中部電力は2018年3月20日、静岡市に建設中だった水力発電所「新奥泉水力発電所」の営業運転を開始したと発表した。新奥泉水力発電所は2017年2月から建設が始まっていた(参考記事)。
図 完成した「新奥泉水力発電所」。奥泉ダムの左側にある水圧鉄管に維持放流水を流し、発電所建屋にある水車を回す
出所 中部電力
新奥泉水力発電所の所在地は静岡県静岡市葵区の大井川流域。奥泉ダムから常時流している「維持放流水」を利用して発電する。維持放流水は、ダム下流に生息する生物の生態系を維持するために流しているもので、常時ほぼ一定の量が流れており、これを利用した発電所は安定した発電量を期待できる。新奥泉発電所では、維持放流水をおよそ19mの落差を付けて落として発電する。水車には最大で毎秒2.07m3の水が流れる。
発電所の最大出力は320kW。建設開始時の予定では、290kWとなる予定だったが、建設開始後に中部電力が試験を実施して、出力の引き上げが決まったという。それに伴って、年間発電量の予測値もおよそ1.1GWh(110万kWh)から、およそ1.3GWh(130万kWh)に上がった。これは、日本の一般世帯の約420世帯分の年間使用電力量に相当する量だ。設備利用率を計算すると約46.4%に達する。建設開始当初に予定値で計算すると約43.5%になるので、設備利用率も向上したことになる。
中部電力は、大規模水力発電所の維持放流水などを利用した小規模な水力発電所の建設を積極的に進めている。2018年3月初旬には、長野県上伊那郡宮田村(かみいなぐんみやだむら)の長野県の太田切川(おおたぎりがわ)流域に「黒川平(くろかわだいら)水力発電所」を建設すると発表している(参考記事)ほか、6カ所以上の小規模な水力発電所を運営している。燃料を使うことなく高い効率で安定した発電量を期待できることから、中部電力は今後も維持放流水などを利用した小規模な水力発電所に開発を進めるとしている。
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中部電力