ラインアップ最上級モデルとなるSERA-400
東光高岳は、EV充電器において累積販売台数6,000台以上の実績をもち、その実績は国内トップ注6となっているほか、急速充電器に関しては2009年にいち早く市場参入している。それらの実績をもとに急速充電器SERAシリーズを展開している(図1)。
同シリーズは、現在、家庭向けの3kWモデルをはじめ、事業所/ディーラー/SA・PA(サービスエリア・パーキングエリア)向けに、最大出力15kWモデルから、同150kWモデルまで5機種をラインアップしている。その最上級モデルとして新たに加わるのがSERA-400で、総出力400 kW(最大電流400A×最大電圧1000V)のCHAdeMO規格2.0.2認証を取得した初の急速充電器となる。
EV充電器の能力は電圧(V)と電流(A)を掛け合わせた電力(kW=V×A)で決まる。そのため、性能を上げるには高電圧化が必須だが、これまでは経済産業省の保安要件で一般のEVユーザーが充電で扱える対地電圧〔電線と地面 (接地) または接地側の電線との間の電圧差〕の上限が450V以下とされていた。その要件が1500V以下までとなったことで、SERA-400の1000Vという大出力化の道が拓けた注7。
これによって、従来の急速充電器に比べて群を抜く高性能を実現した。また、電圧を高くできれば同じ電力出力でも電流が少なくなるため、充電器のケーブルを細くできるほか、充電時の発熱が少ないといったメリットも生まれる。
図1 SERAシリーズ 製品のラインアップ(右端が今回発表のSERA-400:表2参照)
出所 東光高岳プレスリリース「EV急速充電器「SERA-150」(最大出力150kW)の販売を開始しました」、2025年4月1日
SERA-400、4つの開発コンセプト
SERA-400について、東光高岳の一ノ瀬氏は「これからますます増えるEVユーザーに、最上級の充電体験をお届けしたい。」と、急速充電器の次世代イメージリーダーとしてSERA-400をアピールした。また、e-Mobility Powerの岩堀氏はe-Mobility Powerがこれまで全国で数多く展開してきたEV充電器事業の経験をもとに「これまでのユーザー様の声をもとに、また今後の充電器市場も予見しつつ、新たな急速充電器を東光高岳と開発した。」と開発の狙いを語った。
SERA-400の開発コンセプトは次の4項目である。
〔1〕「より早く充電できる」
高電圧化により、CHAdeMO規格では世界初となる1口あたり最大350kW出力を実現。これにより10分間という短時間の充電で約400km(電力消費率7km/kWhの場合)の航続距離に相当する、急速充電池としては現在の最高レベルの性能を実現している。
〔2〕「誰でも楽に操作できる」
住友電工の新開発による充電コネクタに関して、「軽量な充電コネクタと柔軟性に優れた充電ケーブル、さらに充電ケーブルの取り回しの見直しによって、充電時の操作性を向上させている。加えて、充電器本体からのケーブルの取り回し構造も見直すことで「片手でも楽に充電できる」(東光高岳 石村氏)としている。
このほか、EVに充電器を差し込むだけで充電と決済が自動的に行われる「プラグ&チャージ」を視野に入れたセンサーも搭載されている。
〔3〕「わかりやすく、フレキシブルなサービスとタイムリーな情報提供」
現在のEV充電の課金方式は、充電器の利用時間による課金(分単位の課金)。これに加えて、充電した電気量に応じた従量制課金(kWh課金)が2025年からの提供が目指されている注8。SERA-400はそれぞれの方式のほか、両方式の併用にも対応している。加えて、再エネの有効活用を促進するダイナミックプライシング(日・時間帯別料金)の導入も視野に入れる。
また、充電後もその場で車両を放置し充電スペースを占有し続ける車両が問題となっているが、そうした車両へのペナルティ課金も可能としている。そのほか、充電時の情報や事業者からの告知をタイムリーに見やすく表示する大型液晶画面を装備している。
〔4〕「視認性が高く、スタイリッシュなデザイン」
SERA-400は、EV関連機器でのデザイン実績をもつ山中氏(東京大学特別教授)を起用し、次世代急速充電器としてのアイデンティティの確立をデザイン面から目指す。
山中氏は、今回のデザイン開発の目的を次のように語る。「街に充電器が増えていますが、その中でも特に存在感のあるデザインを目指しました。また、2口あるので2人同時で使っても間違えることなく操作できるユーザビリティも意識したデザインとしています。」(図2)
操作にあたっては3つの物理ボタンをあえて採用し、15.6インチの大きな液晶パネル表示と連動させながらわかりやすく使えることを目指している(図3)。
図2 ユーザビリティも意識した「SERA-400」のデザイン
出所 東光高岳、e-Mobility Power、LEADING EDGE DESIGN、住友電工「新製品発表会資料」(2025年5月15日)より
図3 SERA-400本体に設置された大画面液晶パネルの表示例
出所 東光高岳、e-Mobility Power、LEADING EDGE DESIGN、住友電工「新製品発表会資料」(2025年5月15日)より
注6:2024年3月時点、東光高岳調べ
注7:経済産業省、令和6(2024)年3月19日、「EV充電器に係る保安規制の見直しについて」
注8:経済産業省、令和5(2023)年10月、「充電インフラ整備促進に向けた指針」