日本史上最大規模であり甚大な被害を与えた東日本大震災から、今年で3年を迎えた。現在急ピッチで復興作業が行われているが、東日本大震災後も稼働し続けていた奇跡的なシステムとして、「仙台マイクログリッド」が再び大きな注目を集めている。この品質別電力供給システム「仙台マイクログリッド」は、東北福祉大学のキャンパス内で実証実験は終了したが、引き続き現役で活躍している。このほど、株式会社NTTファシリティーズ エネルギー事業本部 技術部長の廣瀬圭一氏、日比谷総合設備株式会社 執行役員 東北支店 支店長 峯田喜次郎氏をはじめ多くの方々の協力を得て現地取材を行った。
本記事は、「仙台マイクログリッド」がなぜ稼働し続けることができたのか、を現場取材した体験レポートである。
1.東日本大震災と仙台マイクログリッド
3年前の2011年3月11日14時46分18.1秒、 宮城県牡鹿(おじか)半島の東南東沖130kmの海底を震源とするM9.0(マグニチュード9.0)の地震「東北地方太平洋沖地震」(The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake)が発生。この地震は、日本における観測史上最大規模であった。この地震によって引き起こされた東日本大震災は、最大10メートル以上にも達する津波を発生させたこともあり、東北地方を中心に甚大な被害を与えた。多数の家屋や施設が倒壊し、さらに警察庁の発表によれば、その人的被害は死者:15,886人、行方不明:2,620人、負傷者:6,148人にも及んだ(2014年5月9日現在)注1。 さらに、同時に東京電力の福島第一原子力発電の事故も発生したため、電力危機に陥り計画停電注2などを余儀なくされた。 このような日本の歴史上、最大級の大災害にもかかわらず、震度6の地震が発生した東北地方の「東北福祉大学+仙台市エリア」における「仙台マイクログリッド注3」は、なぜ停電することなく電力を供給し続けることができたのであろうか。そして、その後どのような展開を見せているのであろうか。 現地では、「品質別電力供給システム」(NEDOの委託研究事業)という名称で呼ばれ、新しい電力ネットワークをめざすマイクログリッドの実証実験として進められている。 ここでは、このシステムに焦点を当てながら、大震災時にも停止せずに発電し続けた「仙台マイクログリッド」システムの特長と教訓を見ながら、今後の東北の復興に向けたスマートコミュニティ/スマートグリッドを展開していくうえで、どのようなインパクトを与えようとしているか、その可能性を秘めたシステムを紹介する。
東日本大震災直後に、日本では電力危機に陥ったため計画停電が実施されたが、米国ではこれを「ブラウンアウト」〔Brownout、計画停電。通常の停電はブラックアウト(Blackout)という〕という。ブラウンアウトは、通常の停電(ブラックアウト)とは異なり、いきなりすべてを停電させるのではなく、「一部を停電させて、順次、輪番に停電させていく」こと)。
マイクログリッド:ある地域(あるいは家庭やビルなど)に太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーやコージェネレーションシステムを用いた小規模(マイクロ)な分散形電源を設置し、自給自足的に利用(地産地消)したり、あるいは余剰電力を電力会社に売る(売電する)ことも可能な仕組み。
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