[リレーインタビュー]

DXを加速するIoE(Internet of Everywhere)の展開 !拡大するIoTプラットフォーム「SORACOM」の最新導入事例

― 160カ国・地域で400万回線を突破し2万ユーザーが利用へ ―
2022/08/11
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

❸ Sigfoxによって実現するニチガスのエネルギーソリューション

〔1〕ニチガスのLPガスメーターで105万件をオンライン化

 ニチガスは、既に105万件を超えるLPガスメーターに、Sigfoxのテクノロジーを採用した「スペース蛍」を導入し、オンライン化(2022年6月時点)している。それによって、リアルタイムに、顧客の利用状況を把握しながら、付加価値のあるサービスを提供している。

 さらに、2023年3月までには、150万件の顧客にスペース蛍を設置する予定だという。同社社長の柏谷氏は、ガス業界における先進的なDX(Digital Transformation)をアピールした。

 同社はガス事業に加え、電力販売事業でも、過去2年半で約30万件の電気の新規契約があり、小売電気事業者としての規模も拡大している。柏谷氏は、「われわれのゴールは、ガスのみならず、電気に関しても同じようにIoT化やデジタライゼーションを急速に進め、ガス・電気を含む総合エネルギーに関するデジタル化による付加価値ビジネスを訴求してまいります」と述べた。

 ニチガスのDXへの取り組みのキーとなるのは「スペース蛍」〔図8、表6、NCU注9〕である。従来、ガスメーターに関しては、コスト面から、オンライン化ができなかったが、「スペース蛍」によって、コストも性能も、従来のスマートメーターデバイスとはまったく異なる次元のものを実現できたという。

図8 ニチガスのDXへの取り組みのキーとなる「スペース蛍」(NCU)

図8 ニチガスのDXへの取り組みのキーとなる「スペース蛍」(NCU)

ガスメーターの設置場所に応じて、SigfoxとLTE-M(白と黒の「スペース蛍」)を使い分けながら、データをSORACOM Funnel(クラウドアダプタ)経由でクラウドへ送信する。
出所 ソラコム「Internet of Everywhere〜ひろがるデジタル・つなげるIoT〜」、2022年7月、SORACOM Discovery 2022 ONLINE

表6 ガスのスマートメーターデバイス「スペース蛍」の特徴

表6 ガスのスマートメーターデバイス「スペース蛍」の特徴

NCU:Network Control Unit、ネットワーク制御装置。ガスメーターの使用量データを電子的に読取り、フォーマット変換の後に無線を使ってクラウドへ送信するIoT装置
出所 「Sigfox<最新>動向 ~Sigfoxのこれから、大規模ユースケースを紹介~」(2022年7月)、SORACOM Discovery 2022 ONLINE、セミナーをもとに編集部で作成

〔2〕ニチガスが目指す分散型エネルギーのDX

 さらにニチガスは、新たに「ニチガスのエネルギーソリューション」を提唱し、Sigfox技術の電力事業への展開を開始している。

 現在、エネルギーの世界では、地球温暖化対策(パリ協定の実現)に向けて、「脱炭素社会の実現」という大きな課題を抱えている。一方、ロシアによるウクライナ侵攻で明確になったように、エネルギーの安定供給が喫緊の課題となってきている。

 柏谷氏は、「日本の現在の発電の状況を見ていても、今後の需要を安心してカバーできるほどの電力供給が十分ではありません。これに対して当然、再生可能エネルギーを増やす、蓄電池を増やす、あるいは今後、急速に普及するであろう電気自動車(以下、EV)を活用するといったような分散型エネルギーへのシフトが急速に進むと思います」と語った。さらに、「この分散型エネルギーの構築において、Sigfoxが果たす役割は、今まで以上に大きなビジネス成長のポテンシャルとなります」と続けた。

 その一例としてニチガスは、図9に示す、蓄電池を活用した新たなエネルギーサービスの領域において、エネルギー分野のスタートアップ企業「Power X」(パワーエックス)注10との資本業務提携を2022年5月23日に発表した。

図9 ニチガスがPower X(パワーエックス)と提携して推進している分散型エネルギービジネス

図9 ニチガスがPower X(パワーエックス)と提携して推進している分散型エネルギービジネス

出所 「Sigfox<最新>動向 ~Sigfoxのこれから、大規模ユースケースを紹介~」、2022年7月、SORACOM Discovery 2022 ONLINE

 この領域で、EVの急速充電器や住宅用の蓄電池、さらに系統にも連携できる大型定置用の蓄電池などをIoTで相互接続して活用するVPP(仮想発電所)を構築し、新ビジネスを展開していくという。


▼ 注9
NCU:Network Control Unit、ネットワーク制御装置。ガスメーターの使用量データを電子的に読取り、フォーマット変換の後に無線を使ってクラウドへ送信するIoT装置。製品名:スペース蛍

▼ 注10
株式会社パワーエックス (PowerX, Inc.):[所在地]〒107-6243 東京都港区赤坂 9-7-1ミッドタウン・タワー 43F、[取締役兼代表執行役社長 CEO]伊藤 正裕 氏、[設立]2021年3月22日、[事業内容]:大型蓄電池の製造および販売、電気運搬船の開発および製造。

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