次世代の高速無線LAN「802.11n」や、802.16e-2005に準拠した「モバイルWiMAX」などの登場を背景に、「電波・周波数」の割り当 てとその有効利用が大きな注目を集めています。ここでは、その現状と課題について、上智大学 理工学部 電気電子工学科 服部 武 教授と、総務省 総合通信基盤局 電波部長 河内正孝氏に対談を行っていただきました。これまでの、
<テーマ1>通信に適した周波数はなぜ5GHz以下なのか?
<テーマ2>UWB/電子タグ (RFID)から802.11nまでの周波数
に続いて、今回は、
<テーマ3>4つのワイヤレス・ブロードバンド:
WiMAX、802.20、 iBurst、次世代PHS
についてお話いただきました。(文中、敬称略、司会:インプレスR&D 標準技術編集部)

上智大学 服部 武 教授 VS 総務省 電波部 河内 正孝 部長
無線システムの2つの大きな流れ
—ワイヤレス・ブロードバンドの分野で、WiMAXや802.20 、iBurst、次世代PHSなどが注目されていますが、これらの動きについて、服部先生はどう見ておられますか?
服部 ここは新しい領域ですね。今までのシステムは、携帯電話のような通信システムから発展し、これが高速化し、だんだんIP系に統合していく。そういう大きな流れが一つあります。もう一つは、無線LANのようなコンピュータ系から進展してきた流れがあります。後者は、最初からIP(インターネット)をベースとして展開してきました。
このような2つ大きな流れの中で、後者は、サービス・エリアを無線LANからWiMAXのようなメトロポリタン(都市)に広げる無線MANが標準化され、さらにモバイルWiMAXでは、時速120kmまでの移動性まで可能にしているため、非常に関心を集めているのです。
両者の基本的な技術の違いとしては、携帯電話はNTTドコモやソフトバンクモバイルのW-CDMAや KDDIのCDMA2000のようなFDD(周波数分割複信、※1)方式ですが、モバイルWiMAXでは、TDD(時分割複信、※2)方式が使用され、電波の使い方を工夫しています。
802.20やiBurstもTDD方式であり、またPHSもTDMAをベースとして発展してきたTDDということもあり、ある意味では、最近のワイヤレス・ブロードバンドは、このように共通的なバックグラウンド(TDD)をもっています。これは、今までの携帯電話の流れと大きく違う流れとなっています。これらは、新しい無線アクセス系として、可能性が大きいと思っています。
用語解説
※1 FDD:Frequency Division Duplexing、周波数分割複信
上りと下りを別々の周波数で通信を行う方式
※2 TDD:Time Division Duplexing、時分割複信
上りと下りを同一の周波数で通信を行う方式