1.東日本大震災と仙台マイクログリッド
3年前の2011年3月11日14時46分18.1秒、 宮城県牡鹿(おじか)半島の東南東沖130kmの海底を震源とするM9.0(マグニチュード9.0)の地震「東北地方太平洋沖地震」(The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake)が発生。この地震は、日本における観測史上最大規模であった。この地震によって引き起こされた東日本大震災は、最大10メートル以上にも達する津波を発生させたこともあり、東北地方を中心に甚大な被害を与えた。多数の家屋や施設が倒壊し、さらに警察庁の発表によれば、その人的被害は死者:15,886人、行方不明:2,620人、負傷者:6,148人にも及んだ(2014年5月9日現在)注1。 さらに、同時に東京電力の福島第一原子力発電の事故も発生したため、電力危機に陥り計画停電注2などを余儀なくされた。 このような日本の歴史上、最大級の大災害にもかかわらず、震度6の地震が発生した東北地方の「東北福祉大学+仙台市エリア」における「仙台マイクログリッド注3」は、なぜ停電することなく電力を供給し続けることができたのであろうか。そして、その後どのような展開を見せているのであろうか。 現地では、「品質別電力供給システム」(NEDOの委託研究事業)という名称で呼ばれ、新しい電力ネットワークをめざすマイクログリッドの実証実験として進められている。 ここでは、このシステムに焦点を当てながら、大震災時にも停止せずに発電し続けた「仙台マイクログリッド」システムの特長と教訓を見ながら、今後の東北の復興に向けたスマートコミュニティ/スマートグリッドを展開していくうえで、どのようなインパクトを与えようとしているか、その可能性を秘めたシステムを紹介する。
東日本大震災直後に、日本では電力危機に陥ったため計画停電が実施されたが、米国ではこれを「ブラウンアウト」〔Brownout、計画停電。通常の停電はブラックアウト(Blackout)という〕という。ブラウンアウトは、通常の停電(ブラックアウト)とは異なり、いきなりすべてを停電させるのではなく、「一部を停電させて、順次、輪番に停電させていく」こと)。
マイクログリッド:ある地域(あるいは家庭やビルなど)に太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーやコージェネレーションシステムを用いた小規模(マイクロ)な分散形電源を設置し、自給自足的に利用(地産地消)したり、あるいは余剰電力を電力会社に売る(売電する)ことも可能な仕組み。