1 データセンターは2040年までにカーボンニュートラルを実現へ
日本政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(14分野)を推進しているが、特に14分野のうち「半導体・情報通信分野」に属するデータセンターについては、当初目標の2050年を10年も前倒しし、2040年までにカーボンニュートラル(CO2排出量ゼロ)の実現を目指している注2。
さらに、省エネ法の改正注3に伴ってベンチマーク制度注4が設けられ、再エネを含む非化石エネルギー転換についての中期計画書と定期報告の他にデータセンターの目指すべき省エネの指標であるPUE(電力使用効率)の報告義務と、PUEの水準を1.4以下とすることなども定められてきた。
2 省エネ法の名称も大幅に改訂
また日本政府は、CO2排出量の削減とともに、省エネルギー(以下、省エネ)を重視して推進している。このため、毎年のように省エネ法を改正してきた注5。
特に省エネ法の正式名称は、2022年度までは「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」であったが、これを2023年度から改定し、脱炭素への移行を明確にした「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」と、脱炭素への転換に向けて法律の名称を大幅に変更した。
3 IIJの脱炭素化を支援するための2つの取り組み
このような背景の下、IIJ 基盤エンジニアリング本部基盤サービス部 データセンター基盤技術課長の堤 優介(つつみ ゆうすけ)氏は、2023年4月24日の記者説明会において、省エネ法改正に伴うデータセンター利用者の脱炭素化を支援するための次の2つの取り組みについて説明した。
(1)IIJの再エネ利用証明(環境価値の提供方法)を含めた新しいニーズへの対応
(2)データセンター内でブロックチェーンを活用した「電力需給マッチングプラットフォーム」の実証実験およびその商用サービス開始
堤氏は、「すでに昨年度(2022年度)の省エネ法の改正で、データセンターの利用者はエネルギー消費量の報告が新たに義務付けられましたが、これに加えて今年度(2023年度)の改正で非化石エネルギーへの転換計画も義務付けられる形になりました」と述べた(図1)。
さらに、「これによって、今後データセンターに持ち込んでいるサーバ機器などの電力種別についても、データセンター利用者が対応しなくてはならなくなりました。このため、今後、データセンター利用者から脱炭素化に対するニーズの増加が予想されると考えています。こうした変化に対して弊社では、データセンター利用者への再エネ利用証明を含めた新たなニーズに対応する取り組みを進めてきました」と述べ、続けて(1)非化石証書の提供と、(2)電力需給マッチングプラットフォームの導入について説明した。
図1 IIJの環境の変化と新たなニーズへの対応
出所 株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)記者説明会、カーボンニュートラルデータセンター実現への取り組み(2023年4月24日)より
▼ 注1
参考記事:【事例1】インターネットイニシアティブ(IIJ)の白井データセンターキャンパス
▼ 注2
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略:⑥半導体・情報通信産業の成長戦略「工程表」、令和3(2021)年6月18日
▼ 注4
ベンチマーク制度:同じ業種・分野で共通の指標(ベンチマーク指標)による目標(目指とすべき水準)を定めることによって、他事業者との比較による省エネの取り組みの促進を目的とした制度。
①資源エネルギー庁、『データセンター業の「ベンチマーク制度」制度の概要』の9ページ、令和4(2022)年4月
②経済産業省、「ベンチマーク制度の見直しに関する報告書を取りまとめました」の「データセンター業」、2022年3月24日