2014年のM&Aの上位はいずれもスマートハウス関連企業
2010年からの5年間に8件ものM&Aを行っているのは、商業施設や産業施設向けにデマンドレスポンスサービスを提供しているEnerNOC(エナーノック)である。続いて6件のM&Aを行っているGEやSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)やABB、5件のM&Aを行っているSiemens(シーメンス)、そして3件のM&Aを行っているAlstom(アルストム)などは、日本の東芝と競合する機会も多い総合メーカーである。その東芝が買収したLandis+Gyrは、東芝に買収された後もスマートグリッドに特化した事業を広げるためにLandis+Gyrとして3件の買収を行っている。また、Landis+Gyrの直接の競合になるスマートメーターメーカーのItron(アイトロン)も、3件のM&Aを行っている。
このようななか、2014年には久しぶりに1件あたりの金額が大きいM&Aが行われた。それがGoogleによるNest Labs(ネスト・ラブス)の買収である。買収金額は約32億ドル(約3,840億円)と報道されている。2014年にGoogleのNest Labsに次いで金額が大きかった買収は韓国のSamsungによるSmartThings(スマート・シングス)の買収で、買収額は約2億ドル(約240億円)である。VCによる投資と同様、M&Aの金額の上位1位と2位が、どちらもスマートハウスビジネスにつながるM&Aであるところが、現在の市場の状況をよく表していると言える。
なお、スマートグリッド分野でVCやM&A以外に関する金融関係の大きな話題としては、クラウドコンピューティングを活用したエネルギー効率化などのサービスを、電力事業者を通して提供しているOpower(オーパワー)が、2014年4月3日、ニューヨーク証券取引所に上場した。
同社は2007年に設立された会社で、設立後、2010年頃から米国の電力事業者を中心に、自社のサービスを大々的に展開してきた。最近では、米国内ではアーリントン、バージニア、サンフランシスコに、米国外ではロンドン、シンガポール、東京にオフィスを構え、560人の従業員を抱えるまでに成長した。日本では東京電力向けにサービスを提供している。
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スマートグリッド分野へのお金の動きは、スマートメーターなどのいわゆるインフラ部分から、宅内の機器を接続するサービスやプラットフォームへと移り変わっている。このような市場の変化をとらえ、今後は具体的なサービスの動向にも注目していきたい。
Profile
新井 宏征(あらい ひろゆき)
株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長
SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、2013年よりプロダクトマネジメントに特化したコンサルティング会社である株式会社スタイリッシュ・アイデアを設立。ICT分野におけるリサーチから得た最新の知見に基づき、企業に対するプロダクトマネジメント制度の導入や新規事業開発、製品開発の支援を行っている。