経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム協議会」主導のもと、神奈川県横浜市、愛知県豊田市、京都府けいはんな学研都市、福岡県北九州市の4 地域において実証実験が進められており、2014 年度で終了を迎える。また、これと並行して、東日本大震災後の被災地復興を背景に、東北8 地域において、「スマートコミュニティ導入促進事業」も行われている。そこで、ここでは、前後編にわたって、4 地域実証、東北8 地域事業のそれぞれの内容・成果と展望について整理する。さらに、電気学会の「スマートグリッドにおける需要家施設サービス・インフラ調査専門委員会」(SGTEC)がこれらの実証実験から導き出した、国内デマンドレスポンスのユースケースについて、SGTEC への取材をもとに解説する。
4 地域実証の背景
経済産業省は、平成21(2009)年11月、化石資源などの高騰を背景に、将来、供給電力の重要な部分を占めると考えられる太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを系統電力に導入するなどの動きに備え、エネルギーの安定供給を行うための省内の横断的なプロジェクトチームとして「次世代エネルギー・社会システム協議会」を設置した。同協議会は、平成22年(2010年)1月に、次世代のエネルギー流通および社会システムのあり方に対する「中間的な取りまとめ」を発表し、この取りまとめを受けて、スマートグリッド/スマートシティの社会実証地域が公募された。その結果、同年4月に採択されたのが、
- 神奈川県横浜市
- 愛知県豊田市
- 京都府けいはんな学研都市
- 福岡県北九州市
の4地域である。
4地域では、平成22(2010)年4月~ 8月にマスタープランの作成、同年9月より実証導入機器の設計と開発が行われ、平成23(2011)年4月から実際に実証実験が開始された。実証実験は平成27(2015)年3月までの予定となっており、スマートグリッドおよびスマートシティにおける、次の3つを実現するための技術と仕組み、ビジネスモデルが、それぞれのプロジェクトの地域や参加企業の特色を活かして検証されている。
-
地域のエネルギーマネジメント
-
家庭・ビルのエネルギーマネジメント
-
交通システム・その他
同実証事業の概念図を図1に示す。
また、4地域実証を進めているなか、平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災を受け、内閣のもとに組織された復興庁の東日本大震災復興対策本部は、エネルギーの利用効率を高めるスマートコミュニティを岩手、宮城、福島の被災3県に先駆的に導入するため、「スマートコミュニティ導入促進事業」の公募を行った。
公募は2段階によって行われ、平成24(2012)年2月~ 3月に行われたスマートコミュニティ・マスタープラン策定事業の選定では、次の8地域が採択された。
- 福島県会津若松市
- 宮城県気仙沼市
-
宮城県石巻市
-
宮城県黒川郡大衡村(おおひらむら)
-
宮城県亘理郡山元町(わたりぐんやまもとちょう)
-
岩手県宮古市
-
岩手県釜石市
-
岩手県北上市
その後、各事業者によって同年12月までにマスタープランが作成され、平成25(2013)年1月からは、スマートコミュニティ構築事業の選定が行われた。同年2月より、実際の事業が順次開始されている。
なお、スマートコミュニティ構築事業については、毎年度事業が公募されている。事業への補助金は、平成28(2016)年3月までの事業に対して交付される予定となっている。