[特別レポート - 自然エネルギー財団セミナーレポート]

2030年度までに世界の再エネを3倍化しCO2排出ゼロへ〈前編〉

ソニー・パナソニック、トヨタ、Appleとバリューチェーンも含むCO2排出ゼロへの取り組み
2024/03/08
(金)

UAEドバイで開催されたCOP28(2023年11月30日~12月13日。「COP28スペシャルインタビュー IGES 田村堅太郎氏に聞く!《前後編》」を参照)では、「2030年度までに世界の再生可能エネルギー設備容量を3倍にする」という誓約に、日本を含む世界各国が賛同した。これを受けて公益財団法人 自然エネルギー財団(以下、自然エネルギー財団)は、「新春セミナー 自然エネルギー3倍化の展望:COP28決定を受けて」(2024年1月17日)を開催した注1。 ここでは、同財団シニアマネージャー(ビジネス連携) 石田 雅也(いしだ まさや)氏の講演「2030年にCO2排出ゼロへ:先進企業の自然エネルギー(再エネ)調達」を中心に、その後の展開も含めてレポートする。前編では、ソニー、パナソニック、トヨタ自動車、Appleなどの先進企業のバリューチェーンも含めたCO2排出ゼロの取り組みについて見ていく。

先進企業における再エネ導入とCO2排出ゼロ戦略

 先進企業であるソニー、パナソニック、トヨタ自動車、Appleなどは、CO2排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指して、次々にCO2削減目標を前倒している。さらにその削減目標を実現するには、バリューチェーンも含めた全体で取り組む必要がある。各社の事例を見ていこう。

【事例1】ソニーグループ:「Road to Zero」を推進

 ソニーグループは、環境負荷ゼロを目指して、2010年から環境計画「Road to Zero」を推進している注2が、その後、気候変動領域における環境負荷ゼロの達成目標を2022年5月に見直しを行い、自社事業で使用する電力に関して目標達成を10年前倒しすると発表した。これに基づいて、自社オペレーションにおける温室効果ガスの直接・間接排出(スコープ1、2)量を実質ゼロにするため、2030年までにグローバルで再エネ100%導入(RE100)を推進している注3(図1)。

図1 2030年までにRE100、2040年までにRoad to ZEROを目指すソニーグループ

RE100:100% Renewable Electricity。事業活動によって生じる環境負荷を低減させるために設立された国際的な環境イニシアチブ。事業運営に必要なエネルギーを100%、再生可能エネルギーで賄うことを目標とする。
[出典]ソニーグループ
出所 自然エネルギー財団 石田雅也、「2030年にCO2排出ゼロへ 先進企業の自然エネルギー(再エネ)調達」、(自然エネルギー3倍化セミナー)、2024年1月17日

 同グループが全世界で使用する事業の電力量は、年間で20億kWh(2TWh)と膨大な電力量となっているが注4、そのすべてを、今後2030年までの約7年間で再エネに切り換える。さらに2040年までに、スコープ3までを含むネットゼロ(Road to Zero)を達成する計画だ。
 その施策例として石田氏は、図2に示す九州・熊本の半導体生産拠点(ソニーセミコンダクタ マニュファクチャリング株式会社 熊本テクノロジーセンター)を挙げた。この半導体工場には、メガソーラー(約2MW)の太陽光発電設備が設置され、そこで発電した電力を自家消費している。「ただし、半導体製造は大量の電力を必要とするため、これだけでは足らず、他の方法も組み合わせながら、できるだけ早く再エネ100%を実現できるよう急いでいる」と、石田氏は説明した。

図2 メガソーラー(約2MW)を設置したソニーセミコンダクタの九州・熊本半導体工場

[出典]ソニーセミコンダクタソリューションズ
出所 自然エネルギー財団 石田雅也、「2030年にCO2排出ゼロへ 先進企業の自然エネルギー(再エネ)調達」、(自然エネルギー3倍化セミナー)、2024年1月17日


注1自然エネルギー財団新春セミナー「自然エネルギー3倍化の展望COP28決定を受けて」、2024年1月17日
注2ソニー、『環境負荷ゼロを目指す環境計画「Road to Zero」を策定』、2010年4月7日
注3ソニー、ニュースリリース「気候変動領域における環境負荷ゼロの達成目標を10年前倒し2040年までに、スコープ3までを含めカーボンニュートラルを実現へ」、2022年5月18日
注4ソニーグループ、「需要家からの提言」、2022年

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