クリーン・エネルギー技術への注目
7つのトピック中、5番目のトピックである「クリーン・エネルギー技術の推進」では、再生可能エネルギー技術やエネルギー効率化対策などを含むクリーン技術が、廉価でアクセスしやすく、魅力的な選択肢となるように国際的な活動を通じて協働していく点を定めている。そのための具体的な活動の1つとして、次のような記述がある。
我々はまた、ネット・ゼロに向けたイノベーション及び技術に貢献するスタートアップ企業及び中小企業の重要な役割を強調し、G7が意欲的なスタートアップ企業と世界的に協力することに期待する。我々は、低・中所得国におけるクリーン・エネルギーへの移行を加速するための重要な手段として、クリーン技術の研究、開発及び普及を引き続き支援する。注10
この記述からもわかるとおり、気候変動に対する対応は、今や政府や国際的な組織、そして大企業だけではなく、これまでにはない発想や技術による取り組みを推進するスタートアップ企業や中小企業の存在が欠かせない。そして、彼らが研究開発を進め、普及の取り組みを進める技術は、先進国だけではなく、低・中所得国がクリーン・エネルギーへ移行するためにも欠かせないものとして認識されている。
気候テック(Climate Tech)の定義
このような流れを受けて、世界では気候テック(Climate Tech、クライメート・テック)と呼ばれる気候変動対策のための技術とそれを開発する企業への注目が高まっている。
気候テックについてはさまざまな定義があるが、世界最大の新興企業向け株式市場であるNASDAQは気候テックを「世界経済の脱炭素化を実現する技術やサービスのこと注11」と定義し、これらの技術を扱う企業は「既存の炭素を大気から除去したり、将来の排出量を削減したり、気候変動の影響に対する回復力を高めたりして、気候変動の緩和や適応を図るために、気候テックを活用した製品やサービスを開発」していると説明している。
気候テックの分類
気候テックにはどのような分野が含まれるのだろうか。
NASDAQが「ステークホルダー(利害関係者)によって、気候テックに含まれるものと含まれないものを正確に定義する方法は異なっている」と述べているとおり、現時点では気候テックの分類に関する共通認識はなく、気候テックに関する情報を発信しているメディアやコンサルティング会社によって、それぞれ独自の分野の分類がされている。
例えば、気候テックに関するさまざまな情報を発信している海外メディアであるCTVC注12は、表1のような7つの分野で市場動向を整理している注13。
また気候テックのほか教育やヘルスケアなど、これからの世界にインパクトを与える分野に関する情報発信をしているHolonIQ注14は、Global Climate Tech Landscape(世界の気候テックの状況)注15というWebサイトにおいて、表2のように気候テックを10分野に分け、さらにそれを3つの分類にまとめている。
分類の違いはあるものの、両者が取り扱っている項目は概ね共通していることがわかる。
注10:G7クリーン・エネルギー経済行動計画 4ページ
注11:What is Climate Tech? | Nasdaq、https://www.nasdaq.com/solutions/listings/resources/what-is-climate-tech#_ftn1
注12:https://www.ctvc.co/about/
注13:なお、CTVCは気候テックを分類するにあたって、表1に示したような分野〔彼らはvertical(業界)と呼んでいる〕による分類に加えて、気候変動への影響(impact)による分類も定義している。「影響」は緩和(mitigation)、適応(adaptation)、監視(monitoring)、除去(removal)、そして再生(regeneration)に分類される。CTVCとしては表1に挙げた「分野」と、ここで挙げた「影響」の両方に該当するものが気候テックだとしている。
注14:https://www.holoniq.com/
注15:Global Climate Tech Landscape 1.0、https://www.globalclimatelandscape.org/