24/7の標準化
24/7の実施にあたっては、主張の妥当性を確認できるように技術的な標準があることが望ましいが、英国に拠点を置く組織、EnergyTag(表2)が標準作成に取り組んでいる。EnergyTagは、2022年3月に「Granular Certificate」のスキーム標準およびユースケースガイダンスの初版注12を発行した。
表2 EnergyTagのプロフィール
出所 https://www.crunchbase.com/organization/energytag https://www.energytag.org/ をもとに著者作成
「Granular Certificate」とは、1時間または1時間より短い間隔で再エネ属性の証明を行うための証書であり、いままでの、数カ月から1年の発電期間に対して発行される再エネ属性証書の仕組みを「踏襲する、または補完するもの」である。これらの標準書はまだ開発途上であり、2022年9月までにAPIおよびデータ標準、1年後までに標準書の第2版が発行される予定である。この標準の詳細については、次号の後編で取り上げる。
まとめ:第2世代の再エネ調達手法としての可能性
次世代の再エネ調達の方法として、月間や年間ではなく、毎時間ごとに電力消費量と再エネの供給を合わせる「24/7」という方法が提案されている。最初はGoogleが開始した取り組みであったが、国連(Energy Compact)が推進し、EnergyTagによる標準の作成も進んでいる。
24/7の原則としては、1時間ごとに電力消費量と再エネの供給を合わせ、実時間で同地域の初電源から再エネ電気の調達を行うということである。すなわち、再エネ属性証書などのツールに頼らずに、より物理的に実態のある再エネを調達するということである。
現状では、米国連邦政府、Google、Microsoftなどの大手IT企業が取り組みを始めているが、第2世代の再エネ調達手法として、今後世界に普及する可能性がある(図5)。(後編に続く)
図5 第1世代と第2世代の再エネ調達
出所 EnergyTag WG2資料(2022年3月10日)をもとに著者作成
筆者Profile
大串 康彦(おおぐし やすひこ)
米国LO3 Energy Inc. 事業開発ディレクター(日本担当)、カウラ株式会社 アドバイザー
1992年荏原製作所入社、環境プラントや燃料電池発電システムの開発を担当。2006年〜2010年までカナダの電力会社BC Hydro社に在籍し、スマートグリッドの事業企画などを担当。その後、日本の外資系企業で燃料電池・系統用蓄電システム等エネルギー技術の事業開発に従事。yogushi@lo3energy.com