[標準化動向]

802.1/802.3の標準化動向(2):100ギガイーサ(100GE)のSG設立 日本、10G EPON(802.3av)の仕様提案

2006/08/31
(木)
SmartGridニューズレター編集部

ここでは、2006年7月17日~7月21日の日程で、米国サンディエゴにおいて開催されたIEEE 802委員会の802.3WG(Ethernet)のホット・トピックスを取り上げて、紹介する。40Gbps~100Gbpsを目指す、超高速イーサネットの標準化が提案され、大きな話題を呼び、SG(スタディ・グループ、検討委員会)が設立された。この他に、前回のIEEE 802委員会総会から検討開始された802.3av(10G EPON)の活動と日本勢の活躍や、その他のタスク・グループの活動状況について紹介する。

IEEE 802.3WGのホット・トピック

今回の米国サンディエゴ(San Diego)会合において、10Gbpsの次の高速化イーサネット(Higher Speed Ethernet)の標準化提案が行われ、ほぼ満場一致でSG (Study Group、検討委員会。Task Groupを結成する以前に標準化の意義や仕様目標などを検討する委員会)の結成が議決された。高速化イーサネットSGでは、伝送速度40Gbpsまたは100Gbpsの次世代イーサネットの標準化が審議される見込みである。

【1】高速化イーサネット標準化のSGを設立

10Gbpsの次の高速化イーサネットの標準化に関する提案が、シスコシステムズ、Force10ネットワークス、クウェイク(Quake)(後にAMCC社による買収が発表された)、IBM研究所の共同で行われた。標準化提案会合には200名を超える聴講者が集まり、140名以上から標準化の開始に対する賛同者が得られた。この結果に基づき、SG(Study Group、検討委員会)の結成が承認された。

通信速度についてはSGを通じて決定されることになるが、これまで10倍ごとに高速化(10倍速)してきたイーサネットの歴史にならって、10ギガイーサの10倍となる100ギガイーサの実現に期待する声が、多くの参加者から聞かれた。

【2】今回の標準化提案会合における審議内容

今回の高速化イーサネット標準化提案会合において、高速化イーサネットの標準化の意義について議論された内容を整理すると、次のようになる。

(1)1983年に10Mbpsの10BASE5を標準化して以来約25年間、のイーサネットの発展は、イーサネット自身の新しい市場を開拓してきた。インターネットをはじめとする情報通信関連分野の市場は急速に拡大し、必要な帯域は増え続けつつある。

とくに、高品質の映像・音声などの複数のアプリケーションが利用されるようになり、イーサネットのさらなる高速化が必要となりつつある。このため、帯域は常に高速・広帯域化していくことが求められている。また、新しいイーサネットには広帯域に加えて、冗長性(バックアップ機能)や運用コストの低減も求められていく。

(2)イーサネットの高速化の歴史は、これまで何本かのイーサネットを束ねて帯域を拡大し、高速化して使用する「リンク・アグリゲーション」技術だけでなく、1本のイーサネットで帯域の集約度の向上を実現させ、高速化してきた。

10ギガ・イーサの市場が立ち上がりつつ今こそ、次世代の高速イーサネットが必要である。早急に標準化を開始して、2010年までには新しいイーサネットの標準化を完了させる必要がある。

(3)先に述べたリンク・アグリゲーション(LAG:Link Aggregation)技術も存在するが、運用管理の複雑さやトラフィック分配の不均一性があり、十分な技術ではない。

(4)次世代の高速化イーサネットは、当面デスクトップ向けの技術とはならないため、これまでのイーサネットの数量モデルは当てはまらない(すなわち、これまでの「10倍速を3倍のコストで実現」の法則には当てはまらない)。

(5)伝送距離としては、1m以下のバックプレーン向け、25m以下の超ショート・レンジ、100m以下のショート・レンジ、40km以下のロング・レンジ、40km超の超ロング・レンジなどが考えられる。

【3】高速化イーサネットの市場ニーズ

次のような視点から、2010年までに8~10倍の高速化イーサネットが必要となる。

(1)コンシューマ向けブロードバンド・サービスを支える高速バックボーンの用途(とくに音楽やビデオ配信などによる爆発的な帯域の増加への対応が急務となる)

(2)超高速コンピューティングに対応したデータ・センター内の高速化ネットワークの用途

【4】高速化イーサネットの技術的な実現性

(1)高速化イーサネットの伝送については、「PHY Aggregation」(物理層の集約)と呼ばれる技術で、複数のイーサネットの伝送リンクを束ねることで高速化を実現できる。たとえば10ギガイーサの物理層を多数集約して100ギガイーサを実現することも可能である。

(2)MAC層(媒体アクセス制御層)については、10ギガイーサでは多くの場合、データ・バス(共通信号路)=64ビット幅、処理速度=156MHzで実現されており、半導体の線幅90nまたは130nのLSI製造プロセスによって実現されている。

高速化イーサネットは、このようなデータ・バス幅増加と処理速度向上や、線幅45~90nのLSI製造プロセスを用いることで実現可能である。

【5】高速化イーサネットに対する懸念

今回の提案に対して、一部の参加者から下記のような慎重な意見が出された。
「現在、10ギガイーサの市場が十分に立ち上がっておらず、時期尚早ではないか」、「イーサネットは、既存技術を利用して市場普及してきた歴史があるが、現時点では高速化イーサネットに活用できる技術が存在しておらず、標準化・製品化に時間がかかるのではないか」

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