[特集]

活発化する電波/周波数の割り当て(3):2.5GHz帯広帯域移動無線アクセス

2006/09/15
(金)
SmartGridニューズレター編集部

電波開放戦略と周波数再編

まず、図1で示した電波開放戦略を構成するそれぞれの取組みについて説明します。

【1】「周波数の再編方針」の策定

「周波数の再編方針」は、具体的な周波数割当計画の変更を段階的に実施するための基本的な考え方を示したもので、「電波政策ビジョン」(2003年7月)において、今後中核となる電波利用システムである移動通信システム、無線LANなどについて行った5年後(2008年)、10年後(2013年)の周波数需要予測に基づき、2003年10月に策定・公表しています。

図2周波数の再編方針(2003年10月)の概要
図2周波数の再編方針(2003年10月)の概要 (クリックで拡大)

【2】電波の利用状況の調査、公表制度の導入

図3 (参考1)「電波の利用状況の調査、公表制度」の概要
図3 (参考1)「電波の利用状況の調査、
公表制度」の概要

電波の再配分を実施する場合、実際の電波の利用状況を把握した上で、迅速かつ円滑な再配分を実施する必要があります。このため、2002年の電波法の改正によって、無線局の使用実態、通信量等の電波の利用状況を調査し、有効利用の程度等を評価・公表する制度を導入しています。

※参考図3〜7は、まとめてダウンロード(PDF)して閲覧できます。
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【3】電波の再配分に関する給付金制度の導入

図4 (参考2)電波の再配分に関する給付金制度の導入
図4 (参考2)電波の再配分に関する給付金制度の導入

前述した評価を受けて電波の再配分を実施する場合、既存の電波利用者にとっては、該当する帯域から退去、または異なる帯域に移行する必要が発生し、過去に投資して取得・建設した無線設備が使えなくなるほか、撤去費用、新規設備の取得等、経済的な費用負担が生じるおそれがあります。

このため、周波数の使用期限が早期に到来する既存の電波利用者に対して、通常生じる費用を給付金として支給する制度を、2004年5月の電波法改正によって導入しています。

【4】無線局の登録制度の導入

また、有限かつ稀少な電波を有効利用して、無線によるブロードバンド環境を構築するためには、混信の防止など、電波利用の秩序を維持しつつ、電波ビジネスの自由な事業展開を図ることによって、電波の多重利用を推進するための方策が必要となります。

図5 (参考3)無線局の登録制度の導入
図5 (参考3)無線局の登録制度の導入

このような観点から、電波の秩序を維持しつつ規制緩和を行い、現行の「事前チェック型」の免許制度に加え、「事後チェック型」の登録制度を、2004年5月の電波法改正によって導入しています。

この登録制度の導入により、これまで基地局等1局ごとに、詳細情報に基づき免許(申請から免許までおおむね2~3週間程度)を与えていたものが、同一使用形態の基地局などをまとめて登録(申請から登録まで最短1日)できるようになるほか、登録に基づき個々の基地局などの自由な設置(詳細情報を事後届出)が可能となるなど、電波の自由な利用を促進し、無線局開設の手続きの大幅な迅速化・簡素化が実現されました。

【5】電波利用料制度の見直し

図6 (参考4)電波の経済的価値等を考慮した電波利用料制度の導入
図6 (参考4)電波の経済的価値等を考慮した
電波利用料制度の導入

総務省では、混信や妨害のない安定的な電波環境を維持するとともに、免許事務の電子化や、能率的な電波利用の促進によって無線局の急増に対処してきました。こうした電波の適正利用のより一層の確保を目的に、無線局全体のための共益的な行政事務の費用を、当該事務の受益者である免許人全体で負担する電波利用料制度を、1993年4月から導入しています。

電波利用料制度については、制度の導入からすでに10年以上が経過しました。導入時と比べて、携帯電話や無線LANなど、電波を利用したビジネスが発展し、電波利用料をめぐる諸事情も大きく変化してきていることから、電波の経済的価値を反映した電波利用料の導入に関する制度の見直しを、2005年10月の電波法改正によって行いました。

図7 (参考5)「電波資源拡大のための研究開発」のイメージ
図7 (参考5)「電波資源拡大のための研究開発」
のイメージ

これにあわせて、ワイヤレス・ブロードバンドなどの新たな電波利用システムの導入に必要な電波需要に対応するため、電波資源拡大のための研究開発を電波利用料で行えるようにする制度改正も、2005年10月の電波法改正によって行いました。

 

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