SERA-400の充電コネクタ:1口最大350A、2口では200 kW×2
SERA-400は図4に示すように、2口の充電コネクタを備えている。充電器1台の出力電圧1000V、出力電流350Aによって最大出力電力は350kW(=1000V×350A)、ただしこれは1口(EV1台)のみの充電時(片系使用時)で、使用時間は15分に限られる。2口(両系使用時:EV2台を同時充電)では最大出力電流は200Aとなり、総出力が400kWとなる。これを2口で使用すると最大で200kWを2台に充電できる。
図4 SERA-400 1口/2口使用時の充電出力
出所 東光高岳、e-Mobility Power、LEADING EDGE DESIGN、住友電工「新製品発表会資料」(2025年5月15日)より
ケーブル素材から新開発した充電コネクタ
図5に示すように、住友電工の開発による新型充電コネクタ(SEVD-22)は、CHAdeMO方式に対応するケーブルの構造と安全要件を定めたIEC62893-4-1(国際電気標準会議規格)の基準に適合、出力電圧1000V/400A通電対応によって、最大400kW充電に対応する。
コネクタ本体の重量は1.0kg未満で、同社の従来モデルよりも約30%も軽量化されている。また、充電ケーブルは同社の独自配合による絶縁被覆素材の採用によって、さらに優れた柔軟性を確保するとともに、同社従来製品よりも約14%細く、約21%の軽量化を達成している。
加えて、コネクタ本体からのケーブル引き出し角度の変更や操作状況の視認性の向上なども行っている。
図5 新型コネクタ(SEVD-22)仕様と現行モデル(SEVD-11)との比較
SEVD:住友電工のCHAdeMO(チャデモ)充電器に対応した「EV直流充電器用コネクタ付ケーブル」のシリーズ名(SEVDシリーズ)
出所 東光高岳、e-Mobility Power、LEADING EDGE DESIGN、住友電工「新製品発表会資料」(2025年5月15日)より
高性能輸入EV車とともに本体デザインを初披露
SERA-400の新デザインは初公開された(写真2中央)。併せて高電圧充電対応EVとして独・ポルシェ「Taycan(タイカン)」と韓国・ヒョンデ注9「IONIQ5(アイオニック・ファイブ)」の実車も展示(写真2左右)され、EV充電のデモも行われた(写真3)。SERA-400の発表は、今後のEVの進化や発展を予感させた。
EVでは、電気システムの電圧構成を「電圧アーキテクチャ」と呼び、これまでは400Vアーキテクチャが主流だった。蓄電池の大容量化やそのエネルギー利用の効率化を目的に、最新のEVは800Vアーキテクチャの採用が進んでおり、この日展示された上記の両車も搭載している。
Taycanの蓄電池容量は79.2kWh(発表会展示モデル)で約400〜500kmの航続が可能、最大充電出力270kWでこれに200kWで充電した場合、5%→80%充電が22.5分程度で可能となる(メーカー発表値)。IONIQ5の場合は84.0kWh(同)/230kWで、10%→80%充電が約18〜20分となる(理論値)。
写真2 SERA-400の除幕式の模様
「SERA-400(写真中央)」の除幕式では、高電圧充電対応EVとして、独・ポルシェ「Taycan(タイカン)左」と韓国・ヒョンデ「IONIQ5(アイオニック・ファイブ)右」の実車が展示された。
除幕式に参加した左から岩堀氏、一ノ瀬氏、山中氏(表1参照)
出所 編集部撮影
写真3 「SERA-400」除幕式で行われた「SERA-400」によるEV充電のデモ
出所 編集部撮影
2025年内の市場導入を目指す
SERA-400は、2025年内の納入・設置開始を予定している。納入先としては、e-Mobility Powerをはじめとする充電サービス事業者をはじめ、SA・PA(サービスエリア・パーキングエリア)、自動車メーカー/ディーラー、バス/タクシー事業者、物流会社、商業施設、自治体等を予定している。
また船舶業界において、EV同様に開発・普及が進められている電動船舶ヘの充電器として港湾関係者などに拡販を目指す。
注9:韓国ヒョンデ:韓国の現代自動車(Hyundai)はこれまで「ヒュンダイ」と呼称されていたが、2020年に世界統一の呼称として、韓国語の発音に近い「ヒョンデ」に統一されている。
参考サイト
株式会社東光高岳プレスリリース、2025年4月1日、「EV急速充電器「SERA-150」(最大出力150kW)の販売を開始しました」
経済産業省、令和5(2023)年10月、「充電インフラ整備促進に向けた指針