[特集]

対談:電波・周波数を語る(2):UWB/電子タグ(RFID)から802.11nまでの周波数

2006/11/13
(月)
SmartGridニューズレター編集部

802.11n用の周波数割り当てと40MHz幅の課題

—こういう新しい802.11nのような標準が出てくると、周波数の問題で総務省としてもいろいろ対応されるのではないかと思いますが、今はどんな状況ですか?

河内 無線LAN用の周波数については、802.11nの標準化も控え、今後、多くの需要が予想されるところから、ふんだんに用意させていただくべく、検討をしているところです。従来から、2.4GHz帯は非常によく使われていて、混んできているため、802.11nには、5GHz帯の周波数を中心に用意しようと考えています。

現在は、その5GHz帯における無線LAN用周波数帯としては、まず、屋内用として、5150~5350MHzの200MHz幅があります。その幅の中で対応することができます。またその上の、5470~5725MHzにかけての255MHz幅の周波数帯については、現在レーダーなどに使われているので、まだ使えませんが、屋内・外用として共用するための技術的目途がついたので、電波監理審議会に諮問し、2006年12月に制度化のための規則が審議会から答申されたところです。

また、屋外も含めたものとしては4900~5000MHzの100MHz幅、それから2007年までの暫定仕様としては、5030~5091MHzの61MHz幅が使えるようになっています。4900~5000MHzについては、ハイパワーで屋外用に使えるのですが、固定マイクロなどが使用している周波数帯ということもあり、登録制という制度で使われています。

このように、無線LAN用の周波数帯としては、5GHz帯においてさまざまな周波数帯を用意していますが、この中で、802.11nには、5030〜5091MHzを除く上記周波数帯に割り当てられ使われていくことになると思います。

—802.11nの仕様では、20MHz幅を2つ使って40MHz幅にして高速化することになっていますが、そこの辺り総務省としては検討中なのでしょうか?

河内 これについては、2006年12月に、情報通信審議会の中の、5GHz帯無線アクセスシステム委員会から、技術的条件が答申されたところです。答申では、周波数を40Hz幅に広げる、あるいはMIMOなどの技術の規定がなされています。国民のためになる、あるいは情報化の進展のためになる技術ですので、可能な限り早期の導入を図っていきたいと思います。

—服部先生、802.11nに関して、この辺はいかがですか?

服部 日本のひとつの産業としてみた場合、802.11nは無線システムですが、その中核となるのは半導体のチップ・ビジネスなわけですね。今、世界でしのぎを削って、それぞれいろいろなアイデアを出し標準化が進められていますが、日本がその標準のコアとなる技術開発について、国際的に主導権を取れるようにしていく必要があります。そうしませんと、日本はアセンブリー(組み立て)ばかり、あるいは、外国の販売拠点ばかりになってしまいます。

河内 802.11nの標準化のスケジュールとしては、2008年の春には11nの規格が発効される予定となっています〔本サイト:802.11n(無線LAN)の標準化動向(2)図1参照 〕。しかし、ドラフトはすでに固まっていますので、このスケジュールにむしろ先行するくらいのペースで導入を図っていく予定です。

(つづく)

プロフィール

服部武氏

服部 武

上智大学 理工学部
電気・電子工学科 教授
総務省情報通信審議会
携帯電話等周波数有効利用方策委員会
主査

略歴

1974年 東京大学 大学院 工学系研究科 電子工学博士課程了(工学博士)
1974年 日本電信電話公社横須賀電気通信研究所 入所
自動車・携帯電話、新コードレス電話方式、パーソナル通信方式、PHSの研究開発推進に従事。
この間、研究開発本部調査役、無線システム研究所・研究企画部長/パーソナル通信研究部長などを歴任

1996年 通信網総合研究所ネットワーク企画推進室 主席研究員
1998年より現職(上智大学 理工学部 電気・電子工学科教授)
現在、次世代移動通信方式、高速移動パケット伝送、ワイヤレス・システムにおけるQoSスケジューリング、位置検出、OFDM/MIMO伝送などの研究に従事
<主な活動>総務省情報通信審議会 携帯電話周波数有効利用方策委員会 主査

 


 

河内正孝氏

河内 正孝

総務省 総合通信基盤局 電波部長

略歴

(学歴)
金沢大学大学院工科
研究科 電子工学修士課程

(職歴)
1978年4月 郵政省入省
1997年7月 電気通信局電気通信事業部電気通信技術システム課長

1999年7月 放送行政局放送技術政策課長
2001年7月 〃    〃   技術政策課長
2002年7月 〃 総合通信基盤局電波部電波政策課長
2004年1月 〃 信越総合通信局長
2005年8月 独立行政法人情報通信研究機構理事
2006年7月 現職に就任

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