[リレーインタビュー]

DXを加速するIoE(Internet of Everywhere)の展開 !拡大するIoTプラットフォーム「SORACOM」の最新導入事例

― 160カ国・地域で400万回線を突破し2万ユーザーが利用へ ―
2022/08/11
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

国際的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の波を背景に、社会は急速にデジタル化が進んでいる。
ソラコム(表1)は、企業のミッションとして「IoTテクノロジーの民主化」、つまり、「IoTの技術を誰でも容易に活用できるようにすること」を掲げ、そのビジネスを拡大している。
さらに、脱炭素社会の実現に向けて進化を遂げながら浸透する、同社のクラウドネイティブなIoTプラットフォーム「SORACOM」(後述)は、その応用領域を拡大している。
ここでは、2022年7月6日〜7日の2日間、オンラインで開催された第7回「SORACOM Discovery 2022 ONLINE」(主催:ソラコム)(注1)で紹介された、「SORACOM」の最新動向を「パート1」で、製造分野、ヘルスケア分野、次世代エネルギー分野等における「SORACOM」の最新の導入事例を「パート2」「パート3」でレポートする。

パート1: クラウドネイティブなIoTプラットフォーム「SORACOM」とは?

❶ IoTプラットフォーム「SORACOM」の基本構成

表1 ソラコムのプロフィール(敬称略)

表1 ソラコムのプロフィール(敬称略)

出所 https://soracom.com/ja-jp/company/ をもとに編集部で作成

〔1〕「IoTテクノロジーの民主化」の推進

 ソラコムのクラウドネイティブなIoTプラットフォーム「SORACOM」(以下、SORACOM)とは、データ通信におけるコアネットワーク部分をクラウド上に構築(クラウドネイティブ)した、柔軟なIoTネットワークシステムである。

 IoT専用のモバイル通信サービスである「SORACOM Air」に加え、IoTデバイスとクラウドをセキュアに通信させる「ネットワークサービス」、データ保存や可視化、クラウド連携を実現する「アプリケーションサービス」を提供するものだ。

 SORACOMの基本構成は、図1に示すように、シームレスに、①IoTデバイスから出てきたデータを、②IoT通信によって、③クラウドへ送信する。送信されたたデータは、クラウド上のAIや機械学習などによって分析・可視化され、ユーザーはそれらのデータをPCやスマートフォンで活用できるようになる。

図1 SORACOMは『IoTの「つなぐ」を簡単に』(IoTの民主化)を実現

図1 SORACOMは『IoTの「つなぐ」を簡単に』(IoTの民主化)を実現

出所 株式会社ソラコム「Internet of Everywhere〜ひろがるデジタル・つなげるIoT〜」(2022年7月6日〜7日、SORACOM Discovery 2022 ONLINE)をもとに編集部で一部加筆して作成

 このようにSORACOMは、IoTデバイスを簡単につないで活用できる、「IoTテクノロジーの民主化」を実現した。

 図1に示す①IoTデバイスには、②IoT

通信ができるように、図2の「SORACOM IoT SIM」の左に示すカード型SIMとその右の小さなチップ型SIM〔eSIM:embedded(埋め込み)SIM〕が用意されており、小型のデバイスには、eSIMを組み込んで通信できる。

図2 全世界160カ国・地域で400万回線接続を突破した「SORACOM IoT SIM」

図2 全世界160カ国・地域で400万回線接続を突破した「SORACOM IoT SIM」

※1 SORACOM IoT SIM の利用料金および料金体系はサイトを参照
※2 eSIM料金はサイトを参照
出所 株式会社ソラコム「Internet of Everywhere~ひろがるデジタル・つなげるIoT~」、2022年7月6日~7日、SORACOM Discovery 2022 ONLINE

〔2〕1つのSIMで3キャリアの回線が利用可能

 SORACOM IoT SIMは、2022年7月にアップデートされた。

 例えば、SORACOM IoT SIMのサブスクリプション(回線契約)のうち、日本国内で低廉なデータ通信料金で利用できるプラン「planX1」では、これまで利用可能だったKDDI回線(KDDI LTE、2019年7月)やソフトバンク回線(3G/LTE、2021年10月)に加えて、NTTドコモ回線も利用可能となった。

 これによってユーザーは、1つのSIMで、日本では3キャリアの回線を利用できるようになったため、SIMを買い替えたり、デバイス機器のSIMの入れ替えなしに、複数のキャリア網を利用できるようになった。

〔3〕衛星メッセージングサービスを統合

 図3は、図1をさらに詳しくした最新のSORACOMの基本構成である。

図3 クラウドネイティブなIoTプラットフォーム「SORACOM」の基本構成

図3 クラウドネイティブなIoTプラットフォーム「SORACOM」の基本構成

出所 株式会社ソラコム「Internet of Everywhere〜ひろがるデジタル・つなげるIoT〜」(2022年7月6日〜7日、SORACOM Discovery 2022 ONLINE)をもとに編集部で一部加筆して作成

 図3に示すIoTデバイスは、①衛星通信デバイス、②セルラー/ Sigfox対応デバイス、③インターネット越し(接続)のデバイスなどに対応している。

 IoT通信では、LTE/5G/LTE-Mなどのセルラー系や、Sigfoxをはじめとした非セルラーLPWA注2系のデータ通信サービスなどを提供する。有線LANやWi-Fi(インターネット接続)も2021年に統合して進化させ、SORACOMと連携できるようになった。

 さらに、2022年7月には、Astrocast(スイスの宇宙ベンチャー)とSwarm Technologies(米国の宇宙ベンチャー)の2社の通信モジュールに対応し、衛星メッセージングサービスをSORACOMに統合した注3

 衛星メッセージングサービスは、スマート農業や、地球の7割を覆う海や砂漠、遠隔地でのアセットトラッキング(自動車や船などの追跡)など、データ通信量が少量な(都市部以外のより広範囲な)屋外でのIoTの利用が期待されている。

〔4〕3つのパブリッククラウドとも連携

 重要なクラウドサービスについては、例えば、AWS(アマゾン)、Azure(マイクロソフト)、Google Cloud(グーグル)などのパブリッククラウドとは、SORACOMのクラウドアダプタ(プロトコル変換)機能をもつ「SORACOM Funk」によって接続される。 このほか、SORACOMユーザーのIoTシステム(図3右側の中段)ともプライベート接続が可能となっている。


▼ 注1
テーマは、「Internet of Everywhere」(ひろがるデジタル・つなげるIoT)
全体のタイムテーブルは「タイムテーブルが一覧になったPDFはこちら」をクリックすると、表示される。

▼ 注2
LPWA:Low Power Wide Area、省電力型広域無線ネットワーク。IoTデバイスを大量に相互接続するために開発された、「低価格」「低消費電力」「長距離通信」が可能なネットワーク。免許が必要なLTEベースのセルラー型LPWA(例:NB-IoT、LTE-M)と、免
許不要の920MHz帯(日本の場合)を使用する非セルラー型LPWA(例:Sigfox、LoRaWAN)の2つの流れがある。

▼ 注3
https://soracom.jp/projects/satellite-messaging-technology-preview/

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