[リレーインタビュー]

DXを加速するIoE(Internet of Everywhere)の展開 !拡大するIoTプラットフォーム「SORACOM」の最新導入事例

― 160カ国・地域で400万回線を突破し2万ユーザーが利用へ ―
2022/08/11
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部
パート3: EVのリモート充電管理サービス
(ユアスタンド)

❶ 創業4年のスタートアップ企業「ユアスタンド」

 ユアスタンド注11は、既設の集合住宅(マンション)等において、EVの充電設備の設置から運用サービスまでを、ワンストップで提供しているスタートアップ企業である注12

 同社は、すでに首都圏を中心に150棟以上の既設マンション(集合住宅)などにEV充電器の導入、運用サービスを展開しているが、同社創業以来、4年連続でシェア第1位を獲得し、2021年度は、市場の61%を占めている。

 ユアスタンドの代表取締役社長 浦 伸行(うら のぶゆき)氏は、「スマートフォンのように、家庭でもオフィスでも、出張先でも、気軽にEVを(ガソリンスタンドのように)充電できることは、EV購入に大きなインパクトを与えます」と述べる。

 それでは、同社のEVのリモート充電管理サービスとはどのようなものだろうか。その導入事例を見ていこう。

❷ EVのリモート充電管理サービスの概要

〔1〕SORACOM Napter(ナプター)でリモート管理

 図10は、「Yourstand(クラウド)」によって、マンションの駐車場などに設置されたEV充電器を、SORACOM のNapter(ナプター、前出の表3参照)を用いて、EVのリモート充電管理サービス(課金や充電器の保守・運用)を提供するイメージ図である。

図10 SORACOM Napter(ナプター)によるEVのリモート充電管理サービスのイメージ

図10 SORACOM Napter(ナプター)によるEVのリモート充電管理サービスのイメージ

出所 ユアスタンド提供資料に編集部で加筆修正して作成

 リモート管理の際、EV充電器に、EVの急速充電器を管理する標準通信プロトコル「OCPP」注13を搭載している場合は、OCPPでリモート管理する。

 図11に、Yourstandが対応するEV充電器ライナップの例を示すが、Napter(ナプター)にもOCPPにも対応している。例えば、日東電工製のEV充電器(図11左端)はOCPPを搭載しているので、Yourstandコントローラが不要であるが、パナソニックや平河ヒューテック製のEV充電器などは、Yourstandコントローラ(Napter対応)が必要である。

図11 Yourstandが対応するEV充電器ライナップの例

図11 Yourstandが対応するEV充電器ライナップの例

出所 ユアスタンド「電気自動車(EV)充電器の導入及び運用のことなら」、SORACOM Discovery 2022 ONLINE(2022年7月7日)

〔2〕利用者向けにスマホアプリを提供

 前出の図11に示したように、マンション(集合住宅)におけるEV充電の課題を解決するため、Yourstandは、利用者向けにアプリケーションを提供し、スマートフォンによって、充電器の予約や充電時間に応じた課金などスマートな充電が可能になる(図12)。

図12 アプリケーションによるスマートな充電

図12 アプリケーションによるスマートな充電

出所 ユアスタンド「電気自動車(EV)充電器の導入及び運用のことなら」、SORACOM Discovery 2022 ONLINE(2022年7月7日)

〔3〕ユアスタンドのサービス体系

 図13に、ユアスタンドのサービス体系を示す。

図13 ユアスタンドのサービス体系

図13 ユアスタンドのサービス体系

出所 ユアスタンド「電気自動車(EV)充電器の導入及び運用のことなら」、SORACOM Discovery 2022 ONLINE(2022年7月7日)

 左側にマンションのオーナー、中央に運用システムを提供する「Yourstand」、右側にEV充電器の利用者を示し、システムの利用契約から充電料金の入金に至るまでの流れを示す。

 利用者は、アプリからEV充電予約をし、利用料金は分単位でクレジット決済が可能である。

〔4〕1つのアプリで、EVの普通充電器にも急速充電器にも

 ユアスタンドでは、今後は、いろいろな充電器と連携しながら、1つのアプリで、どこに行っても充電器を使えるようになることを目指して開発していく。

 例えば、自宅では普通のEV充電器を使い、街中に行った際には急速EV充電器も使って充電できるようなサービスに対応可能なアプリを目指す。また、クラウドに蓄積されたビッグデータを分析・活用し、同時にダイナミックプライシング注14を考慮しながら充電のタイミング(日中か夜中かなど)を決めていくことも脱炭素に向けて重要なテーマだという。

「21世紀のいちばん大きな課題は、地球温暖化対策ですので、EVという移動部門で、Yourstandのサービスが貢献できるよう、開発を進めていきたい」とユアスタンドの浦氏はアピールした。


▼ 注11
ユアスタンド株式会社:[代表取締役社長]浦 伸行、2018年創業。[本社所在地]〒231-0013 神奈川県横浜市中区住吉町2-24-2住吉24ビル3階、[従業員数]25名(2022年6月現在)、[事業内容]マンション、職場への電気自動車充電スタンドの導入・運用。

▼ 注12
新築マンションへEV充電サービスの提供開始」、2022年2月1日、

▼ 注13
OCPP:Open Charge Point Protocol、EV充電器とクラウド間の国際的な通信プロトコル。OPA(Open Charge Alliance、本部:オランダ。2009年設立)という団体によって維持・管理されているプロトコルで、EVの急速充電器を管理する標準通信プロトコル。

▼ 注14
ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing):固定的な電気料金ではなく、卸売電力市場の価格に連動した「時間別料金」を設定し、EV充電用の電力料金を安くすること。具体的にはダイナミックプライシングによって、EVの充電のタイミングを「電気料金が高い時間帯から、安い時間帯に誘導(ピークシフト)」し、EV充電用の電力料金を下げること。

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