トヨタ自動車、マツダ、デンソーの3社は2017年9月28日、電気自動車(EV)の基盤となる技術などを共同で開発することに同意し、契約を締結した。さらに共同開発をスムーズに進めるために3社が出資して新会社「EV C.A. Spirit株式会社」を設立した。新会社は26日付で発足となっており、すでに活動を始めている。出資比率はトヨタ自動車が90%で、マツダとデンソーが5%ずつ。代表取締役にはトヨタ自動車副社長の寺師茂樹氏が就き、発足時の社員はおよそ40名となる。
図 EVにおいて共用できる基盤技術を3社共同で開発する
出所 トヨタ自動車、マツダ、デンソー
3社は共同開発に至った理由を「市場動向に柔軟かつ迅速に対応するため」としている。その上でEVについてまだ普及が進んでいるとはいえず、販売台数も少ない。さらに、消費者が求める自動車のあり方は、地域や用途などによって多種多様になり、単独の企業ですべての要望に応える製品ラインナップを揃えるには膨大な工数と費用、そして時間がかかるという課題を挙げた。
その課題に対応するために、新会社では軽自動車から乗用車、SUV(Sports Utility Vehicle:スポーツ用多目的車)、さらには小型トラックまでを対象とし、共通で利用できる基盤技術と開発手法を共同開発するとしている。具体的には多様な車種で共用できる車台や、電気自動車に欠かせない蓄電池やモーター、車両の開発手法などを共同で作り上げていくという。そのために例えばマツダなら「モデルベース開発」、デンソーなら「エレクトロニクス技術」、トヨタ自動車なら「TNGA(Toyota New Global Architecture:トヨタ車共通の新しい車両開発基盤)」など、各社が得意とするものを持ち寄って、共同開発に活用する。
図 新会社で開発した成果はトヨタ自動車とマツダで共用する
出所 トヨタ自動車
新会社では、2020年にEVに必要な基盤技術や開発手法を一通り作り上げるという予定を立てている。その成果を活かしてトヨタ自動車とマツダは両社の特徴を盛り込んだEVを企画、製品化し、市場に投入する。2016年11月にトヨタ自動車がEV開発の社内ベンチャーを立ち上げたが(参考記事)、この社内ベンチャーは新会社の成果を活かして早期に製品を企画し、販売する役目を担うことになる。
3社は今回の協業で、EVをどのメーカーが作っても大して変わらない「コモディティ」になることを防ぎ、それぞれのブランド独自の付加価値を消費者が強く感じられるものを作るとしている。そのために共用できるところは共同開発して共用し、ブランド独自の部分を活かした製品企画に注力できる体制を作ったということだろう。さらに3社は今後、この協業体制を、ほかの自動車メーカーや部品メーカーも参加できるオープンなものにしていくことを目指すともしている。