[特集]

セルラー系LPWA ‘Cat-M1’と‘NB-IoT’を実現する要求条件と最新動向

2016/12/13
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

セルラー系IoT仕様の今後の拡張

 前述したように、3GPPリリース13では基本的にセルラー系LPWAの標準化を終了しているが、今後の展開(リリース14)として、表4に示すような拡張機能が議論されている。

表4 セルラー系IoT仕様の今後の拡張

表4 セルラー系IoT仕様の今後の拡張

VoLTE:ボルテ。Voice over LTE、LTE環境における音声通話サービス
TDD:Time Division Duplex、時分割複信。同一周波数帯域で、送信(上り)と受信(下り)を時間ごとに切り替えて全二重通信を行う方式
出所 エリクソン・ジャパン「LPWAの技術と市場動向」、2016年10月11日

 例えば、Cat-M1とNB-IoTにおいて、セル内あるいは地域内におけるマルチキャスト通信機能(一斉通知機能)の標準化が行われている。これによって、多数のIoTデバイスへマルチキャストによって、一斉にデバイスのソフトウェアを更新することが可能となる。あるいは街に設置されている多数の街灯のスイッチを、一斉にON/OFFするなどの制御が可能になる。

 さらに、デバイスの位置精度の向上、あるいは移動向けCAT-M1にVoLTE(音声通話サービス)を搭載し、エレベータなどの故障時の緊急連絡を可能とする。また、現在NB-IoT(固定向け)には、ハンドオーバー(移動時の基地局の切り替え機能)機能がないので、これを可能にする。

 さらに、NB-IoTでは、現在200mW(23dB)が基準で100mW(20dB)がオプションとなっているが、更なる省電力化なども議論されている。

誰がLPWAビジネスを制するのか

 先月号(11月号)でも一部紹介したが、日本でも、非セルラーLPWAのLoRaWANビジネスを牽引するM2Bコミュニケーション/エイビットをはじめ、NTT西日本(LoRaWAN)、ソフトバンク(LoRaWAN)、KDDI(Cat-M1、NB-IoT)に加えて、最近では、京セラコミュニケーションシステム(SIGFOX)、NTTドコモ(NB-IoT、LPWA対応IoTゲートウェイ機器等)などが、次々にLPWAに向けた実証実験やサービス提供の構想を発表した。

 また、国際的な通信機器ベンダである、エリクソンやファーウェイ、ノキアをはじめ半導体チップベンダのインテルやクアルコム、アルテア(Altair、ソニーが買収、本社イスラエル)、シークアンス(Sequans、本社フランス)に至るまで、意欲的な取り組みが展開されている。

 現在はまだ黎明期ではあるが、本格的なM2M/IoT時代の足音が日に日に高まっており、新しいLPWAビジネスを誰が制するのか、国際的にも大きな期待が高まっている。

(終わり)

◎取材協力(敬称略)

藤岡 雅宣(ふじおか まさのぶ)

藤岡 雅宣(ふじおか まさのぶ)

現職:エリクソン・ジャパン株式会社CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)

1998年に日本エリクソン(現エリクソン・ジャパン)入社。IMT2000プロダクト・マネージメント部長や事業開発本部長として新規事業の開拓、新技術分野に関わる研究開発を総括。2005年2月より現職。エリクソン入社以前は、KDDにてネットワーク技術の研究や新規サービス用システムの開発を担当。

著書として『ISDN絵とき読本』『ワイヤレスブロードバンド教科書』『IMS入門』『ワイヤレス・ブロードバンドHSPA+/LTE/SAE 教科書』(いずれも共著)など。

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