EV充電器の市場状況と規格について
SERA-400の紹介に入る前に、ここで日本におけるEV充電器の設置状況を見てみよう。
〔1〕EV充電器の設置数は約2万6,000拠点
EV充電器の設置台数は増加している。2025年3月末時点で、ガソリンスタンドに相当するEV充電器は日本国内で2万5,890拠点。これは、2024年4月からの1年間で約4,500拠点の増加で、前年よりも約2.6倍のペースで設置が進んでいる注3。
〔2〕EV充電器は、「普通充電」と「急速充電」の2種類
EV充電器は、出力10kW未満の普通充電器と、それ以上の急速充電器の2種類に大別される(表3)。普通充電器は住宅や商業施設に設置され、数時間から半日程度の長時間をかけて充電を行う。急速充電器は高速道路のサービスエリアなどに設置され、30分程度という短時間での充電を可能にする。ガソリン車同様の利便性を担保するために、出先においても短時間で充電できる急速充電器の普及が急がれている。
経済産業省が2023年10月にまとめた「充電インフラ整備促進に向けた指針」によれば、2030年までに公共用充電インフラを15万口設置することを掲げている。そのうち急速充電器は3万口で、平均出力を現状の40kW前後から80kWへ高めるとともに、高速道路では1口90kW以上、一部では150kWクラスの設置を目指している。
表3 主な普通充電器と急速充電器の例
出典:各社HP、e-Mobility Power提供資料、みずほ銀行「令和4年度 無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業委託調査(電動化社会実現のための充電インフラの普及促進に向けた調査)」2023年3月等より作成
出所 経済産業省、充電インフラ整備促進に向けた指針に関する参考資料
〔3〕急速充電器、日本はCHAdeMO規格
急速充電器は地域によってその方式やコネクタ形状が規定され、その規格に準じたEVが世界各国で生産されている(表4)。日本製EV車はCHAdeMOが主流となっている。
表4 世界の急速充電器の主な規格
出所 各種資料をもとに編集部で作成(2025年5月時点)
〔4〕求められる、急速充電器の高出力化
EVは、航続距離の延長が開発課題の1つとなっており、それによる搭載充電池の大容量化、さらに充電時間の短縮化といったニーズを背景に、急速充電器の高出力化が次の課題として挙げられている。
CHAdeMOの最大充電出力は最大150kWだが、今回の「SERA-400」のように400kWへの高出力化が進められている。またCHAdeMO協議会は、中国との共同開発による急速充電器の新規格「ChaoJi(チャオジ:中国語で“超級”)」を開発、2023年9月には、 中国国家標準化管理委員会で正式に承認され、中国市場では2024年4月から導入されている注4。
このほか海外では、イタリア、ドイツ、オランダ、フランス各国のEV充電インフラ各社が提携し、最大400kWの急速充電器によるネットワークを国際的規模で構築予定。また、北米ではGMが2025年末までに最大500kWの急速充電器を含む500基の充電ポートを米国内に設置を予定している。
一方、中国の広東省深圳(しんせん)に本社を置く電気自動車メーカー「BYD」(ビーワイディ)は自社EV専用規格ながら、1000kWの超急速充電器を開発、5分間の充電で約400kmの航続距離が可能となる発表を2005年3月に行っている注5。
注3:EV充電スタンド情報サイト「GoGoEV」より
注4:CHAdeMO協議会 2023-09-19「ChaoJiが中国国家標準として正式発行」
注5:BYD Auto Japan株式会社、ニュース 2025.03.21『「スーパーeプラットフォーム」技術を発表。EVの充電速度をガソリン車の給油速度と同等にする「油電同速」の実現を目指す』