Googleから始まった24/7
〔1〕2007年に大手IT企業初のカーボン・ニュートラルを達成
まず、24/7を理解するには、Googleの温室効果ガス削減のアプローチの変遷を見るのが役に立つ。図1に示すように、Googleの取り組みは2000年代に始まり、その後アプローチを変更、さらに2020年に新しいアプローチである24/7を発表している。
図1 Googleの温室効果ガス削減方法の変遷
※著者注:明記されていないが、属性を電気と分離して取引可能とした再エネ属性証書のことと推測する。
カーボン・オフセット:排出される温室効果ガスを、何か別の手段(例:省エネ、燃料転換、森林保護・植林等)によって相殺すること。
出所 https://www.gstatic.com/gumdrop/sustainability/247-carbon-free-energy.pdfのp2の図を著者翻訳・一部変更
最初のアプローチ(図1左側)であるが、カーボン・オフセットおよび再エネ属性証書を購入し、自らが消費した電力に伴う温室効果ガスをオフセットした。この方法によって、2017年には大手IT企業では初の再エネ100%を達成した。
次のアプローチ(図1真ん中)は直接風力発電や太陽光発電で発電された電気を使用することである。2013年以降、風力発電や太陽光発電のコストが下がるとともに、Googleは購入量をほぼ毎年増やした。年間での電力消費量分の再エネ電気を調達する方法により、2017年には大手IT企業では初の再エネ100%を達成した。
しかし、個々の施設の電力消費と再エネによる電力供給を細かく見ていくと、問題があることがわかった。年間の電力消費量と再エネの購入量は合っており、100%再エネを使用したと主張できるが、各施設の電力消費と再エネの供給は常時合っているわけではない。
〔2〕「実時間で電力消費量と再エネ供給を合わせる」という方法
図2は、Googleのあるデータセンターの1年間の電力の需要と再エネによる供給を時系列に示したものだが、再エネが余るときもあるし、不足するときもある。不足するときは化石燃料ベースの電気に頼ることになる。これは再エネ100%とは言い難い。
図2 Google施設の1年間の電力の需要と再エネ供給
出所 https://www.gstatic.com/gumdrop/sustainability/247-carbon-free-energy.pdfのp3の図の一部を著者翻訳
このギャップを埋めるために考案されたのが24/7である(図1右側を参照)。これは、1年間のトータルの電力消費量と再エネ調達量を合わせて再エネ100%とするのではなく、各施設に実時間で電力消費量と再エネ供給を合わせるという方法である。Googleは、2018年に討議論文(Discussion Paper)を公開し、検討を始めるとともに、枠組みを固めた注5。そして2020年9月に、2030年までに操業で使う電気を24時間365日カーボンフリーの電気を調達すると発表した注6。
「実時間で電力消費量と再エネ供給を合わせる」というところは、日本の小売電気事業者が行う同時同量オペレーションと類似するように見えるかもしれない。しかし、24/7は、あくまで需要家単位で電力消費量と再エネ供給を合わせることである。
この実装方法は、各国の制度や電力データ取得の仕組みによって違いが出てくるはずである。日本であれば電力消費量と供給データを取得できる小売電気事業者が、需要家に対して24/7のサービスを提供することが1つの方法になると想定する。また、需要家が発電事業者と直接コーポレートPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)を締結できる環境では、需要家と発電事業者が協力し、24/7の仕組みを構築できるかもしれない。
▼ 注1
RE100:100% Renewable Electricity、2050年カーボンゼロを目指して、」自社の事業運営を100%再エネ電力で運営する企業を結集する国際的なイニシアティブ(主導的に推進する組織)。設立:2014年9月。所在地:英国・ロンドン。加盟数:370社(うち日本は70社、2022年5月現在)。
▼ 注2
24/7:24時間・週7日、すなわち常時という意味で、日本語の24時間365日と同義である。
▼ 注3
再エネ属性証書:再エネで発電された電気の「再エネで発電された」という属性のみ電気と分離して取引可能とする証書で、需要家は証書を購入して証書と同量(kWh)の自身の電力消費に適用することにより、再エネを使用したことを主張できる。米国のRenewable Energy Certificate(REC)、欧州のGuarantee of Origin(GO, GoO)などがある。日本では、非化石価値証書やグリーン電力証書がある。
▼ 注4
カーボンクレジット:Carbon Credit。太陽光・風力等の再エネや植林などによる温室効果ガスの削減量(例:t-CO2)や吸収量を数値化・証書化し、取引(売買)できるような形態にしたもの。