[次世代の再エネ調達「24/7カーボンフリー電気」]

次世代の再エネ調達「24/7カーボンフリー電気」≪前編≫

― 「RE100」の次世代の再エネ調達方法が始動している ―
2022/06/12
(日)
大串 康彦 米国LO3 Energy Inc. 事業開発ディレクター(日本担当)

国連による啓蒙と推進

〔1〕24/7 Carbon Free Energy Compact

 24/7カーボンフリー電気の概念は、Googleの温室効果ガス削減の取り組みの中で生まれたが、これを教育啓蒙し、広く世界に普及させようとする動きがある。これが、国連が主導する24/7 Carbon Free Energy Compact(以下、24/7 CFE Compact)である注7

 国連のEnergy Compact(24/7に特化しない)とは、持続可能な開発目標(SDGs)17の目標のうち、第7の目標(「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」)の達成のために政府組織、自治体、企業、非営利組織などが定める、目標と時間軸が定義された自主的な取り組みである注8。2022年3月8日現在で164の組織が加盟している注9

 Energy Compactは、SDGs第7の目標を達成するための全体の枠組みであるが、24/7 CFEは電力システムの脱炭素化を目標とする切り口の1つとして位置づけられ、2021年から開始された。

〔2〕加盟組織は米国連連邦政府をはじめGoogleやMicrosoftなどのIT企業も

 24/7 CFE Compactでは、表1に示す24/7 CFEの原則をまとめ、これに取り組む加盟組織を募っている。加盟組織は、温室効果ガス削減を目指す需要家だけではなく、エネルギー供給企業、24/7 CFEの仕組みの構築を行うIT企業、サービスプロバイダやその他関連組織も含まれている(著者が所属する米国のIT企業も加盟している)。

表1 24/7 CFEの原則

表1 24/7 CFEの原則

出所 https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/2021/09/principles_-_updated.pdfを著者翻訳

 2022年5月現在の24/7 CFE Compactの加盟組織を図3に示す。

図3 国連の24/7 CFE Compactの加盟組織(2022年5月29日現在、66組織)

図3 国連の24/7 CFE Compactの加盟組織(2022年5月29日現在、66組織)

※加盟組織数は66と発表されているが、社名(ロゴ)の開示を行っているのは65組織である。
出所 https://gocarbonfree247.com/ (2022年5月5日アクセス時点)

 図3に示す加盟組織の中で、実際に24/7の再エネ調達の目標を設定した、または取り組みを開始した主な需要家には、次のような組織がある。

 国連の24/7 CFE Compactは、2021年9月に米国ニューヨークで行われたエネルギーに関するハイレベル対談(High Level Dialogue on Energy)において発足し、活動を開始したが、2022年5月現在も今後の活動について検討が進められている。普及策、ソリューション、優先順位などが2022年4月に議論され、今後の活動に、より細かい方向性が与えられる見込みである。


▼ 注7
正確には、Sustainable Energy for All, United Nations, UN Energy, High Level Dialogue on Energyが主導している。

▼ 注8
https://www.un.org/en/energycompacts

▼ 注9
2022年3月18日(日本時間)に実施された24/7 CEFウェビナー資料より。

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...