エリクソン プライベート5G:シンプルな機器構成で、洋上風力なども幅広くカバー
エリクソン プライベート5G(図6)は、日本ではローカル5Gなどともいわれているスタンドアロンのネットワークだ。製造業や鉱工業、電力事業、港湾・空港などでセキュアかつシンプルに4G LTEおよび5Gスタンドアロン接続を実現する。
図6 エリクソン プライベート5G
出所 エリクソン提供資料より
機器構成はシンプルで、1つのラック上にコアネットワークと無線ベースバンドを搭載し、ここから無線ユニットやDoT注14、小型の基地局を経由して通信を行う。また、ユーザー自らが端末のデバイスを投入したり、利用状況を確認できるポータルも用意されている。
MWC会場では、工場での製造プロセスをテーマにしたデモビデオが流された。
製品の製造プロセスに設置したセンサーからデータを吸い上げ、その状況をリアルタイムにダッシュボード(収集したデータなどを一覧できる画面)で確認する。ここでIoTデバイスとの通信にプライベート5Gを利用することで、IoTデバイスだけでなく、ARグラスや3Dカメラなどからのリッチな情報のやりとりも可能となる。しかも、すべての通信はセキュアな環境が確保される。
これらによって、生産状況のさらに的確なモニタリングが可能となり、生産システム全体の安全で高信頼な運用を実現する。
またプライベート5Gは、Wi-Fiシステムのように、アクセスポイント(基地局)間でハンドオーバー(基地局の切り替え)が発生しないこともメリットの1つである。このため、移動型ロボットなどもハンドオーバーに影響されることなく、工場内を自由に動き回れる。
プライベート5Gには、規模によって大小2つのサイズが用意されている。どちらのシステムも、基本的に8つの標準DoTによって、エリア内でシームレスな接続を構築でき、標準で6,000平方メートルをカバーできる。また、港や鉱山、洋上風力発電施設などのさらに広いエリアでは無線ポートフォリオを使い、マイクロアンテナで広いカバレッジ(通信範囲)を構築することも可能だ。
プライベート5Gは、すでに欧州や北米で利用されているが、日本においても、その普及にも期待が高まっている。
IoTアクセラレータ コネクト:プラグアンドプレイ感覚で構築できるセルラーIoTプラットフォーム
IoTシステムに、さらに優れた信頼性とセキュリティ環境をもたらすセルラーIoTプラットフォームとして紹介されたのが、「IoTアクセラレータ コネクト」だ(図7)。
図7 IoTアクセラレータ コネクト
出所 エリクソン提供資料より
これは、IoTシステムの通信環境を提供するだけでなく、外部アセット(外部の通信設備)などとも接続でき、必要な環境や機能を容易に構築できることも特徴となっている。
例えばクラウド利用には、アマゾンAWSやマイクロソフトAzureといったクラウドサービスへの接続設定が、あらかじめ用意されている。
さらに、eSIM注15なども簡単に自動で設定できるほか、必要なアプリケーションはAPIで容易に開発できる。また、デバイス接続は、1個から100万個までと非常にスケーラブルだ。
これによって、ユーザーにとってはプラグアンドプレイ感覚で、手軽にセルラーIoTが実現できるソリューションとなっている。
IoTアクセラレータ コネクトは、日本ではすでに8,000以上の企業で8,700万デバイスに接続されている。エリクソンでは、通信事業者とのアライアンスによって、さらなるIoT市場開拓を狙っている。
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3年ぶりのエリクソンの出展は、5Gとの接続をさらに進化させた最新技術の展示内容であったことがうかがえた。日本では、具体的な5Gサービスはこれからだが、エリクソンの最新技術との連携を期待したい。
▼ 注14
DoT:ここでは無線の発信装置を指す。
▼ 注15
eSIM:遠隔で情報が書き換えられるSIM。