5G実現向けて活発化する世界の取り組み
IoT・ビッグデータ・AI時代を迎えて、通信の面から、4G(LTE〜LTE-Advanced Pro)の次の世代となる5G(第5世代移動通信システム)への動きが活発化している。例えば、冒頭で述べたように、直近の動きとして、日本では総務省と5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)が、「5Gワークショップ2017」を幕張メッセで開催した(2017年10月4日、参加者約700名)注1。
これに続いて、韓国・ソウルでは「グローバル5Gイベント」注2が2017年11月22〜23日、JWマリオットホテル・ソウルで開催され、
- 日本の5GMF(第5世代モバイル推進フォーラム)
- 韓国の5G Forum
- 米国の5G Americas
- 中国のIMT-2020(5G)Promotion Group
- 欧州の5G-IA(5G Infrastructure Association)
- ブラジルの5G Brazil
という世界の代表的な5Gの推進団体が結集し、「第4次産業革命を加速する5G」をテーマに活発な議論が行われた。
同イベントでは、各政府の活動状況の紹介に続き、5G周波数の課題についての議論や、各推進団体の取り組みについて報告がなされた。さらに、5Gの導入およびサービス計画や、5Gの各種実証試験の状況などに加えて、「推進団体間の国際協力の状況」および「ピョンチャンオリンピックとその後の5G」など、目前に迫ったオリンピックの準備状況の報告なども行われた。
5Gのロードマップと3つの要求条件
日本の5GMFは、2017年9月に5Gに関するホワイトペーパーを作成し、ITUや3GPP(表1に、この記事に登場する5G/LPWAに関連する用語を解説)と関連付けて、2020年に向けた5GMFのアクションプラン(図1)を発表した。5Gは、LTE-Advanced Proの標準化も含めて、3GPPリリース14から標準化が開始されている注3。
表1 5G/LPWAに関連する用語解説
出所 各資料をもとに編集部作成
図1 5G実現のための2020年に向けたアクションプラン
5G-TPG:5G Trial Promotion Group 、5Gトライアル推進グループ
出所 5GMF White Paper「5G Mobile Communications Systems for 2020 and beyond Version 1.1」、2017年9月29日
具体的には、3GPPリリース15で5Gフェーズ1を、リリース16で5Gフェーズ2が策定される。この間、日本の5GMFは、5Gのコンセプトの策定から5Gフィールドトライアルを行い、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせるよう、5Gの商用サービスを開始する計画となっている。
〔1〕5Gを実現する3つの要求条件
5Gを実現するには、図2および表2に示すように、
- eMBB(大容量・超高速通信)
- mMTC〔大量MTC接続(超多数端末の同時接続)〕
- URLLC(低遅延化・高信頼性通信)
などの要求条件を実現することが求められる。
表2 LPWAも取り込む5G(第5世代)の要求条件(eMBB、mMTC、URLLC)
出所 5GMF White Paper「5G Mobile Communications Systems for 2020 and beyond Version 1.1」、2017年9月29日
図2 5Gによるエコ社会実現に向けたクロスオーバーコラボレーション
出所 5GMF White Paper「5G Mobile Communications Systems for 2020 and beyond Version 1.1」、2017年9月29日
これらを実現することによって、5Gは、今後普及が予想されている自動運転車に対して、災害発生時にリアルタイムに最適な地図(走行ルート)を作成し支援する用途(低遅延)をはじめ、遠隔制御(海外にあるブルドーザーなどの日本からの遠隔制御・運転)や、4K/8KによるVR(仮想現実)/AR(拡張現実)などのリッチコンテンツに求められる超高速通信、およびIoTの進展に伴って急増する超多数端末の同時接続(LPWA)などに対応できることが期待されている。
〔2〕5Gにおける3つの周波数帯候補
総務省では、5Gへの周波数帯割当について、現在、3.7GHz帯(3.6〜4.2GHz)、4.5GHz帯(4.4〜4.9GHz)、28GHz帯(27.5〜29.5GHz)などが候補として審議されている注4。今後、欧州や米国、中国、韓国などの各国との連携を考慮し、またITUや3GPPにおける5G無線インタフェースの標準化動向をみながら、日本の周波数割当ロードマップを作成することなどが検討されている。
〔3〕日本でも周波数オークションを検討へ
また、新たな周波数帯の割り当てに伴って、政府の規制改革推進会では、次のようなことが検討されている注5。
- 新たに割り当てる周波数帯について、その経済的価値を踏まえた金額などを総合的に評価することで、価格競争の要素を含め、周波数割当を決定する方式を導入する(2018年度中に法案を提出して法整備する)こととし、そのための検討の場を設ける。
- 入札価格の競り上げにより割り当てを受ける者を決定するオークション制度については、メリット・デメリット、導入した各国におけるさまざまな課題も踏まえ、引き続き検討を継続する。
特に、これまで日本では実施されていなかったオークション制度が俎上に上がっており、実際に導入がされるか否か、大きな関心を集めている。
▼ 注1
http://5gmf.jp/event/20171024134507/
▼ 注2
年2回開催で、今回の主催は韓国5G フォーラム。世界16か国から315名が参加。次回の第5回イベントは、2018年5月にテキサス州オースチンにおいて開催される予定。
▼ 注3
5Gについては、2015年9月に「3GPP Workshop on 5G」会合が開催され、3GPPにおける5Gの標準化が開始された。図1に示すように、2020 年の5Gサービス実現を目指して、3GPP リリース14、15、16などで順次仕様化され、2019 年に標準化を完了する予定。