[新動向]

スマートハウス/スマートマンションに必要なICTプラットフォームの最新動向

2014/03/01
(土)

スマートハウスやスマートマンションの現実的なビジネスが活発化してきた。これらに導入するHEMSやMEMSをはじめ、いろいろな機器をシステム構築するうえで必要となる環境として、「ICTプラットフォーム」(情報通信基盤)の導入が求められる。既築の建物では、インターネットを利用する際に必要な通信機器や、ホームセキリュティサービスを導入する際に専用のハードウェアを設置すると同時に、サービス(例:玄関のドア等)ごとにハードウェアを設置しないとサービスが利用できない。そこで、建物内に設置されるこれらの機器を束ねるサービスゲートウェイ(ホームゲートウェイともいわれる)と、これを管理する「ICTプラットフォーム」が必要となる。ここでは、このICTプラットフォームの必要性について整理して解説する。

ICTプラットフォームの必要性

現在、市場に展開されているスマートハウスやスマートマンションには、

  1. ホームセキュリティサービスの提供を受ける際の機器
  2. エネルギー管理や制御を行う機器
  3. インターネット回線に必要なブロードバンドルータやホームゲートウェイ(サービスゲートウェイ)

などのハードウェアを設置することによって、居住者は、はじめてそのサービスを利用できる。

さらに、具体的にサービスごとのハードウェアの提供を受ける、あるいはICTプラットフォーム(情報通信基盤)を構築することによって、いろいろなサービスが提供されるようになるが、次にそれらについて説明する。

サービスごとに必要となるハードウェアが提供されるケース

現時点では、スマートハウスやスマートマンションに共通のICTプラットフォームが導入されているケースは少ないため、その多くがサービスごとに必要となるハードウェアを居住空間へ設置することで対応している。

そこで、具体的なユースケースの例を挙げながら、これらの例からサービスごとに必要なハードウェアが、利用者の視点でどのように扱う必要があるかについて、次の6つの項目を中心に解説する。

結論としては、この6項目のそれぞれのサービスの中で、何かトラブルが発生した場合には、利用者がそれぞれのサービスの提供先へ問い合わせを行うことになる(図1)。この問い合わせの場合、利用者の視点ではなくて、ハードウェアを含めたサービスを提供している側(提供側)の都合でその対応が行われることに、留意する必要がある。

図1 現状のホームネットワーク(メーカーごとに独自プロトコルが導入されている)図1 現状のホームネットワーク(メーカーごとに独自プロトコルが導入されている)〔出所:筆者作成〕

〔1〕白物家電のケース

電気冷蔵庫や電気釜などのいわゆる白物家電を購入する際は、一般に家電量販店で購入するが、これらの家電製品が故障した場合には、自らが家電量販店に出向き、故障した家電製品の買い替えを行うのが普通である。また、仮に故障を利用者が認識し、その家電製品を購入した家電量販店に問い合わせをしても、その多くは的確な答えを得ることは難しい。

〔2〕住宅設備機器のケース

一方、建売住宅などを購入した場合は、通常、住宅内の給湯器や電気コンロ、トイレなどの住宅設備機器は、住居が完成した時点であらかじめ設置されている。しかし、給湯器のお湯を沸かす機能が急に故障した場合は、お湯を沸かすことができないため入浴できなくなる。このように、お湯が沸かないことが夜中にわかった時点では、問い合わせ先のコールセンターでの修理の対応は翌日となる。

〔3〕インターネット回線、CATV回線のケース

パソコンでインターネットを利用する際には、インターネットサービスを提供しているプロバイダの通信回線の手続きを行い、毎月そのサービス利用料金を支払うことになる。また、多くの場合マンションでは、CATV回線の利用料が毎月のマンション管理費用から支払われている。このため、直接的には、このインターネットサービスの費用対効果を居住者の視点からは、利便性を感じていない状況となっている。

〔4〕モバイル通信回線のケース

多くのインターネット利用者がインターネット回線へアクセスをする場合には、モバイル(移動通信)系のスマートフォンやタブレット端末が急速に普及しているため、モバイル通信回線経由での利用が圧倒的に多い。

そのためモバイル通信回線はLTEなどによるブロードバンド(高速)化が進んでいるものの、サービスを提供する移動通信事業者の基地局の数と利用者の端末数のバランスが崩れて、基地局の建設が追い付かない状況である。そこで、移動通信の混雑を補完するため、移動通信事業者は、Wi-Fiアクセスポイントとの連携を進めて通信の混雑を解消しようとしているが、その整備には時間を要するため追いつかない面がある。そこで、利用者からは、場所を問わずにリモコン感覚で、最適な移動通信が活用できる環境整備が期待されている。

〔5〕ホームセキュリティ機器のケース

ホームセキュリティサービスを申し込むことによって、セキュリティ専用のハードウェアを住居に設置することになる。実際には、ホームセキュリティ機器ベンダや通信事業者、サービス事業者などの異業種との連携が求められるので、他のサービスとも併用できるICTプラットフォーム上での対応が必要になる。この結果、専用のハードウェアを住居に設置する必要がなくなり、その分、利用者が負担するサービス利用料の低減も想定できる。

〔6〕ドアホンのケース

ドホアンは、「戸建住宅」の場合と「マンション」の場合では、その利用形態が少し異なるケースがある。しかし、現在製品化されているドホアン製品が、新築の建物に設置される場合には、その建物の要件ごとにドアホンのディスプレイを利用して、見守りサービスなどと連携しているものも登場している。

一方、スマートマンションでは、留守中に来訪者が訪ねてきた場合の対応が難しいこと、あるいはマンションの集合玄関に居住者が入り、そこから自宅へ向かうマンションの共有部の廊下を歩行中に来訪者が訪れた場合には、その対応ができない。

またスマートハウスでは、外出中に不審者か来訪者かを区分けして、不審者であると判断した場合には、あらかじめ家の四隅に設置した監視カメラの映像を、外出先の住居者のスマートフォンへ画像転送することなどを、ICTプラットフォームと連携していく製品が求められている。

今後は、マンションのIPネットワークと連携することによって、ドアホンからより高い生活の利便性を実現するために、ICTプラットフォームに連携させることが求められている。これによって、外出先でもスマートフォンによって、住居内にいる時と同じ状況を即時に確認できるようになる。

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