁等)6団体の計34団体であったが、2050年カーボンニュートラルの実現を背景に、2年半の期間に計237団体(7倍)にも急増し、2022年に入ってもなお参加団体が増加している(2022年2月現在)。

 なお、RE100は、「再エネ100宣言 RE Action」の運営に直接関与しておらず、完全に分離した運営となっているが、RE100を推進するTCG(The Climate Group)は、「再エネ100宣言 RE Action」を推奨している注11

グローバル標準の導入と日本独自の取り組みを

 日本としてのカーボンニュートラル実現を目指すためには、RE100の取り組みに加えて、再エネ100宣言 RE Actionの取り組みも重要になってくる。

 それとは別に、国内の再エネに関する属性証明の仕組みや、グローバル標準のトラッキングシステムの不在など、調達に関する制度面の整備が必要だと考える。

 世界の動きを注視しながらも、それだけにとらわれることなく、日本全体としての積極的なカーボンニュートラル実現への取り組みの変革を望む。


▼ 注8
炭素税及び排出量取引の制度設計推進に向けた意見書」を公表しました。

▼ 注9
第6次エネルギー基本計画案に関する声明」を公表しました。

▼ 注10
日本は再エネの普及を配慮して、50GWh以上(2020年9月に10GWh以上から50GWh以上に変更)の企業と緩和されている。

▼ 注11
The Climate Group(TCG) RE100責任者 サム・キミンス(Sam Kimmins)氏よりの応援メッセージ

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