「24/7カーボンフリー電気」により常時再エネ100%を目指す
京セラコミュニケーションシステム株式会社は、常時再エネ100%で運営する「ゼロエミッション・データセンター 石狩」(以下、ZED石狩。図1、表1)を2024年10月1日に開所した。本サイトで既報の通り、データセンターの再エネ化が急がれ、取り組む企業が増えているが、ZED石狩では注目される新たな取り組みが行われている。それが「24/7カーボンフリー電気(以下、24/7、トゥエンティーフォーセブン、年中無休)」と呼ばれる再エネ調達法だ。
図1 ゼロエミッション・データセンター石狩(ZED石狩)の外観
出所 京セラコミュニケーションシステム株式会社プレスリリース、2024年10月1日、「京セラコミュニケーションシステム、ゼロエミッション・データセンター 石狩を開所」
表1 ゼロエミッション・データセンター 石狩(ZED石狩)の概要
出所 京セラコミュニケーションシステム株式会社 プレスリリース、2024年10月1日、「京セラコミュニケーションシステム、ゼロエミッション・データセンター 石狩を開所」
第2世代の再エネ調達法を導入:電力消費と再エネ供給をマッチング
24/7とは、英語圏で1日24時間・週7日の意味で、その名の通りこの調達法は昼も夜も休みなく常に再エネ電力100%の使用を目指している。
これまで再エネ調達は、電力消費量を四半期や年間の単位で計測し、それと同量の再エネ属性証書注1を購入することで脱炭素化したとみなす、カーボンオフセット注2が主流だった。
一方で24/7は、1時間といった時間単位で電力消費量と再エネ供給をマッチングさせる(組み合わせる)。その際、再エネは同地域から調達する。電力の使用状況に即した再エネ調達を行うことで、地域の再エネの開発・利用を促進し、ひいては社会全体の脱炭素化を加速させる。これまでの調達の概念からさらに一歩進んだ、「第2世代の再エネ調達」として期待されている(図2)。詳細は、本サイトでも特集しているので、そちらをご参照いただきたい(「次世代の再エネ調達『24/7カーボンフリー電気』≪前編・後編≫」)。
この手法は、Googleが自社データセンター運営にあたって始めたもので、それが国連に取り上げられ、さらに2021年に国際イニシアチブ「24/7 Carbon Free Energy Compact」注3が創設されたことから一気に注目が高まった。運用には、再エネの発電を時間単位で証明する必要があるが、その技術やスキーム(枠組み)の標準化も進められている。米国連邦政府やGoogle、Microsoftなどがすでに導入に取り組んでおり、KCCSの発表によれば、日本国内ではZED石狩が初となっている。
図2 第1世代再エネ調達法と第2世代再エネ調達法の違い
出所 スマートグリッドフォーラム2022年6月12日、大串 康彦、「次世代の再エネ調達『24/7カーボンフリー電気』≪前編≫」
蓄電池とAIなどにより常時再エネ100%を目指す
ZED石狩は、24/7による稼働のために蓄電池(容量:6MWh)とAI技術を活用した電力需給制御システムを独自に開発。これと電力需要のタイムシフト推進(リアルタイムではなく時間帯をずらすこと)などによって、時間単位での再エネとのマッチングを行う。再エネ供給は、隣接する洋上風力発電所や、KCCSが新設した太陽光(1.8MW)による自家発電設備所から直接送電される生グリーン電力注4も組み合わせて利用することによって、24/7の稼働を目指す(図3)。
図3 ZED石狩の電源構成(洋上風力発電と太陽光発電)
出所 京セラコミュニケーションシステム株式会社プレスリリース、2024年10月1日、「京セラコミュニケーションシステム、ゼロエミッション・データセンター 石狩を開所」
脱炭素先行地域「石狩市」からの洋上風力も活用
ZED石狩が稼働する北海道石狩市は、環境省が地域脱炭素において先進的な取り組みを行う「脱炭素先行地域」注5。石狩湾新港地域内エリアでは、2024年1月から国内初導入となる8MWの洋上風力発電機を14基設置(総出力112MW=8MW×14基)した洋上風力発電所の商業運転がスタートしており(図4)、その電力をZED石狩も利用している。
図4 出力112MWの石狩湾新港洋上風力発電所の外観
出所 石狩市役所 企業連携推進課、「石狩湾新港洋上風力発電所の商業運転が始まりました」、2024年1月11日
注1:再エネ属性証書:再エネで発電された電気の「再エネで発電された」という属性のみ「電気」と分離して取引可能とする証書で、需要家は証書を購入して証書と同量(kWh)の自身の電力消費に適用することによって、再エネを使用したことを主張できる。米国のRenewable Energy Certificate(REC、「再エネを発電したことに伴う環境価値」を証明する証書)、欧州のGuarantee of Origin(GO, GoO、EUで導入された制度で、再エネ由来の電力を証明する電子証明書)などがある。日本では、非化石価値証書やグリーン電力証書がある。
注2:カーボンオフセット:Carbon Offset。カーボン埋め合わせ。自企業では削減しきれないCO2の排出量を、他の場所で実現したCO2排出削減分(例:再エネ属性証書を購入)で埋め合わせる方法。
注3:24/7 Carbon Free Energy Compact:国連には、持続可能な開発目標(SDGs)の第7の目標「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の達成を目指す取り組み「Energy Compact」があり、その中に24/7に特化した部門として24/7 Carbon Free Energy Compactが設置され、「24/7CFE」と略称される(https://24-7cfe.com/)。米国連邦政府や大学、Google、Microsoftなどの米国IT企業、エネルギー会社、金融機関など、2024年10月24日時点で世界の165の組織が加盟している。
注4:生グリーン電力:太陽光などの再エネ発電所からの再エネ電力を、直接、電気として使用するために需要者に供給されるグリーン電力。
注5:脱炭素先行地域:環境省は第1回目の脱炭素先行地域募集を令和4(2022)年1月25日~2月21日に行い、以降、令和6(2024)年6月17日~6月28日の募集で第5回目となった。第1回から第5回までに脱炭素先行地域に選定された計画提案は、合計で82件となっている(第5回目の選定結果は2024年9月27日に発表)。https://www.env.go.jp/press/press_03770.html
参考サイト
京セラコミュニケーションシステム株式会社 プレスリリース、2024年10月1日、 「京セラコミュニケーションシステム、ゼロエミッション・データセンター 石狩を開所」
スマートグリッドフォーラム2022年6月12日、大串 康彦、「次世代の再エネ調達『24/7カーボンフリー電気』≪前編≫」
スマートグリッドフォーラム2022年7月7日、大串 康彦、「次世代の再エネ調達『24/7カーボンフリー電気』≪後編≫」